夕陽
作風が激しくブレていますがご容赦ください。
「あの……先輩!」
夕暮れの音楽室。茜色の光射をバックに、一人の少女が意を決して口を開いた。
「……おぅ、どうした……?」
廊下側の窓を施錠した少年―先輩―は、ただならぬその雰囲気に首だけ振り向く。
鞄を握りしめる小さな手が、震える。
大丈夫。怖くても大丈夫。
「水橋、何か……?」
「先輩、私、今日、ずっと、ずぅっと、言おうと思って……その……」
「……」
ぎゅっ、と震える手を握りしめて、水橋と呼ばれた少女は、切れ切れに言葉を紡ぐ。
「大事な、話だと、思うんです。ちょっと、怖くて……でも、人がいない今なら言えます。」
「……お、おぉ、それで……?」
「先輩。私は……」
「部室の鍵をなくしました!」
「……ええと、鍵とタグと両方?」
「どっちかだけ失くなるわけ、ないじゃないですかぁ、先輩、ボケないでくださいよぉ」
「……罰則点、5点か……」
「それって、どのぐらいですか?」
「予算10%返上だな。あと美化活動。俺と、お前が。」
「……えぇっ……めんどくさいです……」
「俺も、なんですけど……」
「えと……申し訳ないです……」
「ま、しょうがない。そのぐらい、付き合ってやろう。……ここ閉めたら詳しく聞かせてね。」
「あ、はい……」
「あー、顧問には……明日、報告しにいこうか……昼休み開けといてね……」
少年はため息と共にポケットから鍵を取り出した。
「ほら、早く出て、鍵閉めるから。これ、5時半までに返さないといけないから。」
「は、はいっ……部長っ」
少女がぱたぱた、とドアをくぐり、少年が鍵をかける。
二人分の影は階段の柱を回り込んで降りていった。
「ま、そんなに気にしないでね……手続き上は、そんな大変でもないから……その他に比べたら……うーん、そんなでもないかぁ……うーん?」
「先輩、意味不明ですけど……」