クーフ(1)+???
どうも! Genshoです。本日2本目です。珍しく筆が進みましたが、宿題は進みません。助けて
その日が変わり、午前9時。店の仕事も終えて、クーフに連れられいつもの広場へと向かった。
今日はクーフに魔法を教えようと思ってる。
なんだ。もうみんな来てるんじゃないか......
「ようお前ら。突然だがイシュト。今日はお前は見学だ」
「えぇ!? なんで? 昨日できなかったから? ねぇなんで僕だけ!?」
「嫌だろ?」
「やだやだ!!!」
予想してたリアクションといえばそうだが......やはり異様な執着心が見えるな。
何か、例えるならフェロモンのようなものが発せられてたりするのだろうか。......魔法から。......俺からじゃないぞ?
「だがな、見て学ぶというのも大事なことだ。クーフとレアルの魔法を見て自分と何が違うのか、みんなは何をやってるのかを理解しろ。それができたら明日はお前を1番教えてやる」
「ほんと!」
「ああ、約束するか?」
「うん! 僕今日は勉強する!」
「おう。いい子だ」
そんな先生の真似事をする俺も、その真似事に真剣に取り組む彼らも。今の所は誰1人として、不幸になるものはいない。
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ということでイシュトは今日は見学日である。1日クーフとレアルに楽しそ〜〜〜〜に魔法を教えて屈辱を味わってもらう。
......冗談だが。
「よし。まずはお前らもイシュトと同じことをするぞ。まずはクーフ。お前にとって『防御魔法』とはなんだ?」
「うーん? ......私のは、硬い壁のようなもの......絶対に壊れない......硬い、壁......」
まぁ、子供らしい例えだな。イシュトと同じような感じだ。
「よしわかった。次にレアル。お前にとっての『攻撃魔法』はなんだ」
「火だよ! すごい大きな火の玉がブォォオ!!! ってでるんだ!」
うん。子供だな。だが例えはいい。
「よし。お前らのイメージはわかった。じゃぁこれからお前らには別々のトレーニングをしよう」
「うん! わかった!」
「よっしゃ! やってやる!」
「......みんないいなぁ」
イシュトの呟きは、3人の耳に届かず儚く散っていった。
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さぁて、どうするべきか。とりあえずクーフとレアルの目標は見つかった。ただレアルには武器を使うことも覚えて欲しいのだが、やはり俺自身で武術を教えることはできねぇしなぁ。まぁ、今回の目的はこいつらに魔法を教えることではないからな。イシュトにとってこいつらの魔法がどれだけ刺激になるかだ。あぁ、見ものだな。
「おい、クーフ」
「何? なになに?」
「お前に教えるのは、初級魔法の『壁』だ。ま、そのまんまだな。自分の前に壁を作り出して攻撃を防ぐのだが......この魔法は2つの落とし穴がある」
壁なのに穴ってか? くだらねぇな......
「えぇ? 何があんの?」
「いいか、まず『壁』をイメージしてみろ」
「うん」
小さい瞼を閉じ、瞑想の姿勢に入ったクーフ。イメージの飲み込みはだいぶ早くなったな。
「できたか? じゃあその『壁』は何でできている?」
意外に難問だと思ったが......クーフはそうでもないように困惑しながらも答えた。
「えっ? つ、土?」
まぁ一般的なイメージだろう。土壁か石壁のどちらかだよな。
「そのイメージのままこの魔法を使うと『土の壁』が出現する。まぁこの先は使い手次第だろうが、普通に考えて土の壁は『脆い』。すぐに壊れてしまう」
じゃぁどうすればいいのか。
「じゃぁ何の壁がいいの?」
「さぁな」
「な!? え? ちょ、どういうこと? おっちゃん!」
「そのままだよ。俺もわからん。石の壁なら強いかもしれないし、鉄の壁ならもっと強いかもしれない。どうイメージするかはお前次第だ」
「おおう、じゃぁ鉄の壁を作って見ますか!」
「あ、言い忘れてたが、いきなり強度の強い壁を作ろうとするとかなり難しくて頭悪くなるぞ」
「ハァァァァ!?」
ふはは、めっちゃ驚いてる。なぜか知らんがいきなり難しいのやると頭悪くなるんだよなぁ。ボーグあたりがなんか語ってたが、詳しく聞けずに逝っちまったからなぁ。次あの世であった時には詳しく聞いてやらないとな。
話は変わるが、こいつもだいぶ感受性豊かになってきているな。リアクションが最初の時とかなり違う。
「最初のうちは、土の壁の方がやりやすいだろうよ」
「はぁい。それで? 2つ目の落とし穴は?」
「あぁ、そうだそうだ。すっかり忘れてた。この壁は初級のうちは『自分』の前に壁を作り出すんだ。
......言ってる意味わかるか?」
「ううん、わかんない」
「わかりやすくいうと、『自分以外』の前には壁を作れないんだよ」
「え!? じゃぁ、もしみんなが危なくてもイシュトやレアルのことを守れないの!?」
「そう焦るな。最初のうちだけだ。もっとちゃんと使えるようになったら守れるようになるさ」
「はぁ、良かった......」
安堵の表情を浮かべるクーフ。さすがにイシュトはともかくレアルは自己防衛可能だろうと思うが......
「んじゃ、お前はこの壁を作ってろ。できたら呼べよ」
「うん! わかったよ!」
ま、簡単だからすぐ終わるだろうけどな。と思った矢先である。
「おい! イシュト! 大丈夫か!?」
──!?
なんだ!? さっきの声はレアル。レアルはイシュトと一緒に向こうで遊ばせてたはずだが......
「おい! レアル! 何があった!」
駆けつけた俺にも弱々しく返事をすることしかできないレアル。
「おじちゃん......」
──っ、おいおいっ! どうなっちまったんだよ!
「わかんない。急にイシュトが倒れて......」
そんな誰もが混乱しているこの現場で俺の目の前にいたのは、おそらく魔力の最悪量 使用過多で意識を失っているであろうイシュトの姿であった。
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「ねぇ! イシュト大丈夫なの!?」
「死んじゃうの!?」
仲間の容体に必死に声をかける二人。焦るな。焦ったら負けだ。
「大丈夫だ。少し意識を失ってるだけだ。しかしまずいことになったなくそっ......」
「どうしたの?」
「これがイシュトのお母さんやお父さんにバレたら俺が怒られちまう。そうするともうお前らに魔法なんて教えてる場合じゃなくなっちまう」
ぶっちゃけこんな非常時に不謹慎だとは思うが、イシュトの容体に命の心配がないことがわかった以上はどうしてもあの親御さんからどう逃げるか。それしか頭の中で考えられなくなっちまう。
「えぇ!? じゃぁやばいじゃん!」
「だからそう言ってるだろうが。あまり嘘をつくのは好きじゃないというか得意じゃないんだよなぁ」
嘘だろ? と思わないでほしい。俺はいつでもまっすぐだぞ。前世は悪い意味でだが。
「じゃぁ私たちが嘘つくよ!」
「そうだよ! 俺らが嘘つくよ!」
なんてこいつらもいってやがるが......俺からしたらフザケルナだな。
「ダメだ。お前らにそんなことを覚えて欲しくない。いいか、人を疑うことはしても、疑われるような人間になるなよ」
俺は疑い疑われる一生を送ったからな。そうなりはしないだろうよ。こいつらならな。
「とりあえず命に別条はないようだが、どうする? イシュトんち行くか?」
「私は、ここで目が覚めるのを待つよ。そんなに遅くならないでしょ?」
「俺もそうするぜ! んでもう1回おじちゃんに魔法教えてもらうんだよ!」
「あぁ、んじゃそうすっか」
こいつらも仲間思いなのか自分思いなのか......両方か......?
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もしイシュトの状態が思わしくないようだったら魔法を使おうかとでも思ったが、そんなことをする必要はなかったようだ。
「ん......? あれ? 僕また寝て......」
ほらな。
「イシュト!」
「大丈夫か!?」
「え? え?」
目が覚めたイシュトに声をかける二人。イシュトはまだ状況を飲み込めてないようだ。
そんなところに俺が少しした疑問を投げかける。なに、些細なことだ。
「なぁイシュト。お前、俺のいないところでも魔力使ってたか?」
「え? なに? そんなことしてないよ! だってお母さんに見つかっちゃうもん!」
「ほんとだな?」
「うん。ほんとだよ?」
訝しげに首をかしげるイシュトを前に俺は頷くことしかできない。
「よし、わかった」
わかんない。イシュトの存在がマジでわからない。こいつはなんなんだ? 自分の意思と別に魔力を放出することなんて......まるであいつみたいじゃ......
「......ありえないよな? そんなこと」
俺は今建てたとある一つの仮説を。
そっと胸にしまっておくことにした。
日付変わってたから今日2本目じゃなかった