最凶魔王の初めての閑話
どうも! Genshoです。子供たちのキャラが自分の中で混同してきます。そのうち整理しなければ......
──レアルが魔法のイメージテストに合格した。
しかも浮かび上がった形は『武器」──長く幅の太い大剣の形だった。
やはりあいつは突貫のイメージだな。ということは武術もやらせた方がいいのか。攻撃魔法だけで戦ってもいいけどな。レアルぐらいのガタイだったら武術も教えといて損はないが......さすがに俺1人でそこまではできないよなぁ。あいつらが居ればまた違ったんだろうが。ま、そんなこと言ってもしゃあない。死んだ奴は死んだ奴だ。俺はそいつらの分まで生きろってことだろ。きっと。多分。
それより......
現在時刻......不明。
魔界で例えるのなら......8時にはならないだろうか。魔界にある太陽が出ていなくて、その代わりに黄色い......というよりかは白っぽい星が見える。せめて太陽があれば位置から時間を図ることもできたのだろうが。
話を戻そう。今は夜だ。夜なんだが......
「それで? おじちゃんなんで外で寝てるの?」
この状況をどう打破すべきか。
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俺は昨日1日だけロハでクーフの親御さんが経営する宿屋『クテュルヴ』に泊まらせてもらっていたのだが、今日お金を稼ごうとしていたのをすっかり忘れてみんなに魔法のテストをしてしまっていた。......本当に忘れていた。
というわけで、クテュルブから少し離れたところにある小さな空き地で俺は野宿することにしていた。
しかし、幸か不幸かクーフがよく通る道だったらしく、寝につこうとしてるところを発見されてしまった。子供がこんな時間まで起きてるんじゃありません!
「そうなの? じゃぁお母さんに言って泊まらせてあげるよ! お父さんもお母さんもけちだな!」
「いや、いいんだよ。俺がお金ないのが悪いんだしな」
「ムゥ......おいちゃん悪い人じゃないのに......」
いや、かなり悪い人だな。一部の人間からすれば。尤も、元を正せば人ではないが。だが、それは前の俺であって、今この世界の俺はそんなんじゃないしな。確かに今の俺は悪い人ではないが、それでもモラルというものはあるだろう。さすがに無銭で2泊も泊まらせてもらうのはこの世界に対する甘えだ。
それじゃあちら側がタダ働きになってしまうからな。
ん......? タダ『働き』?
「──そうか。その手があったか。」
クーフが不思議そうな顔で首をかしげる。
利用するしかないのかこれを。元魔王のステータスを。
「おいクーフ」
「え? なに? なに?」
「ちょっと頼みがあるんだがいいか?」
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「それで? おじちゃんなんでうちで働いてるの?」
俺が導き出した答えは、宿屋『クテュルヴ』で働くことだった。ただいまはフロアの清掃に勤しんでいる。
こんな容姿でも普通に働けるってすごいな。魔界じゃそんなこと考えられなかったわ。あ、俺が魔王だったからか?
まさか魔人と人間が共に働く環境がこんな身近にあるとはな。
「いや、ちょっとばかしお前の親御さんに相談しただけだよ」
それは嘘だな。泣きついただけだ。まぁ、魔法を教えてるなんて言っていないし。大丈夫だ。それに、親御さんたちも優しい方で一応『娘と仲良くしてくれたから』というだけで、住み込みを許可してくれた。まぁ、お店の方も人手が足りない、とも言ってくれてたしな。どちらにしろ俺としては好都合だ。
「ふぅん。それで? 明日になったら教えてくれるの?」
「いや、わからないな。俺も少し金を貯めなきゃいかんしな」
「じゃぁ魔法教えるのでお金を取ればいいじゃん!」
あぁ、そういう手もあったか。確かに魔界の学校では有能な子供を除きお金をとって教育をしていた。
しかし、この世界での教育の理念に『魔法』があるのか知らないし、人間にこうも容易く魔法を教えていいのか少し惑う。
「そのうち考えとくよ。学校については」
なんだったらボーグがいれば教育の云々も教えてくれたのだろうが。そのボーグも死んだ1人だ。どうしようもない。
「とりあえず、明日は1日休みだ」
「はぁい」
さて。どうするべきなのか......
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──翌日早朝。
俺はとあるものを持ってまだ太陽も出てない朝から宿屋『クテュルヴ』を発った。もちろん許可はとってある。
目的の場所は、村に流れている小さな川だ。そう遠いところではなく、歩いて10分ほどで着くと言っていた。
昨晩、クーフの親父さんにこの村での金の稼ぎ方を聞いたら、この川で魚を捕まえてくれば買ってくれると言ってくれた。そこでくれたのがこの釣り道具一式だ。
釣りなんて魔界じゃしたことはなかったが、親父さんの厚意もあるのでとてもじゃないが無下にすることはできない。
......と、いうわけで来たわけだが。意外に人がいるな......
誰も見てないようだったら魔法を使って言葉通り一網打尽にしてやろうと思ったのに。
まぁ、ぼちぼちやってきますか。
親父さんたちには朝ごはんまでに帰ってくればいいと言っていたが、おおよそ3時間くらいか。これくらいだったら少しぐらいダメでも粘れるだろう。
さて、取り掛かるか......
俺は岩場に腰掛け、ルアーを用意し、(魚との)戦争の準備をした。
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──2時間と数分。
──釣れない。周りを見ると、ぼちぼちとってる人がたくさんいる。ここまで連れてないのは俺以外にいないだろう。
一体何が悪いのだろうか。エサだって上等のものを用意してもらったし、道具などに不備はない。俺の経験が浅いためなのだろうか。うちに釣りの得意な幹部はいたっけかなぁ。教えてもらえばよかったな。
さぁて。ここまで釣れないとなるとやはり魔法を使ったほうがいいか? しかし、魚釣りに使えそうな魔法なんて......
「......あったわ」
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約束の3時間が経ち、俺はクテュルヴに戻って来た。
自分が思ったより収穫はあった方だ。まぁ、なんせあれを使ったからな。しかし、俺はこういう相場がわからない。親御さんの反応はどうだろうか。
ドアを開けると、カランコロンと軽やかな音が響く。迎えてくれるのはお父さんとお母さんとクーフだ。
「ただいま戻ったぞ」
「あぁ、やってきてくれたのか。助かった......よ......」
「ご苦労様で......す?」
「わー! おじちゃん何これ!? なんでこんなにいっぱいお魚さんいるの!?」
クーフは興奮して興味津々のようだ。
しかし、ご両親はなぜか少し引き気味のようだが......?
「えっと、魚を釣って来たのだが......」
「いえ、わかってるのよ。ありがとうね。でもこの量は......」
「ああ......この量だったら数週間は必要ないな......」
これは......やっちゃったパターンか? 多く釣りすぎたのか!? 量をミスっただと!? この俺が!?
計画を立てるのに関しては魔界No.1を自称してた俺が!?
やはり魔法を使ったのが間違いなのか!?
......まあいい。多くても悪いことはないし。あの魔法がここでも使えることもわかったわけだし。トントンだな。
クーフの親父さんはその金色の髪を揺らして悩んでいたが、どうやら結果を出したようだ。
クーフの金髪は遺伝か。ちなみにお袋さんは茶色の長髪だ。
「うぅんよし! これからも君に頼むか! 1月に1回だけでいいから、うちに魚を仕入れてくれるか?」
「! いいのか!?」
だけと言うところをやけに強調された気がしたが......まぁいい。
「あぁ。どうやったのかは知らないが、これだけ釣れるというのはよほどうまいのだろう。それを手放すのは勿体無い。どうだ? 1ヶ月タダ泊めてあげるし、給料もはずもう。1月に250ガルだ。どうだ?」
「あ、あぁ。俺はそれで全然構わないが......」
いかんせんこの世界での価値観がわからない。250ガルという単位が何を指すのか。それを手に入れて俺は何を買うことができるのだろうか。
それはさておき、とりあえず、資金源は確保したか......
さぁて、この世界では何ができるのか。とりあえず......
「クーフ」
「なーに? お魚?」
「あぁ、違う。明日みんなに色々教えてやるから、イシュトとレアルも呼んでおけ」
するとクーフは目を輝かせ......
「りょーかい! 任せといておじちゃん!」
「おう。頼むぞ」
どーれ、こいつらはどう調理してやっかねぇ。
ちなみに余談だが俺の釣った魚たちはムニエルになってその晩に出てきた。
アルフほどじゃないが、親父さんの腕前もなかなかだった。
明日部活できるかの......