最凶幹部(3)の最凶に最狂な最期+初めての異世界転生
どうも! Genshoです。私立高校の受験も終わりかけて、気ままに執筆していますが、自分の文才の無さに絶望する日々です。誰か知恵をくれ......
対魔王戦闘軍の第1陣に男はいた。外見は鎧に身を包んだ兵士。身長は180cmくらい。手にしている長刀は、下で横たわるツノの生えた紳士風の魔族の胸元を抉っていた。
身につけている兜の目元からは、煌びやかで妖げな光が出ている。
何を隠そう。この男は魔王軍第6幹部のタローである。
「すまねぇな、ダン。人間との決着は人間 の手でつけさせてくれ。許せ」
何を思ったかこの男は、人間との戦闘の前に自らの手によって同志を討っていた。その同志こそが、下で横たわる魔族そのものである。
紅い潴の上、1歩1歩近づいていく。人間たちが武器を構えるが、タローが指を鳴らすと、それも無力化される。先ほどの光で、既に洗脳していたのだ。
「おら、かかってこいよ、無能な一族。どっちが正解だなんて、くだらねぇ問答はしねぇで、ただただ刃を交えようじゃねぇか」
タローの挑発に、金縛りが解けた人軍は突撃する。
「あいつは人を裏切って魔王についた基地外だ! お前ら遠慮すんなよ!!!」
「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!!!」」」」」
怒号が響き渡る草原。魔王はまだ手刀を打ち込まれる前、前線のことなんて何も知る由もない。
戦いは始まったばかり。人軍犠牲者0名、魔王軍.......犠牲者1名。の内1名同士討ちである。
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そうきたか.......魔王もタロー君には何かの考えがあって人軍......しかも一番槍に選んだんだろうけど、ブラックブラザーズで組ませたのが仇となるとはね......
しかし......タロー君は作戦戦略担当だが......剣も使えるのか? 見た感じ......今までの戦闘でも武器を手にしたことはないように思えたんだけど......
しばしは高みの見物と行きますか。ま、手出す気はさらさらないけどね。
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ヤベェヤベェヤベェヤベェ......!!!!!!!
いいねぇ、こういう1人で大勢相手にするのって......ゾクゾクしてくるねぇ......っ
俺は手に持った長刀を構え、ダンのスーツの懐から抜き去った精力剤を飲んで心も体も字面通りギンギンになっちまった。
「さぁ、問題は......この状況をどうやって打破するかだよなぁ......」
死にかけたことなら散々ある。殺されかけたこともある。なんなら魔王に命だって狙われた。
しっかし......今までとは全く違うこの雰囲気。なんだ? 何かが違う......
魔王様だったら気づいているのだろうか......まぁいい。ダンを殺っちまった時点で俺はもう許されないだろう。だったらここで死にたいする執着などない。暴れて死ぬだけだ!!!!
「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!!!」
ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥン──と大きな空を切った音が聞こえて、その通り俺の剣は誰にも当たることをせず地面を切り裂いていた。
「あへへ......僕剣使ったことないのよね.......」
その一言に人軍は一瞬ぽかんとしていたが、すぐに事態を把握したらしく、恐れるものはない形相で俺のところへ走ってきた。
「嫌だぁ......せめて女に囲まれて死にたい!!!!!!」
俺の妄想虚しく、汗にまみれたむさい男の集団が俺の視界を埋め尽くす......
俺は人間だが......人間は死の瞬間、聴覚だけは最後まで残っているらしいが、俺の最後は、自分の断末魔で溢れていた。
魔王さん、最後だけ本気で謝る。ごめんなさい。
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長い長い断末魔が途切れると、俺の意識はまず触覚から始まった。背中に何か柔らかい感触がある。
手と足が動かない......目もうまくひらけねぇぞ??? どうなってんだ? これは......
「うぅ.....うあぁぁ!!!!!」
──!? 今の声はなんだ? 俺の声か!?
「産まれたか!?」
誰だ!? くそっ、動けねぇ......もしかしなくとも、俺が人間だから人族に捕虜にされた......?
そんな仮説もすぐに打ち砕かれる。
「産まれました! 男の子ですよ!」
「よし! でかした! こいつはタローだ!」
タロー......だと? やっぱり俺の名前を知ってる......じゃねぇよ! 産まれたってなんだ産まれたって!
もしかしなくとも俺は.......
「うああああああうぅぅぅ!!!!(生まれ変わってるぅぅぅぅぅ!?!?!?)」
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俺こと『元』魔王軍幹部のタローがこの世界に降り立ってから早くも9年が経過した。どうやらここは魔界ではないらしい。この世界で育ってくにつれて、この世界についてもいろいろわかってきた。
まずここは、『アヴィリル』という名前の魔界とは違った所謂『異世界』というやつらしい。そんでもって、そのアヴィリルの『ユール』という小さな村。そこに俺は産まれたらしい。父親も母親も人間だ。
外観的な大きな違いが1つある。今は朝──早朝だが、昇る太陽が黄色い。魔界では太陽は白い。紫がかった空に映える色だった.......が、この世界の空は青色だ。綺麗に澄んで遠くまで見ていられる。
一方、夜になると、魔界では赤かった月が、これまた黄色くなって光を失った空に浮かんでいる。
それだけではない。この世界、一度外に出てみると驚く。何が驚くって、なんと魔族と人間の共生する世界なんだ。狂ってるだろ? 意味がわかんねぇ......って思ってたんだが、どうも慣れるとそうでもないらしい。気づいた時にはすぐに受け入れるようになっていた。
そこら中の露店にはツノや羽の生えた店員がいるし、なんだったら買ってるやつも魔族らしい。もっとも、そこに人間さえいなけりゃ違和感もないんだろうが。
何が起こった? ──そんなことは考えないことにした。きっと俺の前世が良かったから神様とやらが俺にもう1回チャンスを与えてくれたんだろう。
ふふ......子供でしかできない立場を利用してあんなことやこんなことを......
「じゅる......涎が出ちまった......」
ふふ......エンジョイしてやるぜ俺の今世!
「ターローー! あそぼ?」
「うわっ!? びっくりした......」
不意に俺を呼ぶ声。母親以外の女で俺と関わるのはこいつしかいない......
「なんだ、お前か、ユウカ」
「なんだって何よ!」
ユウカ──偶然にも俺と同じ日に生まれた隣の家の女で、所謂幼馴染というやつだ。最初のうちは俺にも念願の幼馴染(女)が! と喜んでいたが、実際の付き合いになると、そんなにいいこともない。
せめて一緒に風呂に入れるぐらいだなグヘヘへへ......
「もう、タロー涎ダラダラだよ!」
「うるさいなぁ、何の用だよ」
「あ、そうそう! おばさんがタローと一緒にお外で遊んできなって、お駄賃くれたの!」
先程までの不満げに膨らんでた頬も緩み、得意げに右手に握りしめた小銭を高々と掲げる。
ちなみにおばさんとは俺のこの世界での母親のことだ。
「よっしゃ、そうなったら今日はちょっと遠くまで冒険してみようじゃねぇか!」
「冒険!? するする!」
ユウカは俺の一言に目を輝かせ、膝丈まであるスカートを1回転して跳ね上げて見せた。
──くっ、見えないか......
「ほら! タロー早く! 行くよ行くよ!」
「待てって、あんまり焦るとホモになるぞー」
「何それ!? 意味わかんない〜!」
俺ははしゃぐユウカを横目に、俺らを燦々と照らす太陽に向けて問うのだった。
「魔王様、お元気ですか.......?」
救えよ世界!
答えよ正解!




