最凶幹部(2)の初めての異世界転移
どうも! Genshoです。
体育祭の練習も始まりました。え、GW? 何それ美味しいの?
「......はっ!?」
......私が目覚めたのは、それはもう薄暗い森の中だった。魔王城の廊下も灯ひとつなく、初めて通った時には恐怖を感じたものだが、この森はそれ以上の暗闇である。もう陽は落ちているのだろうか、あたりに照射はなく、見回してみてもただ断続的に木々が立ち並ぶだけであり、何かこう不気味なものを匂わせていた。
「んっ......っく......
はぁ......はぁ......っぁぁん!!!」
まだ頭、躰の中全身をくまなく快楽物質が駆け巡っている。
「なんで......?」
どういうことなのだろうか。私は死に切れなかったのだろうか。だとしても私が記憶を失った場所との違いがありすぎる。それに......
熱い......躰が焼けるように熱い......禁呪の影響なのだろうか.....
「はぁ......はぁ......っまずはここがどこだか調べ......っっっっうん!!!!」
快楽地獄はまだ続いている。その快楽に身を善がらせ、拗らせ、必死に抵抗を試みる。しかし、自分の体質を考えるときに、それは意味をなくす。
「......淫魔。なんて素敵な種族に生まれたのでしょうっ!」
そして一息吐いた後、彼女はこの世界で初めて最大の絶頂を迎えた。
まだ彼女は、『異世界に来ていること』を知らない......
<><><>
どうやら今は夜のようだ、と私が悟ったのは少し前のこと。攻撃魔法指定の《発光》を使ってあたりをチラチラ歩いていたら、大きな岩の、その陰にあたるところだけ、光の照射が差していたから、そこまで行って見てみると、月光......月の光が淡く光っていた。
──月。魔界の月は赤黒く、雲に隠れ見えにくい時が多いのに。今日はくっきりと見える。
「黄色い月が......」
月はあんなに綺麗なのに......未だ私の心は罪悪感と魔王様を裏切った背徳感に満ち溢れ、醜く濁っている。
別に今更戻ったって戦力にはならないだろう。それ以前に魔王様に叱られるに違いない。もうっ、あの人は本当に女心をわからないんだから......
子供みたいな言い逃れかもしれないけどね。それでも良いのよ。私が今ここで生きている、呼吸ができているということはきっとあの人も、他の9人みんなもどこかで生きている。きっと息しているはずだから。
私が今できることは、
「信じるだけ──みんなを、あの人を」
それが今一人やすやすと引っ込んだ私にできる唯一のことだから。
「こっちには......まだ来ちゃダメよ」
彼女はまだ、ここが異世界であることを知らない......
<><><>
「うがァァァァ!!!!!」
その男の覚醒は少し遅かった。身内の手前、安心していたのだろう、かなり長い間ダメージを受けていた。
「マリア......無事でいてくれ......
どうか......頼むっ」
魔界を統一した猛将でさえ、愛する女のことには弱くなる。当然の雄の性であろう。
しかし、こればかりは状況があまりにも異常だ。
今自分の手元には信頼できるようなものは何もない。孤独? 違う。
「ただ一人なだけだよな。みんな頑張ってるんだもんな。
俺がくたばってんじゃダメだよな、きっと」
だが現実は自分の思い通りに行くことはない。
体を動かそうとしても、痺れて手足が動かない。どうやら手刀を決められた時、何かツボのようなところを押されたらしい。
「くそっ! 絶対にお前らを死なせねぇって思ってたのにっ!
勝手なことしやがって......許さねぇぞ......」
計画は総倒れ。為す術もなく倒されるのは目に見えてしまっている。
それでも諦めはしない。最後まであがいてみせる......
薄暗い魔王城の1室。男はこの戦いでの再起を図る。
まだ何も、わかっていない。
<><><>
「はぁ......はぁ......」
躰はもうだいぶ楽になって来た。1度果てたからだろうか、満足感も覚え、精神面では何も言うことはない。
でも、体力が持ち続かない。さっきからこの森をずっと歩き続けているのに、出口らしきものが全く見つからない。
空はまだ暗いままで、黄色い月が丸く私たちを照らしている。それに加えて魔法の効果は継続して眼前を明るくしているのではっきりと周りの景色は見えている。
10mを越すような巨木の枝の上に、眠っているのであろう魔物は見ていて癒されないこともない。
「あら、可愛い......」
ガサッ......
「誰!?」
何か草陰のような音が聞こえた。あたりを隅々まで見渡すが、上も下も怪しげな雰囲気は出ていない。
どうやら私が何か枝のようなものを踏んだらしい。
誰か魔王軍に反する敵がいるのかと思ったわ。いや、どうやらむしろ......
「私が招かれざる客ってことかしら......?」
「誰......?」
「!?」
急に後ろから聞こえたハイトーンの声。子供の声か、はたまたセイレーンのような女か、振り向くことなく私は問いかける。
「あなたは......どちら側? もしそっちなら今すぐにでも叩っ斬るけど?」
「あなた......ママじゃない......ママは......?」
何を言っているのだろうか。どうやらこの子? は母親の帰りを待っているとのこと。しかしそれが全て嘘の可能性だって考えられる。
私は息を飲み、意を決して振り向こうとした。
「!?」
振り向くとそこには、驚愕の光景が広がっていた。
「にゃぁぁぁぁぁぁぁぁ......」
「「「「「うにゃァァァあああ!!!!!」」」」」
やはり彼女? はまだ幼い子供のようだった。耳が頭頂部についている。獣人? 亜人か?
そこは別にいい。もしかしたらこちら側かもしれないから。だがしかし、問題はその後ろにある。
「なんで? 調教師ってこと? こんなに幼いのに?」
彼女の後ろに、無数の猫が目を光らせていた。それはもう私が魔法を使わなくても視界が開けるほどに。
そして彼女はまた吠える。
「この子、あたしの友達。あなたは......?」
「な、何があったっていうの? ごめんなさい、私は迷い込んだだけで......」
とっさに言い訳を口にするが、急に少女のピッチが速くなる。
「ママが帰ってこないの......昨日の朝「すぐ帰る」って言って出てったのに......
ママはどこ!? ママを返して!!!」
目尻に涙をためながら叫ぶ獣人の少女......なんか見たことあるような光景な気がして......
「......どうしたの? 私でよければ、話を聞くけど」
「へ......」
つい声をかけてしまった。
その意味を理解したのか、少女は私の足を掴む。しかし......
「駄目!」
今触られたら敏感な私の体では耐えられない......と思い一瞬で自分の座標をずらそうと思ったが......
「へ?」
ぴと
「うぅん......んあぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」
いや......小さなこの前でイってしまった......
でもちょっとゾクゾクしたわ。
でもこの森は不思議だ。何が起こるか予測ができない。
現にいまこの子に足を掴まれなくともおそらく魔法は発動していなかった。
「結界......? こんな大きな森に? でもなんで私が解らなかったの......」
「......?」
どうやらその答えは、この小さな獣人の子が知っているのだろう。そう信じることしか今の私にはできなかった。
30日に1回。満月の夜はもうすぐ明けようとしていた。
ちなみに紅組の団長です。
止まるんじゃねぇぞ///




