最凶幹部(2)の史上最凶の快楽
どうも! Genshoです。
ごめんなさい。初手安定の謝罪(byたっくーレイディオ)ですが、本作とGMの大幅改稿をいたしておりまして、更新が一ヶ月以上伸びてしまいました。これからは本作一本に絞り頑張る所存です。ブクマ評価感想お願いします。
さて、あの男はもう突貫したところだろうか。俺はちょいっと魔王城の方にお邪魔して、こいつを見させてもらうとしますか......
なぜ部外者が魔王城に無断で入れるかって? それは企業秘密だが、俺は『部外者』ではないよ? 立派な関係者さ。なぜならこの魔王城は......っと、早速見つけちまった。今日はついてるなぁ。どれどれ? 見せてくれよ? 期待してるぜ、いい足掻きを......
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静まり返った薄暗い魔王城の最深奥。その場所に1組の男女はいた。その部屋は四角形をしていて、四つ端にそれぞれ珍妙な薄気味悪い彫刻像が設置されてる。女は端にある台所で飲み物を作り、男は玉座に座り、女の淹れたコーヒーを味わっている。よくよく見ればこの男女、『人ではない』。
2mを超える身長を持つ男を見れば頭から二本の角を生やし、爬虫類のような背格好だ。対し、女は黒く腰まである長い髪を下ろし、豊満なバストやヒップに相反しすらっとしたくびれを持つ。この躰の時点でもう人とは思えないようなスタイルだが、注目すべきはそこではない。いや、そこに目が入ってしまうのはわかるが......
女にも角は生えている。しかし、男の持つグニャグニャとした角とは違い、クルンと綺麗なカーブを描いている角が二本頭部についている。さらに、背中を見てみる。細いうなじの下、背骨が浮くほどに細い躰だが、肩甲骨の下、両方に黒い羽がばさっと生えており、淫らなフェロモンを発している。そう、彼女はサキュバスであった。
話を戻す。二人のいる部屋は森閑としておるが、一歩その部屋を飛び出すと、騒音、轟音、阿鼻叫喚の大サーカスである。
そう──あたりは戦場と化している。例に漏れず、この魔王城も敵に侵入を許す寸前であり、前線がなんとかギリギリ持ちこたえてるだけである。そんな状況で、この男女は最後になるであろう泡沫の時をどう過ごすのであろうか──?
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「魔王様──」
「ならぬ」
女のかけた声に『魔王』と呼ばれた男は即座に否定の言葉を口にする。
「ふふ、まだ何も言っていませんよ?」
「ならぬ。絶対にだ」
女は柔らかな声で微笑をこぼすが、男の表情は硬いままで、同じ言葉を再度繰り返す。
「あらまぁ、そんなに意固地にならないで......
別に私がいなくなるわけじゃないのですよ?」
その女の発言に、男は微動だにしなかった体をピクッと震わせる。
「......なら聞こう。言ってみろ」
「──あなた、私を殺して」
「ハハッ、そう来たか。これは予想外だ」
男は想像を超えたその提案に驚きのあまり笑みを浮かべてしまう。
しかしすぐにまた険しい顏に戻る。
「ふざけているのか? 俺がそんなことをすると思ってその発言をしたのなら今すぐに出て行け」
「......ごめんなさい。冗談が過ぎたわ。
じゃぁこうしましょう? 私は今から戦場へ向かうわ。あなたはそれをきっと許さない。だから少し眠っていて?」
女はいつもと変わらない、優しい静かな口調でモノを言う。きっとそれが男の判断を鈍らせた原因の一つだろう。
「? 何を言っていぃ──!?」
呻き倒れる男。犯人は当然この女だ。しかしそこに殺意などは無い。油断していた男の首元に手刀を入れたのだろう。
「うっ──、お前!!! まさか一人でっ!!!!」
「ごめんなさい、こうでもしないとあなたは許してくれないと思って。
でも安心して? きっと次の世で会えるわよ?
──私が死んでもあなたが愛してくれるのを信じてるわ。じゃぁね? My lord......」
「待でっ!!!! ゆ、許ざんぞ俺は......!!!!」
男の呻き儚く、その女は部屋を出ていき、やがて散ることになる......
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はぁ、どう言う展開だよ......こう言う結末は別に望んでいるわけじゃないんだけどな......
そう言う結果に限ってやってくるんだろうな。しかし、あいつ大丈夫かね? まだあの部屋で伸びてるんだが......流石に魔王ともなればすぐ回復するだろうか? 少し心配だな。見に行くか?
いや、よそう。それよりも彼女を追わなければ! 巻かれてしまう!!!
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魔王城を背に南側へ。そこには武装した大勢の人間が武器を構えていた。
「永遠なる生を授けたまえ、悠久の時を与え給え。
孤独を妬み、繁栄を憂う。
変わらぬ愛をそのままに。回復治癒平癒......」
長い呪文を唱える、長い髪の女。彼女の躰からは、濃厚で淫らな雌の匂いと淡い緑のオーラが発せられている。前者は淫魔特有のフェロモンだが、後者は魔法による自身の治癒能力向上のオーラだ。
「持ってあと三十分、と言うところかしらね」
彼女は一人ぽつりと呟く。周りに敵はいるが、誰も彼女には反応しない。
「あの人と一緒に死ぬくらいなら、私だけ死ぬわ」
呪詛言霊。彼女を覆うオーラが一層激しくなる。
「私たちに抵抗するなんて、許さない」
本番はまだ、これからだった。
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今私は最大の苦境に立たされている。思いきって魔王の元を飛び出してここまで来たけど、最初に張った回復魔法はもう切れた。三十分持っていい方だったが、そんなに持つはずもなく、今私の体力、魔力はもう使い物にならないほどにボロボロだ。
そんな状況でも敵の数は計り知れなく、蟻の大群のようにやってくる。
そしてついに私は手を出してしまった。ふふ、いいわよね? もうあとはないし、ほんのちょっとだけ興味あったんですもの。
「燃え尽くせ。極限なるまでの炎。
喰らい尽くせ。無極なる焔。
赤く燃えろ、朱く萌えろ、紅く染まれ、赧く焼けろ、緋く色づけ、赫く爆ぜろ......
赫赫たる無源の炎を司り今唱う。灼熱の火炎に焼かれし魔!!!!!!!」
──禁呪。今の魔法で体力の半分を消費した。しかし、その代わりに目の前が真っ赤に焼かれて行く。
敵の悲鳴なんざ聞こえるような時間もかけない。
さすがは指定禁止邪悪魔法。見る影もなく邪悪ね。
やっぱりあの人は最高に最凶だわ。あの人の下で戦えて、愛されて、本当に良かった。
「はぁ......あっ......あぁん......」
いやだわ......体が疼く......淫魔にしかない特有の性質。
サキュバスは快楽を得るための存在。ならば最凶の快楽を味わえる瞬間へと──
「あなた......ごめんなさい。先に待ってるわ......」
主より先に逝く無礼を、大粒の涙をこぼしながら詫びる。
サキュバスが涙を流すのは破瓜の時と、死の時だけ。
さて、皆さんはご存知かしら。世の中で最凶の快楽が味わえる瞬間は──
「──死だと言うことを」
いやだいやだいやだいやだ。どんどん躰が快楽に蝕まれ、秘所もこれほどかと言うほどに濡れそぼっている。既に敵の姿は見えない。私の喘ぎも遠く空へ木霊するだけだ。
「あっ......もう......っく!!!!!!!!!」
意識が私の躰からどんどん遠ざかってイく。それとともに今まで味わったことのないような快感に身を善がらせる。
「もう......ダメっ!!!!!!!!」
今世紀最大の気持ちの良さに私の躰は大きく痙攣し、そして私の頭が白くなったと同時に、私は自分の意識を手放した。
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「うっっ......ふぅ............」
その長髪を持つ女性は、一言で表すのならばそう、『温厚篤実』だったろう。何事にも穏やかで、何時でも爽やかであり、何者にも暖かかった。そんな彼女が慕った男、そいつこそが史上最凶の魔王、シュタルヴィッチ4世。二人の出会い諸々は長くなりそうなので割愛しよう。
そんな魔王を1番近くで支え続けた女が1人、この魔界から姿を消した。淫魔としての生は全うしたに違いない。
ぶっちゃけ私情を挟むならばきちんとあいつとくっついて欲しかった。いや、俺が言うセリフじゃないのはわかってるけどな。こんな中途半端な時期に死ぬなんてなんてもったいないのだろうか......
あと9人。果たしてこの戦いで何人が生き残れるのか。そして魔王は生き延びることができるのか。
なぁ、〇〇〇、まだ俺には見守る義務があるらしい。
だるいたるいあたまいたい




