クーフ(3)
どうも!Genshoです。本日は合格発表でしたねぇ。先輩方合格おめでとうございます!
翌日であーる。
今日はレアルはお休みらしい。なんか家庭の事情だとか言っていたが......
昨日の炎で変に体調崩してなければいいがな。どっかのイシュトみたいに。
「ヘクチッ!!!」
......噂するとくしゃみが出るって本当なのか。魔界の都市伝説だと思ってた。もしくは1世の嘘とか。
「ほれで? レアルはできたの?」
質問するクーフ。おいおい、くしゃみしたイシュトは放置ですか。
「ああ、結局はな。あいつだってやればできるやつなんだよ」
「ふーん、私たちとは違うんだ。ねー、イシュト?」
「い、いや、そんなことはないよ......」
ん? 何を言いやがる。イシュトの言う通りだ。自分を卑下するようなことは言うな。
「ああ、ほんとだぞ。イシュトやクーフだってやってるしできてるじゃないか。
努力は期待を裏切らないもんだよ」
「ふーん、じゃぁこの前言われた『移動式の壁』、やってみよっかなぁ」
「そんな中途半端な気持ちでやってたらイシュトみたいに魔力に飲み込まれるぞ。
なぁ? イシュト?」
「え? い、いや、そそそ、そんなことは? ないと思うけど......」
なんだ? こいつやけに顔が赤いけど......
まさかとは思うがイシュトはクーフのこと......?
「ほんで? いふとはどこまでへひたほ?」
「だ、だめだよクーフ......ちゃん。口に食べ物入れたままじゃ」
「いいのいいの!」
なんだ。結局仲良いんじゃんかよ。子供の頃からいちゃつきやがって。許さんぞ。
しかし、こうまでして喧嘩に発展しないのはレアルがいないからか?
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「ヘックシュン!」
同刻。レアル宅。本日オフ(お母さんに怒られてお勉強)
「だいたいあなたは全くあーだこーだ......」
「みんな今頃やってんのかなぁ......」
「ちょっとレアル!? 聞いてるの?」
「んー」
「もういいわよ! 勝手にやりなさい!」
「あっ......。まぁいいか。
......ん? なんだあいつ? 気味悪いな......」
レアルの勉強はまだまだ続く......
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場所は元に戻り、いつもの公園である。
「それで? 結局お前はどうするんだ? クーフ」
「えー、わかんない。確かに移動式の壁は覚えてみたいけど、まだ普通のやつだって完璧にできてないし......」
「そうか? 俺はお前ができてると思うけどな」
「だって、まだ少しでこぼこしてるし......」
どうしてもネガティブにしか捉えられないクーフ。そこが欠点か? しかし精神面というのはかなり変えることは難しいのだが。そう簡単に人がいじれるようなもんじゃないし、そもそもそのような手を使ってまで魔法は覚えるようなもんじゃない。できなければやめればいい。ただそれだけのことだ。
「それでも『壁』としての役割は十分果たしてる。完璧を求めるな。
まだお前らはこれから先の未来があるんだから。焦るんじゃない」
1度死んで未来どころか現在もあるのかわかんないような俺に言われたところでなんだって話だがな。
「......ん。わかった。それじゃ移動式の壁を覚える!」
「よっしゃ。やってやるよ」
とは言っても、俺は防御魔法専攻じゃないけどな。
魔王に専攻があっても困るけどな。
「いいか? 移動式の壁。その極意は普通の壁とは少し違う。
はい、クーフ。壁の基本は?」
「えぇ? 壊れないこと?」
「馬鹿野郎。お前その結果がこの前の岩の山じゃないか? あぁん?」
「えぇ? 何よー。ねぇ、イシュトわかる?」
「え、ごめんなさい。わ、わからない......」
「だってよ、おっちゃん。イシュトがわかんないんだから私も......あいてっ!」
げーんこつ。人に頼ろうなど100年早いわ。しかも無知のやつに。ただの鬼畜じゃねぇか。
「お前は当の本人だろうが。それにイシュトはその時レアルと遊んでたんだぞ? わかるわけがないだろ。てかわかられてたまるかよ」
「じゃぁ何よー」
1人拗ねて頬を膨らまし悪態をつくクーフ。その横ではイシュトがオロオロしながら見守っている。
「はぁ、壁の基本はな、『壁』の形をしているかだよ」
「え? そんだけ?」
「あぁ。それ以外にくそったれも他もないだろ」
「え、じゃぁ私はこの前1体何を作ってたの?」
「さぁな。クッキーでも焼こうとしてたんじゃねぇの」
「そんなバカな......」
「思い出してみろ? お前があの時に作った傑作を」
「うっ......」
そのことを話題に出され、クーフが生唾を飲む。
どうやら黒歴史認定案件なようだ。
まぁしかし、俺はそこまで鬼畜ではない。人の精神をえぐるような行為は控える......
「えーっと? まずは普通の土の壁作った後に? ちょっとした石がボコって出てきただろ?」
わけねぇよな。
「......」
「そんで? なんかスッゴおおおおおおおおおおおおおい石の山が出てきたよなぁ!? なぁ!?」
「うわぁぁぁぁぁぁぁやめてぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
よし。すっきりした。
当のクーフは顔を手足で覆い、公園のベンチの下に潜り込んでいる。
「はぁ、イシュト。慰めてきてやれ」
「う、うん!」
とりあえずイシュトを応急処置に向かわせたが......
俺もクーフのそばに寄り添って1言尋ねる。
「......んで? お前は『壁』の基礎は壊れないことだと?」
「......ごめんなさい」
よし。許そう。
「まぁ、最終的にはできてたからいいけど」
その通り、魔法は『覚える』のが重要じゃない。それをどのように実用するかだ。魔法の醍醐味は『使う』ことにある。まだこいつらには実戦は早いだろうが、もう少し成長したのならばいつか実戦で使ってみたいものだ。
まぁ、この世界の魔族は人と一緒に普通に暮らしてるらしいから、モンスターとかはいないのかね???
そんな夢みたいな、いつ起こるかわからない話を思い浮かべてた......
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その日の夜である。いつもの通り、宿屋クテュルヴでの奉仕......というか仕事を終えて、食事に着こうとお母様に言われたので、食卓についた時である。
......その事件は起きた。
「そういえばだけどさー、おっちゃんの名前ってなんていうのー?」
「あぁ、言われてみれば名前聞いてなかったな。なんでこんなにも自然で居れたのだろうー」
「やだあなた。失礼でしょ? でも確かにきになるわねー」
「......」
何を企んでいるのだろうか。この会話をいとも自然になおかつお母様など俺に聞こえるボリュームで言ってるようにしか聞こえない。よーく聞くとクーフもなんか棒読みっぽいし......仕組まれている?
「俺の名前は......名乗るほどでもないさ。ただの魔族のおじさんだ。
クーフは、おっちゃんでいいぞ。ご両親にでは、言いやすいように言ってもらって構わぬ。おじちゃんでもおっさんでも、気楽に呼んでいいぞ」
「だってよ? パパ?」
どうするの? とばかりにクーフが父親に尋ねる。よくみればお父様は汗すごいなぁ!
どれだけ俺に声かけるのが怖かったんだ? しょうがない。変に俺が恐れてたら意味がないな。
「はぁ、親父さん、俺は見た目ほど凶悪じゃないぞ? これからも気軽に声をかけてくれ。
わしの名は『シュタルヴィッチ4世』だ。どっかの貴族かなんかみたいだが、気にすることはない」
「あぁぁ、じゃぁ、シュタルヴィッチ様でいいかなぁ?」
「そ、そうねお父さん。それがいいと思うわぁ?」
「ムゥ......変なパパとママ......」
それでも緊張感の解けない晩餐にはなったが、大人の異様な空気を察しても理解できないクーフだけが、馬に蹴られることなく、この場を正常で乗り切れることができたとさ。めでたしめでたし。
あと一年。怖いなぁ......怖いなぁ......




