最凶幹部(1)の初めての異世界転移
どうも! Genshoです。昨日はすいませんでした。twitterでは言いましたが、本日これともう一本出す予定です。時刻は10時ごろでしょうか。未定となっております。本当にごめんなさい。
「ウルァァァァァアアアア!!!!!」
「ヒィイいいいい!!!!!!!!!」
「どけどけどけドケェェェェェェェェ!!!!!!!」
真っ平らな荒野。あたりには緑一つなく、見えるのは人、魔族合わさった死体の山と、ボロボロになった武具、そして櫓や建物の跡だ。
そんな荒れ狂ったこの土地に、1人の男が大剣1つを手に振りかざし、まっすぐに進んでいる。向かう先は、戦闘の相手の大群である。ぱっと見数は300人程度であろうか。そんな大群に身を投じる。
破竹。爆裂。撲滅。撃滅。粉砕。玉砕。破壊。壊滅、潰滅。
これだけの言葉を並び揃えたとしてもまだ幾も足りないだろう。
今、俺の目の前で暴れまわるやつはそんな男だ。はたから見ていても優勢であったはずの勇者軍でさえ、今はもうすでにその男の圧に屈服し、じわじわと後退している。
だがしかし、全体の戦況を客観的に見てみると、魔王軍の敗戦はもう確実といえよう。魔王軍からしたらここでいくつか悪あがきをして死のうという魂胆であろうが、人族からしたらそんなものはたまったもんではなく、いち早く戦線から引いて、無駄な血を流さないようにしたい。なぜならもう勝利は決まったようなものだからだ。開戦からまだ日数も浅いが、ここまで早く戦況が決まるとは......
それほどまでに今回の勇者は強かった。まぁ、噂によれば今までの勇者『もどき』が悪い意味で異常だったらしいが、その噂も信憑性が低い。まさかあいつ亡き後あんなことができるなどにわかに信じがたい。いや、俺がこうだから100%そうとも言えないけど......
ん? 俺が誰かって? そうだな、この物語にはほとんど関係しないから名前を出すのはあれだけど、ま、ただのナレーションだとでも思ってくれ給え。ヒントを出すとしたら、旧魔王の義理の息子......かな? まぁ、分かるはずないよ。心配するな。
話がずれたが、魔王軍はもう敗れる。それこそ『壊滅』的にまでも。その彼を含めた幹部10人はもう死しか残されてないだろう。現に幹部第7位のダンの死はもうすでに伝わっている。今戦いという名の狂気に犯されてるこの男ももうすぐに終わるだろう。それ以前の問題だ、たとえ彼が生きて捕まったとしても、『あの男』はそうもいかない。そう、魔王シュタルヴィッチ4世。今世紀最高であり、最凶と謳われた魔王。今まで苦しめられてきた人類からしたら戦犯も戦犯。A級戦犯になるだろう。なんの尋問もなく死刑執行は目の前だろうさ。それが嫌だからこそ幹部は身を張って前に出てるんだろうな。幹部のくせに、泣かせることしてんねぇ......
おっと、余計なことだったか?
んじゃまぁ、俺はそろそろ身を引くとして、こいつらの残り少ない生き様を、遠く遠くから見てるとしますか......
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腕が重い......足も動かん......それでも......声だけは出せる。
......心だけは燃やせる。
全ては魔王様のためにっ......!!!!!!
「オラオラオラァ! どかねぇと殺すぞ! どいても殺す!!! ヒィヤッハァァァァァァァァ!!!!!!!」
......もう俺たち魔族の時代はきっと終わったのだろう。俺らをここまで導いてきてくれた魔王様も今はもう魔王城の中で1人篭られている。魔王様は今まで一度たりとも俺らのことを見捨てるようなことはなかった。
きっとそれはこれからも金輪際ずっとそうなのだろう。しかし今は違う。今ここでは俺らを捨てるべきだ。魔王様は今迷っているだろう。あの人の思考回路は凄い。考えてることや、実行すること1つ1つが常人離れしている。それゆえにこれほどまでにも反発されるのだ。
しかし俺たちは違う。魔王様を信じられる。
だから......
「......もういいんですよ、あなたは自分の行くべき道を進んでください、魔王様っ!!!」
俺たちはもう十分です。あなただけでも生きて、いつかきっと再起を図ってください。あなたの人望ならどこかで理解者は集まってくれるっ!
「ウルゥァァァァァああああああああああ!!!!!!!!!!
魔王様あぁァァァァァあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
とりあえずテメェラ殺すっ、ぶっ殺すっ!!!!!!!!
「死ぃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええ!!!!!!!!」
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はぁ〜ぁ、どうなってるかと思ったら、やっぱこうなっちゃうのか。
......その男は、泣いていたんだよ。泣きながらも自らの主君の名を呼んで戦って、そして儚くも散っていったのだろう。
言葉をかけるのならば『流石』の一言だろう。この男を失ったとしたら魔王軍は痛いだろうし、魔王自身もそれを望んでいないはずだ。
何せ、子供の頃から1番可愛がって育ててんのだろうからな......
......しかし、現実はそうもうまくできてない。
──その男の訃報が『この世界に』伝わったのは、その1時間後である。
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「うぅ......」
......俺が目を覚ましたのは、見たこともない地域の砂浜だった。
一概に『砂浜』と言ったが、よくみると周りに水辺らしきものは見当たらない。どうやら砂漠のようなところらしい。
しかし、俺の身はどうなったのだろうか。なぜこんな場所に倒れていたのだろうか。気を失っていた??? 人軍との戦いでこんな場所はなかったと思ったが、死体と思われて捨てられたか?
それ以上に心配なのが魔王軍の行く先だ。魔王様は生きているのだろうか。あいつらも無駄死にしてないだろうか。幸か不幸か俺は生きている。もし戦いに負けていたとしても何らかのアクションはこちらから取れる。
それにしても......それにしてもだ。俺はこの世界ではそこそこ有名だと思うのだが(悪い意味で)、なぜ放置してても誰も気づかないのだろうか。さすがに人に顔を見られたら即座に斬られるような人生を送ってきたと思うぞ......?
「一体ここはどこなんだ??」
この場所にいるのに2つ疑問が浮かぶ。
まず1つ目の疑問だ。ここは一体『魔界』なのだろうか。上を見てみる。青い空が延々と広がっており、雲ひとつない快晴だ。──ちなみに魔界の空は紫だ。曇ると黄色がかった赤になる。もうこの時点で魔界ではないか、もしくは魔界のどこか俺の知らないとこなのかがわかってしまった。少なくとも魔王城の近くではない......
次に2つ目の疑問。さっきからずっと周りを見渡している。まぁ、警戒しているんだが、人、魔族がどこにもいないんだ。確かに魔界に砂漠はあるし、言われてみれば人もそんなに入り浸るような場所ではない。しかし、向こうを見てみると木々や何らかの建物らしきものも見える。ということは誰かしらはいる。もしくいたはずだ。
なのにそれなのに今人影が1つも見当たらない。
どこだ? ここは一体どこなんだ? 下手に人前に出て殺されたりするのも嫌だな。少し魔族を探して旅にでも出てみるか。
──突如
「グゥキュルゥゥルルルるるるる......」
鳴り響く窮屈な音。言わずもがな発生源はその男の腹だ。
「あぁ、飯がない......」
思い出せば戦場に向かう時以来何も食っていないな......
補給食として所持していた軽食はどこかに落としたのか......
だが、自分で言うのも何だが、幸いにも俺は料理が得意な方だ。魔王様にも幾度か食べさせたことがある。なので食材があれば自分で食うことも可能だろう。しかしその食材が見当たらん。最悪自分で作るか。もしくは海や川を探して魚を釣るかだ。
とりあえずは同志を探しに行きますか。下手すりゃあいつらや魔王様にも会えるかもしれん。
そんな軽い気持ちだが、俺は歩くことを決めた。その後ここが魔界でないことを知ったのはもうすぐの話だ。
明日は試合できるのでしょうか......