最凶魔王の初めての敗北
どうも! Genshoです。新作です。なんか色々めんどくさくなってきましたねー。他作品との世界観がごっちゃになりそうです......
そう、再来はあまりにも突然だった。その1人の男によって町の人々は狂乱し、もうあれ以来ないと思っていたのに、今回の『奴』は最大で最高で最悪の......
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「......魔王様! 勇者軍がもう目と鼻の先まで迫ってきております!!!!」
禍々しい部屋......その一角で1人の人外の男が叫ぶ。
「......幹部を集めろ」
それに応えるのが『魔王』と呼ばれたこの男。龍のような姿をして、その頭には曲がりくねった角が2つ付いている。
側近らしき人外男は小さく絞られたような声で返答をする。
「そ、それが......魔王軍幹部全10名っ、勇者軍との戦いで惜しくも討ち死になされましたっ......」
──しかし、その口から発せられたのは頼りにしていた幹部の、可愛がっていた仲間の、最期を告げる非情な宣告だった。
しばしの沈黙の後。再び『魔王』は口を開く。
「なぁ、......お前は、家族はいるか?」
「は、はい?」
「愛する妻や、子供はいるか?
お前が死んで、悲しむ親はいるか?」
何を言ってるんだこいつは? 訝しげな目で人外男は魔王を見る。
しかしすぐ、その目は真意を捉える。
「はい......両親加え、家内と......息子が2人おります」
「そうか......。よし! 帰っていいぞ」
「え......? 帰ってもいいというのは......?」
「お前の愛する、愛される家族の元へ。戻れ。
......悲しませてはいけぬ。俺はそれができなかった。見ろ。周りを。何かここに残っているか? 違うだろう。
今、俺とお前しか『魔王軍』が証明できるものはないんだよ。ならば俺の遺志を継ぐものはお前しかいないだろう?」
違うか? と魔王は問う。
本当は自分が一番悲しいはずなのに。家族以上に思っていた者を10人も無くしたはずなのに。
魔王はそれでも仲間を優先した。それが魔王たるもののポリシーなのか、それともこんな者にもある欠片の優しさなのかは......わからない。ただ分かるのは......
「魔王様っ......はっ!!!!!!」
......彼が一番この世界で慕われており、一番の指導者であるということだけだ。
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それが歴代 最凶の魔王と呼ばれたシュタルヴィッチ4世の家臣にかけた言葉として後々 人間の世界で有名になっていくのだが......
19歳で魔王就任。もともとの武力と祖先譲りの見事な采配、戦略で異種族たちをどんどん撃破し、就任15年目が経ったとき、若干34歳での魔界の統一を果たした。しかし、魔族は高寿命なため、この記録が長いか短いのかは真意は不明である。なお、魔界が魔王によって......魔族によって支配されるのは、4世の曽祖父であるシュタルヴィッチ1世が成し遂げてから約60年ぶりである。
ここで魔族──魔王家について少し触れよう。
シュタルヴィッチ1世は実は魔族と人間のハーフだという伝説があるが、嘘か誠かは定かではない。その1世時代〜3世の途中まではダンジョンを建設し、魔族に抵抗する。そして、その頃生まれたとされる人間だけがなれる討伐者、『勇者』を撃退していき、領土を増やしていったという。しかし、その猛威も一時は潰え、4世が生まれる前には領土は今の半分になっていた。そのため当時の魔王だった3世は、ダンジョンの建設をやめ、本格的な武力制圧を目指していく......
そして時は流れ。シュタルヴィッチ4世の即位。即戦闘。圧勝。
『仲間以外皆殺し』
そのモットーを掲げ、生涯貫き、誰よりも仲間、味方を第一に優先した、最強で最凶の魔王......
我慢に我慢を重ねた上での武力統一。反対派も多い。当然人々の反感を買うこともあった。しかし、それでも結局は丸く収まる。そんな最強で最凶で最高の魔王、シュタルヴィッチ4世。
その一生は最後まで家臣を気遣う気持ちであった。
場所は変わらず、魔王城の一室である。そこでは最凶とまで謳われていた戦犯が一人暗く佇んでいた。
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はぁ、10人ともか。みんな死んじまったか......
そんでもって俺をやったのはあいつで、そのまま外に出て死んだか。
くそっ!!!!!!!! 俺がもっとちゃんとしていればっ!!!!!!!
俺の選択はどっから間違えたんだろうな。幹部ら、みんな俺に従ってくれてたのにな......
ごめんな? 俺もすぐお前らを追っかけることになるだろがな。まぁ、少しは敵討ち程度に暴れるつもりだがよ......
只......一つだけ言い訳させてくれ。今回の勇者まじ半端ないって......あいつまじ半端ないって......だって魔王軍ほぼ全滅だもん......
なんて言ってても始まらねぇ、ちょっくら勇者いじめに行ってくるわ。返り討ちにあうかもわからんがな。
......天国から見守ってくれよ。な?
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ギギギギギギ......
重い門の軋む音がなる。鉄壁と罠に囲まれた魔王城の門がひとりでに開く。開戦の合図だ。
「門が開いたぞ! 今回まで向こう約100年。今度こそ我々人間を苦しめた魔王を討伐する! 野郎ども! 用意はいいかぁ!!!!!」
外では選ばれし男、勇者の声が地面一体に響き渡る。それに民衆も答える。空は赤黒く染まっており、これから起こる戦争を表しているかのように......
「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおォォォォ!!!!!!!!!!」」」」」
そんな男どもの前に、漢が1人(1体?)立ちはだかる。
「よっしゃ行くぞォォォォおおおお!!!!!」
「......ふっ、そうはさせぬ」
「出たな魔王! 今回は貴様の命頂戴する!」
「ほざけ。お前なんぞに負けるかよ。これでも歴代最凶を名乗ってるんでな」
「っ、......黙れ悪党が。もう魔族の時代は終わってるんだよ。それよりな、少し違和感を覚えたほうがいいぜ? 最凶魔王様? 俺としてはどおっしてもあんたを倒さないといけないんだよ。そういう宿命なんでね。そうでもしないとこの世界線が壊れてしまう......」
「あぁ? 何言ってんだ? お前に何があるかは知らないが一応こちらも大事な大事な仲間を殺されてるんでね......
ただでは死なねぇぞっ──!!!」
ヴアッッッ
彼──魔王の背後から紫ともとれはしない黒色のオーラが幾重にも溢れ出す。
まるでそれは、先ほどの戦いで先立った十人の幹部が空から応援してるようだった......
「手加減しねぇぞ......っ、勇者よォォォォォォ!!!!!!!!!!!」
「ふんっ、いいじゃん、受けて立つぜ!」
勇者も聖なるオーラを纏い、魔王と相対する。距離にしておよそ5mぐらいだろうか。両者は、それぞれの思いをかけて戦うのであった。
「おら! お前らやばくなるまで手ェ出すなよ! 魔王と勇者の最終決戦だ!」
「ほざけ......くそっ! こっちは俺なりの最終決戦と行こうか......」
勇者は後ろにつく人間の兵士たちに手出しを拒否する。しかし魔王の後ろには誰もいない。愛していた仲間は、もういない。彼にとっては最初で最期の孤独な戦いであった。
「「ハァァァぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!!!!!!」」
その両者の間に割って入ろうなどするものはいない。割って入れるようなものだったら既に終わっている。
キンッ! ガキンッ!!!
「ウグゥ!?」
激しい打ち合いの末、魔王の右足に聖剣がクリティカルヒットした。その名の通り、魔王は聖剣に弱い。原理は謎だ。
「よっしゃ! ふんっ! ッタァァアアアッッッッッッッ!!!!!!!!!!」
勇者がその隙を見て距離を詰める。しかし、魔王は負傷した右足をかばうように上空へと避難する。
「はっ!」
ゴォォォォォ!!!!!
ピシュゥゥゥゥゥン......
魔王の手から放たれた膨大な魔力が上空から降り注ぐ。
しかし、その甲斐も無くあっけなく勇者の手に弾かれる。
「んなっ!」
「やるねぇ、おっさん!!!!」
「......ふっ、笑わせてくれるな! 若造!!!!!!」
「これでも一応やらなきゃいけないことがあるんでね! そのためにあんたは絶対倒さないといけないんだよ!! でもなぁ......
三年前くらいだったら俺が負けてたかな?」
「あぁ!? なに!?」
ビュッ......
一瞬の風をきる音。残像を発見した時はもう遅い......
ピト......
勢いよく詰め寄った勇者の聖剣が彼の首筋にピタリと当てられていた。
「クッ......ハッハッハッハッハッハ!!!!!!」
「なんだ、何がおかしい?」
「いやぁな。そうだな、三年前だったらな......」
三年前──それは最後に勇者が来た時。あの時は二人組であっただろうか。
いや、今考えると『勇者』はいつも複数人できていた。一人だけの勇者は初めてだ。そうか、この勇者の言っていた違和感とはこれか? 確かになぜか今までよりは強い。いや、一人故にここまで強大なのだろうか。
『その時』=三年前の魔王が一番強い。自他ともにこう言う。
彼は一息おき、その言葉を口にする。心なしか、その目は濡れているようにも見える。
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「いいだろう。ここまで強くなったか、今の勇者は。もう俺たちの時代......魔族の時代は終わったんだな。
......介錯せい」
アルフ
ゴードン
ヴィルド
マリア
スティール
グィッグ
タロー
ダン
クルック
ボーグ
みんなごめんな。やっぱ敵討ちとか無理だった。
......けど今すぐ行くぞ。
俺は戦ったばっかで腹減ってるからな! お菓子、用意しとけよっ!!!!!!
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「──ズバンッ!!!!!!!」
文化祭の準備がめんどいめんどい......