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任務時準備と一本勝負


 東巨大街壁から太陽が顔を出し街に活気が湧く。ギルドを出てから一時間が経ちたくさんの種族が街を往来する。その中を僕も歩いていた。


「あとは人除けの魔石と僕の武器か」


 今日受注したガーゴイル戦に向けての準備。基、戦闘を誰かに見られないための。冒険をする場合人除けの魔石は使用しない。魔石の効力によりモンスターとの戦闘で得られる経験値、素材(ドロップアイテム)を一人もしくは仲間(パーティー)で獲得でき能力の機密性は増すがその代わりに全滅の確立が増す故に使用するものが極めて少ないアイテムだ。

 だけど僕はこの道具(アイテム)に助けられていた。能力の秘密は必然的に面倒ごとから避けられる意味があるから。


「本当にこのアイテムはありがたいよ」


 改めてこの魔石に感謝をしながら僕は大通りに構えた小さな魔石店に入る。


「いらっしゃーい、クロガネさんいつものかい?」


 魔石店の主人であるルーブルさんとの付き合いは長い。この街にある魔石店の中でも人除けの魔石があるのはここルーブル魔石店だけだ。


「ルーブルさん人除けの魔石を五個くらいください」


 いつものよう箱から紫紺色の石を取り出すとカウンターに並べる。

 魔石は数が中には少なく超硬合金(オリハルコン)耐魔硬合金(アダマンタイト)などの超希少金属(レアメタル)に相当するものも存在し並の冒険者は目にすることすらかなわない。


「それじゃ全部で二千ダルクだよ」

「二千ダルクね…はい丁度」


 僕は小包からお金を出すと次の店に向かった。


「次のところは…」


 次は今いる場所から少し距離のある鍛冶屋だ。今日発注していたものが完成したとの連絡が入り僕は少し興奮していた。久しぶりに発注した専用武器。


「あ~楽しみだな~名前は何になってるのかなぁ~」


 使用した素材は火竜(サラマンダー)の牙に麒麟の角、オリハルコンの欠片を使用した武器。価格だけならば億ダルクは超える業物。

 鍛冶屋まではまだ距離もあるので僕は街の散策を始めることにした。


「懐かしいなぁ」


 まだ新米冒険者だったころよくお世話になっていた武器屋に宿屋。流石新米の集まる街というだけあって未だ根強く繁盛している。中の店主は元気なのか気になるところではあるが生憎発注した専用武器のおかげで今月はカツカツだ。うれしくも悲しくもあり心境は複雑。そんな調子で歩いていると前に人垣ができているのに気づく。


「何だありゃ」


 いったい何に群がっているのか。それが気になるのもヒトの性。僕も思わず周りにつられ見てしまう。


「おぉ、新米冒険者のトーナメント戦か...」


 みんなが見ていたものそれは今から行われる新米たちのトーナメント表。この街でも名のある大会。だが皆が皆ただ決闘を見るのではない。賭けをするんだ。

 一回に賭ける額は最低二千ダルク。誰が勝つかは全く不明のイカサマ禁止データやグラフもない100%の運勝負。


「しまったーー今日はこいつの開催日だった!」


 月に一度の大行事(ビッグイベント)。新米は皆予選から上がった強者。見るだけでも面白いが賭ければなおのこと面白い。


「しかし今の残金はこの二千ダルクのみ…」


 だが勝てばその百倍の額で帰ってくる。残りの生活費賭けるか否か。真っ当な人ならばするわけもない究極の選択。僕も分かっている。

だから僕は選んだ。

真っ当な選択を!


「38番の冒険者に二千ダルク!」


 今月残りわずかの生活費を賭けた勝負。負けられない戦い。僕が賭けた新米は初参加の冒険者。見た目ならば誰よりも鍛えている上腕二頭筋に僕は賭けた。


「やっちまったアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


結果は惨敗。よりにもよって一回戦負けで敗者復活戦も負け。ギャップに惑わされた僕のバカ!

 僕の悲鳴が街にこだまする。その一週間僕は変人扱いされるとはこの時微塵も思っていなかった。


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