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強制任務

 

「はぁ…やっと到着したわ」

 重い溜息を吐きながら門番に通門を提示して中へと入る。五日間歩き続けた脚はまだ余裕とはいっているが心のほうはすでに限界だ。

「ギルドに報告書(これ)持っていくのめんどくさいから後でいいや」

 僕はそのまま行きつけの激安物件であったいわくつきらしいわが家へ帰る途中消費したアイテムを買い揃えた。

「たっだいまぁ~」

 部屋に帰るなりベッドにダイブ。時間は午前十一時頃。これならあと六時間は寝ても報告への支障はないと判断しゆっくりと意識を手放した。


 ドンドンドンとドアを叩く音が聞こえ僕は目を覚ました。辺りは日が落ち街は明かりに照らされ朝とはまた違う雰囲気に包まれる。

ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン。

「どちら様ですか」

 まだ完全には覚醒していない体を起こしドアを開ける。

「私よ!クロガネさんの担当サポーターでギルドの受付をしてるマリーよ!」

 眉を吊り上げものすごい権幕でドアの向かいにいる僕を睨み付ける。

「ハハハ、マ、マリーさんじゃありませんか」

「そうですよ!私ですよ!」

 なんでマリーが僕の家に来たのか思い出すのに時間なんか必要ない。強いて言うなら言い訳を考える時間が惜しい。

 僕は大人しくマリーに報告書を渡した。

「何でいつもいつも出しに来ないのかなぁ?」

「いやぁ、帰って少し寝たら持っていこうとは思ってたんだよ」

「半日も少しっていえる?」

「言えません」

 ここからいつもの説教が始まるのは至極当然の流れ。それからマリーの説教が終わるのは二時間後のことだった。


「ねむ…」

 マリーに変な時間に起こされ説教が終わってから四時間。僕は重い瞼をこすりながらも朝の身支度を整え家を出た。時間は朝の七時。心地よく澄んだ空気が重く沈んだ心にふい抜ける。

「はぁ、今日の依頼(しごと)は楽だといいなぁ…」

 重い足を引きずりながら僕は冒険者ギルドに向かった。


「おはようございます」

「おはようクロガネさん今日は昨日言った通り来たのね」

 笑顔で僕と挨拶を交わす悪魔(マリー)。昨日の今日ではさすがの僕も来ないわけにはいかない。

「今日はステータス診断だったよね」

〈ステータス診断〉とは月に一回ある冒険者の健康診断のようなものだ。体調のほかにスキルや魔法、得た称号隅々まで見られる。

「じゃあ背中みせてー」

 僕はマリーに言われた通り背中の刻印を見せる。

「んじゃ行くよー」

 マリーが手をかざすと刻印が光だし背中に当てた羊皮紙を焼く。

 少し焦げた匂いが小部屋に充満し鼻につく。この匂いは嫌いだと思っているとマリーが鵜王妃氏を渡してくれた。

「相変わらずアホみたいな能力値よね」

 あきれ顔のマリーをよそに僕は羊皮紙に目を落とす。


 トツカ・クロガネ レベル98 職業【不明】

 攻撃力:S1842 防御力:SS2031 速度:測定不能

 体力:S4097 魔力:S4018 耐性:SSS

 スキル

【巧】

  どの武器でも使いこなせる:消費魔力無

【隠密】

  気配を殺し相手との距離をかなり縮められる:消費魔力小

【自動回復大】

  一秒間に三ポイント体力と魔力を回復する:消費魔力無

【韋駄天】

 速度の超補正:消費魔力無

【集中】

 矢を使うとき命中率が上がる。チャージが速くなる:消費魔力無

【覇王】

 敵の部位を破壊しやすくなり格上の相手にも怖気づかなくなる:消費魔力無

【修羅】

 攻撃の際オートでチャージされる:消費魔力無

【憤怒】

 自身が敵と判断したとき全ステータスの強制昇華:消費魔力無

【傲慢】

 全てのバッドステータス及び魔法、スキルの無効化:消費魔力無

【十握剣】

 所持している得物を十種類に変換できる:消費魔力中

【狂気】

 禁忌の呪法。使用者の意識、魂と引き換えに莫大な力を得る:消費魔力超

【早熟】

 レベルが上がりやすくなる:消費魔力無

【愚者】

 ステータス及びスキル魔法の偽装ただし偽装している間スキル、魔法は使えずステータスもその通りになる:消費魔力無

魔法

【付属魔法全属性】

 火水土雷風竜闇光全ての属性を得物にまとわすことが可能:消費魔力、維持消費魔力共に小


 正直いつみてもびっくりステータスだと思いながら僕は羊皮紙を丸めてポケットにしまう。

恐ろしいほど肉弾戦特価型のスキルと魔法でしまいには相手にもそれを強いる【傲慢】の能力。

レベルはたったの五年で98。【早熟】のせいもあるがここまでの成長の理由は【憤怒】【傲慢】【韋駄天】にあると誰でもわかるのは明白だ。

 これからも秘密を守り通していかなければと思うと僕の精神的負荷が上がった気がする。脱いだ上着を着て僕はマリーに聞く。

「今日の依頼は何?」

 いつもの案件。僕の秘密を守る代わりにギルドの最高難易度の依頼をこなすという密約。

「今回はこの依頼を達成してね~」

 依頼書の羊皮紙を手に取り僕は目を通す。

《件名》

 石魔ガーゴイルの亜種を確認。早急に駆除せよ。

《難易度》

 ガーゴイルのレベル約60。

必要討伐職業レベル70。

必要職業【祓魔師(エクソシスト)大司教(アーク・ビショップ)

《出現地》

 [始まりの丘]

《被害レベル》

 黄色~赤


「確かにこれはやばい」

「でしょ?」

 ガーゴイルの平均レベルは10以下で生息地はローグ近辺。

 ローグは始まりの街と呼ばれるだけあり下位冒険者が集まりできている。その理由としては他の街と比較してもモンスターレベルが低いからだ。

 ではそんな街の近くに60近くのモンスターが現れたらどうなるのか。

 間違いなく冒険者はおろか街そのものが崩壊。

 そんな最悪の事態を防ぐために僕たち《七人の冒険者(プレアデス)》がいる。

 僕も一応その中の一人。ギルド登録には【剣士】となってはいるがこの街に派遣され僕の人生設計は脆くも崩れた。マリーの生まれついた異能【心眼】によって。

「それじゃ行って片づけてくるけど僕のステータスは絶対に言っちゃだめだからね!」

「わかってるって~あまりしつこいと言っちゃうかもよー」

 いつもと変わらない締まらない会話を交わすと僕はギルドを出て街に向かう。


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