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31~35話

>31

「君って案外節操無いよねぇ」

心当たりがあり過ぎて思わず固まる。

眼前に立つ参謀殿は、他人を弄る時の張りつけたような良い笑顔だ。

「この一週間で10人連れ込んだだろう。色男は格が違うな、見習いたいよ」

「アンタ21人相手してませんでしたか……」

「惜しい、23」

「もう何の数字か分かんねぇ!」

僕も大概だが、一体いつ寝てるんだこの人? いやそっちの意味じゃなくて。

「どうせなら手伝ってくれよ」

「僕好みの相手でハーレム作りたいだけなんで!」

「修羅場作りたいの間違いじゃないのかい?」

「悲劇作りたいよりマシです……」

この人と寝て無事な相手がどれだけ居るのか調べてみたい。そっちの意味で。

「ところで女装して援交したりしないのかい?」

「お金じゃなくてアンタみたいに人騙して楽しみたいだけなので程々にしかしません!」

「同類じゃないか」

「相手が片っ端から死ぬ男と一緒にするの止めてくれません!?」

ちなみにこの後修羅場った。ラインハルトさんが冷たい笑顔でこっちを見ていた。もうやだこの人。

>32

朝起きたら、ラインハルトさんが一緒のベッドで寝転がっていた。

一気に目が覚めた。決して昨日酒に酔って失敗した結果とかじゃない。もっと致命的な自爆だ。

「はは……リヴィだったら普通にこの状況でボケられたんですかね……」

「頭が良いって悲しいね。しかし君は馬鹿をやった」

ボケの為の舞台装置は用意されている。でも無理だ。命が危ない時にボケられるわけがない!

「御免なさい、ボスの素性漁ったのは謝ります! だからコンクリートに混ぜないで下さい!」

「ははは、コンクリートに混ぜると腐敗した時にガスが発生してね。亀裂が入るし、海に沈めても浮くんだよ」

「うわぁぁ手慣れてる!? アスファルトに混ぜ込まれて道路にされちゃう!?」

「分かってるじゃあないか、まぁ手伝ってるしな。ちなみにこの方法で不死身の人間も始末した」

「わーん、手がつけられないよこのインテリヤクザ!」

目をつけられたら逃げられない感がヤバい。そして目をつけられている。

終わった。

「流石のお前でも死ぬのは怖いか? もうちょっと度胸つけて欲しいもんだな」

「死ぬのじゃなくてアンタが怖いんです! この圧力に耐えられる奴とか人間辞めてる!」

「そんな物に固執するなよ。こっちに来たら楽しいぜ」

「化け物への勧誘するとか星の知恵派教団の神父様ですか! もう宇宙的恐怖は間に合ってるんでお帰り下さい!」

「這い寄る混沌から逃げられると思うなよ、坊や」

めっちゃ勧誘されてる。化け物にされちゃう!

ひとまず生き残る方法を考える。周りを見る。頭を抱えた。

「……次はないって事ですね」

この人なら忠告もせずさっくり存在を無かった事にするだろう。

ボケる土台まで用意してくれる。凄まじく良心的だ。

「よしよし、賢い子は好きだぞ。次やったら、殺しはしないけど永遠に妹と会えなくしてやるからな」

「僕にとっては殺されるより辛いです先生!」

「だろうな。お前の事は買ってるんだ、失望させないでくれよ」

そうして僕は何とか逃げ延びたのであった。

後で妹に泣きついてボコボコにされた。ご褒美でした。

>33

ボスが包帯男になっていた。

いつもよりラインハルトさんが怖い。こっち見んな仕事しろ。

「ボス、よっぽど強い敵と戦ったんですね」

「うむ、危うく腕を切り落とされる所だったが、かすり傷で済んだ」

「その落差は一体!!? って言うか包帯ただのコスプレじゃねーか!」

これでピリピリしている横の人も怖い。何なのこの親馬鹿。

「犯人はミンチですかね!」

「手足切り落として闇商人に流してやったよ」

「そんな気はしてました!」

かすり傷一つで生き地獄に遭うなんて、この世は理不尽である。

さっさと死ねますようにと祈る。あれ、善意なのに字面が悪ど過ぎるぞ?

「油断やかすり怪我一つで人は死ぬぞ。こいつが死んだらまたつまらん人生を送る羽目になる」

「基準の自己本位っぷりが流石です側近殿!」

差し出された珈琲牛乳を飲む。

飲んでから、嫌な予感がした。

「私にもくれ」

「うん? 君は薬や毒が効かないからな。あれの10倍は投与したぞ」

「そう言えば薬がそのままの形で入ってたな。ボケられなくて残念だ……」

「君が寝てくれたら助かるんだけどねぇ」

「ちょっ、ふつーに毒盛るの止めて下さいよ!?」

ラインハルトさんはにっこりと良い笑顔を浮かべる。

ボス、頼むから羨ましそうにしないで。包帯越しに様子が分かるぐらい反応すんな!

「一瞬の油断で死にかねないって事さ。勉強になっただろう、少年?」

なり過ぎです。

僕は昏倒し、気付いたら横でリヴィともう一つのコップがあった。八つ当たり怖い!

>34

リヴィがボスにミルクティーを差し出す。

すかさず参謀様がそれを奪い、リヴィの口に押し込んだ。

「ぶごはっ!?」

「お痛はいけないなぁ、リヴィ。これハバネロ入れただろう」

「うえぇ、いらい、かりゃいー!」

涙目だが自業自得である。

この男の学習しなささは尊敬の念すら覚える。ラインハルトさんにミンチにされたい願望でもあるのだろうか?

「次やったらミキサーでジュースにして飲むぞ!」

「うぅ、何で俺こんな酷い目ばっかあってんの?」

「正直マゾに躾けてやろうかなと思っている」

「アンタ俺をどこに向かわせたいの!?」

「んー、女装マゾ豚奴隷?」

「わーん何か凄く嫌な単語しか並んでない!」

マジでろくな事しねぇなこのヤクザ。

そして豚は物理的な意味の気がする。食用にするという意味で。

「そう言えばそんなタイトルの本がここにあったが……」

「お前か!」

「えっいや違いますマジで!」

「僕だ!」

「よし死ね!」

「あっしまった地雷だった」

「分かり切ってんのに何故踏んだ!!?」

「お前こそ何で踏むんだよ!」

そして僕等は仲良く軒下に吊られた。生きてるって良いなって実感しました。

>35

「お前ってさぁ」

「ん?」

「エロ本って何だと思ってんの?」

「何かよく分かんないけど、女の子と仲良くする本?」

気になったから聞いてみたが、やっぱりアレな回答が返って来た。

「現実でするなよ、絶対だぞ!」

「振り? でもそんな相手居ないしなー。っていうか駄目なの?」

「振ってないし居なくて良い! マジで!」

こういう面倒な事は全部ラインハルトさんにぶん投げたい物である。

僕は飼育係ではない。調教係である。

「あ、じゃあお前とやろう!」

「何かそんな気してた! えぇい寄るな、ポチ、ステイ!」

「ポチ? どこ?」

「お前だ。お手」

「わん!」

「おかわり」

「あおーん!」

「抵抗しろ!?」

何故かお座りしている。無い尻尾が見えるようだ。

「餌!」

「ドッグフードならくれてやる! お前の為に買ってやった物だからな、有り難く頂け!」

「何してんのお前!? でも下さい!」

「えっ」

その後リヴィはドッグフードと野菜炒めを美味しそうに食った。ドッグフードと同列扱いで泣いた。

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