毎日の積み重ねが必要です。
お兄様は学園へ戻るまでの一週間の間私にたくさんの魔術を教えてくださった。無属性の魔法がほとんどだったけれどおかげで箱魔法は完璧に扱えるようになり、これであの魔導書たちも晴れて私のものとなった。
お兄様が譲ってくれた魔導書は闇属性の物が多かったけれど主に攻撃系統の魔術が記されていて、内容も難しくわからないものも多かった。その為私はひとまず主に使える魔術を増やすことよりも魔力の質を下げずにより魔力量を増やすことに重点を置いて練習をすること決めた。
お父様とお母様に見つからないように毎日コツコツと魔力を練っていく。はじめの頃は部屋にひきこもっている私に対してお父様はお兄様になにかされたんじゃないかと妙な心配をしていたけれど、だんだんと何も言わなくなり....
そのかわりに私のご機嫌伺いにとたくさんのドレスやアクセサリーをプレゼントするようになった。
そんなものより魔導書が欲しいのです、お父様
「うーん、やっぱりむずかしい」
一般的に魔力量が増えるほど魔力の質は下がってしまうらしい。質を下げないためにはお腹の奥にある魔臓にしっかりと魔力をためる必要がある。魔臓では常に一定の量の魔力を貯めておかないと、魔臓内で足りなくなった魔力を補うために質をさげて魔力つくろうとしてしまうからだ。
魔力を増やすためには成長期にたくさんの魔術を使うことが一番効果的だと言われている。けれども魔力量を増やそうとたくさんの魔力を使い練習しすぎると魔臓に貯めておく魔力なくなり、結果的にそれが質が下がってしまう原因になってしまうらしい。
魔力の質も魔力量と同じである程度成長するとそれ以降大きな変化をすることはなくなる。魔力洗礼を受けてからの約10年間、その成長期の間にいかに質を下げず魔力を増やしていくかが大切なのだ。
私の魔臓は常に貯めておく必要がある魔力が30。そして自由に使っていいの魔力は70。
魔術師の血筋であるおかげか、自由に使える量が他の魔術師よりも幾分か多い。加えて元からの魔力の質もかなり良質なもののようだ。
毎日70限界まで部屋にあるお花に魔力を注いで成長させたりしながらこつこつ魔力を使い、残り30には絶対手を付けない。無理な練習は厳禁だ。無駄に質を下げてしまうだけ。そうやって毎日限界まで魔力を使ったら、後は魔導書を読んだりして過ごす。
この魔力のコントロールは一見簡単なように見えるがこれが意外と難しいのです。
魔力というのは使うだけで意外と体力を消費するものであったし、魔術を使った時にだけ消費されるわけではない。
その日の体調や天候でも自然と放出されてしまうのだ。私は雨の日にその影響を受けやすかった。雨の日は普通に生活しているだけで無駄な魔力を放出してしまう。
───数字で表すなら50程度も無駄に。
魔術を使っていないから魔力量を上げることはできず、雨の日はコントロールが難しく30を貯めておくだけで精一杯だ。加えて身体もだるくなり、ふらふらとなったり熱が出てしまう時もあり、酷いときには気を失ってしまうこともあった。
そのせいか私はメイドの中では病弱なお嬢様と認識されているようでした。はて、これは良いことか悪いことか...。
数カ月おき程度に送られてくるお兄様からの手紙。それもプレゼントつきだ。表向きはドレスやパンプスなどのプレゼントと記されているが、中身はお兄様が選んでくださった魔導書。はじめの頃は基礎的な魔導書を選んでくださっていたが最近は回復系統の専門書や魔法陣についての物が多い。
「今月の魔導書は守護魔法陣ですね」
お兄様はもう長い間お家には帰ってきていない。
より高度な魔術を学ぶためにフィリア魔術高等学園に進もうとしていた。そのため飛び級をして貴族学園を卒業する必要があり、想像できないくらい忙しい学生生活を送っていた為だ。
同封されていた手紙に急いで目を通す。その内容に思わず頬がゆるんだ。お兄様が帰ってくる。4年ぶりに。4年ぶりにお兄様がお家に帰ってくる。
引き出しからお気に入りの青い薔薇の便箋と羽ペンを出し、急いで返事を書きはじめる。
夏期休暇に帰ってくるということはあと2ヶ月後くらいだろうか。お兄様には手紙では書ききれないほど伝えたいことがたくさんある。
あぁとっても楽しみです。
お兄様にはあの計画のことを直接あって話したい。
きっとお兄様はびっくりするでしょうけれど。
それに4年ぶりのお兄様です。
さぞかし昔よりかっこよくて素敵なお兄様になっていることでしょう。こうしちゃいられない、もっと高度な魔術の練習をしなければ。とびっきりの魔術を披露しなければ。さぁ頑張れ私。
またまた説明回。
簡単な例ですと
質より量のファストフードばかり食べてると
簡単で楽だけど不健康になっちゃうので
なかなか難しいけれどきちんとした食事をしましょう
って感じの話です。