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~15.城内迷子のお知らせ~

5/17追記

急遽、出張の為予定していた時間に投稿ができそうにありません…申し訳ございません

次回は1日延期して5/18 21:00に変更致します。


ルヴィアがいた部屋を出ると俺の目に強い光が飛び込んできた。

その光の強さに耐え切れず思わず俺は手で太陽を遮った。

…どうやら俺は日の光を浴びるのが久しぶりのようだ。

しばらくすると目が慣れたのか光が弱まった気がしたため、ゆっくりと手を下ろして周囲の様子を見ることにした。

すると目の前にある柵を越えた先には美しい景色が広がっていた。

均等な長さに統一された美しい緑一色の芝生の庭。

周囲には木製のベンチがあり、足を休めるのには最適だ。

中心には小さな噴水もあり、心地いい水音が安らぎを演出している。

そして優しく照らす木漏れ日がこの光景に彩をそえる。

全てが調和した庭園…ここで日光浴をしたらとても気持ちいいだろう。

左右を見ると、そこには西洋の宮殿を彷彿とさせる回廊が広がっている。

柱ひとつとっても繊細な模様の彫刻が施されていて、芸術性が高い。

それが細部にまで装飾されている…その光景を前に言葉が出てこない。

庭園も含めて、一枚の絵画を見ているような感覚に陥る。

その光景にいつもでも見とれている場合じゃない。

そう現実に戻ると、ふと自分のミスに気が付いてしまった。

「って、奥ってどっちだ?」

そう、ここはその回廊が両方にあるためどちらに進んでも「一番奥の部屋」である。

しかもこの回廊はかなり長い。どちらも終着点が見えないほどに長いのだ。

この世界の身体能力ならば瞬時にどちらにもいけるのだが、今は起きたばかり…身体は動くがまだ少し痛む、本調子ではない。出来る限り体力の浪費は避けたい。

ルヴィアに詳細を聞いておけばよかった。

「なんか目印でもあればいいんだけどな…」

俺はなにかないか注意深く周囲を見渡した。

すると出てきた部屋のドアに何か書かれているのに気が付いた。

幸いにも俺にも読める字…日本語で書かれていた。

いまさら気づいたが、シンビオシスの語源は日本と同じみたいだ。

ご都合主義かもしれないが…まあ、気にする必要はない。正直助かった。

さて、何かの手がかりになるかな?

「なになに……『生態実験室』……?」

…読まなきゃよかった。本当に読まなきゃよかった。

なんてところに俺は寝ていたんだ。

「いや、でも、あれだよ。人間って後悔しても知りたくなる生き物だろ?」

どうやら混乱しているようだ。自分で意味の分からない言葉を口走っているのが分かる。

なんか急に寒くなって来た…日差しは俺のことを暖めてくれない。

「ル、ルヴィアがそんなことするはずないじゃないか。」

…多分。

彼女は優しいのだが…ウィンのことになると人が変わるんだよな。

「…みなかったことにしよう!」

とりあえず自分の背中から流れている冷たい汗を感じなかったことにした。

ほら、防衛本能ってあるじゃないか…仕方ないよな、うん仕方ない。

俺は背を向けて、ゆっくりとドアから離れていった。

さあ、気持ちを切り替えよう。

再び俺は手がかりを探すことにしたが、他にはなにも見つからなかった。

やはりどっちかに賭けるしかないか。

そう思った矢先、ズボンのポケットが光っているのに気がついた。

その光源は魔法石のついたネックレスだった。

「もしもし?」

俺は宝石を叩いて応答した。

『トウヤ!目覚めたのね。』

耳に(正確には脳からだろうか)伝わってきたのは春の風のように優しい声。

それを聞いたとき、なぜだか自然と笑みがこぼれた。

「ああ、おかげさまでな…ウィン。」

『よかったぁ~…』

俺の声を聞いて安堵したようにウィンは力の抜けた声を漏らした。

必ず起きると自分だけ分かっていたとしても相当心配だったのだろう…それが非常に嬉しかった。

「ところで俺が起きたのがよくわかったな。」

『ルヴィアから連絡が来たし、魔法石が動いたから分かったわ。』

「高性能だな、魔法石って。」

『そうなのよ。とっても便利よ。』

「へぇ…それで、今からそっちへ向かうのに俺にわざわざ連絡取ったのは?」

『そ、それは…ほら…えっと…』

「…なんだ、寂しかったのか。」

『ち、違うわよ!』

「それで早く声が聞きたかったのか。」

『だから違うわよ!誤解よ誤解!』

「…本当に?心からそう言いきれるのか?」

『うっ…。………ちょ、ちょっとだけ誤解じゃ、ない…』

「まったく、姫様は素直じゃないなぁ~」

『う、ううううるさいわよ!それに姫様っていわないで!』

「わかりました姫様。姫様が姫様って言われたくないなら俺は姫様のことを姫様って呼ぶのをやめ…ませんよ姫様?」

「姫様姫様っていいすぎよ!それに結局呼ぶの止めてないじゃない!」

ああ、この感じなんか久しぶりだな…なんかすげぇ楽しい。

あっちは魔法石ごしに顔を真っ赤にしてると思うけど、その姿を想像するだけで顔がにやけてしまう。

『う~…トウヤにだけは「姫様」じゃなくてウィンってちゃんと名前で呼ばれたいのよ…だめ?』

「ぐはぁ!」

おれ は つうこんのいちげきを くらった!

そ、その言葉は反則だろ…思わず心臓がはねあがったじゃないか。

おそらく狙って発した言葉ではないだろう。

しかし、なんつう最終兵器リーサルウエポンを持っていやがるんだこいつは…

「わ、わかったこれからはちゃんとウィンって呼ぶから!」

『わかればいいのよ。』

ウィンは勝ち誇ったように、元気のいい相槌を打った。

一方の俺は、まだ心臓が高鳴って落ち着いていない。

なんか完膚なきまでに負けた気がする。

今後ウィンをからかうのはほどほどに……できないな。

どうやら俺にとってウィンとのやり取りは欠かせないものになっているらしい。

「ところでウィン。ちょっと教えてほしいんだけど…」

『なにかしら?』

「ルヴィアから部屋から出て一番奥の部屋に行くようにって言われたんだけど、右と左どっちなんだ?」

『わかったわ、ちょっとまってね…。今トウヤがいるところからなら…まっすぐよ』

「…はっ?」

ウィンの言葉の意味がまったくわからない。まっすぐは庭園があって、その先には壁しかない…俺の聞き間違いか?

「…ごめん、聞き取れなかった。もう一回教えて。」

『だから、まっすぐよ。というかそこからわたしの部屋まで、まっすぐしか進めないわよ?』

「いやいやいや。そんな馬鹿な!」

ありえないだろ!左右には立派な回廊があるのに、道がないっておかしいだろ!

もしかして、俺嵌められてる?実はからかったのまだ怒ってる?

『…大丈夫?ひょっとしてまだ朦朧としてる?』

心配そうな声が響く…その言葉はうそを言っているようには聞こえない。

もしかして本当に頭おかしくなったか?

「いや、ちょっ、はい?…だって目の前庭園だし、左右は回廊あるし…ええっ?」

俺は再び混乱しているらしく目の前の状況が上手く言葉に出来なかった。

『もしかして防衛魔技が発動したままなのかしら…』

「防衛魔技…?」

そのフレーズを聞いて、俺の頭の中にあった混乱が消えた。

「謎はすべて解けた!」

俺はどこかの高校生探偵が言っていた言葉を真似ると、ゆっくりと歩き出した。

歩いた先は…庭園、文字通りまっすぐである。

そして柵を飛び越え、芝生へと降り立ったときにその予想は確信に変わった。

俺はそのまま足を止めずに中央の噴水へと向かう。

普通なら水を浴びてしまうとよけるだろうが、そんなことは関係ない。

避けもせずそのまま噴水へと突っ込んだ。

「……そういうことか。」

噴水へ足を踏み入れた俺は濡れていない。

それどころか俺の視界の先には庭園などは無い。

見えるのは、先程と同じ回廊がまっすぐ伸びていて、その先には白い扉がひとつ。

振り返ると先程まで見えていた庭園と左右に広がる回廊が見えた。

『やっぱりトウヤってすごいわね。防衛魔技っていっただけで突破しちゃうなんて。』

俺が状況を確認しているとウィンが心なしか嬉しそうな声をあげた。

どうやら俺が突破したのが分かったらしい。

「ああ。以前にも似たような魔技レソナ見ていたしな。」

似たような魔技レソナとは、この街に入る際に見た城壁のことである。

あのときも普通に見ただけでは分からなかった。

今回も視覚は完全にだまされていたし、真似はしたが半信半疑ではあった。

なので柵は念のため飛び越えることにしたのだ。

しかし、芝生に降り立ったときに草の匂いを感じられなかったことで確信したのだ。

それにしても魔技レソナはすごいな。芝生に降りたときの触感まで本物と一緒だったし、もしかしたら回廊も歩けたかもしれないな。

『でも、なんで発動しちゃったのかしら?ちゃんと止めたはずなのに…』

「そうなのか?俺が出たときからこんな感じだったぞ。」

『う~ん…ならさっき魔技レソナの光が強く放ったときに発動したみたいね。結構高度な魔技レソナなのよ?この防衛魔技は。』

そんなタイミングで強く光るのか…って!よく考えたら犯人一人しかいねぇじゃねぇか!

「ルヴィアの仕業かよ!」

俺は思わず叫んだ。叫ばずにはいられなかったのだ。

『え、ルヴィアなの?たしかに出来ると思うけど…トウヤなにかしたの?』

「イヤ、ナニモシテナイデスヨ?」

いけない。思い当たることがあって思わず返事がカタコトになってしまった。

それにしても…反撃がちょっとエグくないですかルヴィアさん。

下手したら無限に壁に向かって(回廊を)歩いてましたよ?

幸いにもウィンは気づかなかったらしく「そう、解除したの忘れちゃったのかな?」とつぶやいているのが聞こえた。

よかった、説明しなくて済んだ…さすがにあれを説明するのはちょっと恥ずかしい。

『まあいいわ。さあ、中に入って。』

「あ、ああ。」

とりあえずそのことは後回しにして、今はウィンの待つ部屋へと移動しよう。

俺は心なしか足を速めて扉へ近づき、ゆっくりと両手でドアを開けた。


いつも読んでいただきありがとうございます。

話が進まなくて申し訳ございません(汗)

気が付いたらかなりページがいっていたので…

次回は5/18 21:00に投稿予定です。

宜しくお願い致します

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