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ホリデイ2 day0.5


「どっちにしろ判断材料が足りないな。何かほかに変化はないのか?…そうだ!」

 

 ツパイは立ち上がり見慣れた部屋を歩く。武器庫にたどり着くと、アイテムボックスから痛み止めポーションを取り出して飲み、雑多になっている武器庫の中から

  刃の小さいナイフを取り、自分の腕に突き刺した。加減がわからなかっため血管が深く傷ついたのだろうか、大量の血が腕を伝い床に垂れるが今は気にしている場合ではない。


(よし。痛みもないし風呂の効果を確かめに行こう。効果があるならここは地球じゃない)

 

 ゲームの風呂は程度の差こそあれ、体力や混乱や魅了などの状態以上を回復させる効果を持っている。

  周囲に敵対するプレイヤーやNPCがいると使用できないなどの制限があるが、それもホームの中なら

問題ない。


(しまった。風呂までずいぶんと距離がある…部屋が血まみれだ…面倒だな)

 

 ツパイや他のギルドメンバーの部屋は異常なほど広い。

  これはメンバーが少ないことや他のギルドに好んで作られる謁見の間や会議室が無く、通路や仕事場以外のスペースを自由に使うことができるためだ。

  メンバーの部屋は全てそのままの形で残してあるとは言え、それでも1人1辺300mの立方体は広すぎる。


「魔法を使ういい機会だ。『第5階級魔法 転移(ワープ)』」

 

  足元が光、瞬時に風景が変化する。


「成功…か」

  

  成功したことは良いのだが、これでこの世界が地球でないことへの確信が強まった。


(しかしこれでよかったのかもしれない。こっちの世界のほうが面白いし、能力もゲームのまま。やりたいことが何でもできる!)

 

  地球にいた時の彼はNext Earth以外に趣味がなかった。飯を食べ、仕事へ出かけ、帰ったらVR。彼の生活はNext Earthに依存していたと言っても過言ではない。

  仕事は自分がいなくても支障はない。家族からも勘当されている。Next Earth(これ)しかないのだ。これしか。


(この世界に入り込めたなら望んでいたことじゃないか。今更何を恐れる必要がある)

 

  そう改めて決意し扉を開けた。










  閑静な廊下にノックの音が響く。死の眷属と名乗る殺人狂達。彼らが毎日のように騒ぎ、暴れ、怒声が飛んでいた頃の面影は無い。とても静かな廊下だ。


「ツパイ様遅くなって申し訳ありません。お飲み物をお持ちしました。…うーん、お返事がないなぁ」


「何処かへお出かけになられているのでは?偉大な死の眷属の方々がお隠れになった後、お1人でおられることが多かったじゃない」


「ん…それならいいけど。体の異変でお応え出来ないのかも」

  エリザとオルフィアの表情が変わる。


「ちょっ、オルガ。何言ってるの!不敬だよ!」


「…事実かも」


「でもそれならばつじつまが合うわよエリザ。無礼なことだけど…扉を開けてみましょう。エリザ、ドアを開けて。私とオルガはいざという時のために準備を整えるわ。オルガもいい?」


「なんで私が開けることになってるの!言い出したあなたがやりなさいよ!」


「ん…了解」


「了解すんな!」


「ほら、早くして。手遅れになったら大変よ」

  エリザは数秒迷い――開けることにした。


「うぅー。失礼しますツパイ様。お飲み物を……何…これ?ツパイ様!ご無事ですか!?」


「何を騒いでいるの。偉大なる死の眷属の御一人であらせられるツパイ様のお部屋で…これは一体?」


「…大変」


「大変じゃないでしょ!こんなに血が…ツパイ様が死んじゃう!誰?誰がやったの!?」


「エリザ落ち着い――」

  オルフィアは声をかけようとして思いとどまる。エリザから溢れ出す圧倒的な怒気に威圧され、声が出せなくなったのだ。それはオルガも同じ。

  恐怖。今オルフィアとオルガが感じているものだ。

  

  ラビリントスに配置されているNPCの内、レベルを割り振って作ったNPCはメイドの10人だけだ。

  ブラッディホリデイで割り振ることのできるレベルは780。

  ただの城とは違い、ラビリントスは神話をモチーフにした大迷宮。本来はもっと割り振れるレベルは多かったのだが、

  運営からの『初心者へのPK禁止命令』の無視や、イベントの妨害などを繰り返した結果、その行為の代償として割り振り可能レベルを減らされたのだ。

  メイドは隊長と例外の1人を除いて全員70レベルで作成され(勿論、戦闘スタイルや覚えている魔法の種類は異なるが)たが、

  メイド隊隊長のエリザはレベルが120となっている。

  一般のプレイヤーやNPCのレベル上限は100だが、それを超えている者もいる。Next Earthでは3人ほど。だがNPCで超えているものはエリザのみだ。

  その3人に共通するものは何か?それは種族だ。ある一定の条件を満たした者にのみ与えられるが、1人でもそれになるとそのチャンスは永遠に失われてしまうという『レア』

  その1人、エリザの種族は『エンシェントヒューマン』。

  ツパイが当時『ハイヒューマン』だったエリザを連れて『七大罪の巡礼』というクエスト(依頼)を受けた。

  クエスト『神竜の祠』をクリアしたプレイヤーに『レア』が発見されてから、プレイヤーは我先にと条件を探し、それに挑んだ。

  挑んだクエストはクリアされた『神竜の祠』を入れて『三関』と呼ばれた2つのクエスト『精霊領域アリア』と『七大罪の巡礼』である。

  結果はエリザが『エンシェントヒューマン』になっていることからわかるだろう。


  そしてその自分とは桁の違う力の波動を受けている2人が何もできないのも無理はない。

  素の能力でさえ大きな隔たりがあるのに、今のエリザは『固有技能(ユニークスキル) 大罪 憤怒(ラース)』を発動している。

  ここまで強化されたエリザを止めるのは他の『レア』か死の眷属だけだ。


「早くツパイ様を見つけなくては…オルガっ、エリザを見張っておいて!ツパイ様を探しに行くわ」


「………え…」

  

特殊技能や魔法、種族などの設定説明はまた後日。

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