長期休暇開始
「ぅぅ、何があった?」
「ツパイ様!具合はもうよろしいのですか?」
(この声は気を失う前に聞いた声だな。いったい誰だ?っまさか運営か?サーバーダウン直前だってのにバグパーツ所持でアカウント停止にしようと…なんて職務熱心な奴等だ。
終了1秒前くらいだったぞ?少しくらい見逃せよ。
ん?待てよアカウント停止になったら次のVRが出来ん。どうするか…幸いにしてこいつはアナウンスを使わずに直接警告しに来やがった。新人だな。アバターに『様』を付けるなんて社長様、部長様って言ってるようなもんだぞ。
それにゲームの中なら負ける気はしねぇ。こいつを殺してログアウトしよう。うん、そうしよう。だったら久しぶりに『絶影』様の本気を見せてやるか…って武器が無え!……丸腰だけど大丈夫かな?)
かなり不利な状態だがやるしかないと決めたツパイは、静かにその機を窺う。
「ツパイ様大丈夫ですか?私、心配したんですよぅ。いきなり頭を押さえて…本当に大丈夫ですか?」
(この野郎…『心配』なんて可愛いこと言ってると思ったら…こいつ、読めたぞ。痛みをあまり感じないはずのVRで俺が激痛を訴えたから機嫌とろうとしてるな?)
確かに痛みは大きい問題だ。もしかするとVRMMOが廃止になるくらいの。いくらバグパーツをつかったとはいえ痛みを感じるなんて製品は必ず社会問題になる。
今でさえPKされた奴が現実でも痛みがするとかで話題になってるのにゲームでも痛みを感じ始めたらだれもやる奴がいなくなるぞ。アクションとかRPGとか。
ゲームで腕を食い千切られた痛みを感じるなんて誰もやりたがらないだろう。ゲームはゲームだからいいんだ。それ以外のことは関知しなくて済むから。
(だからあっちは下手に出てる。俺と交渉しようとしてるんだ。だが相手の土俵で戦うのは馬鹿のすること…俺は俺の土俵で戦う!そろそろやるか)
「ツパイ様、先刻からずっとお返事がいただけないのですが…本当に――」
(手を伸ばしてきた。今だ!)
「死ねっ!」