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行動開始

  

  6階層から上がってきた報告書を一通り読み終えた俺は、戦闘系メイド(戦闘スキルを重点的にとったメイド)の居住区にいる3人ともう2人を加えてこれからの活動について話し合うために会議を行った。


「まずは急な召集にも関わらず集まってくれてたことに感謝する」


  勿論悪いなんてこれっぽっちも思っていない。NPCなんだからプレイヤーの言うことを聞くのは当然だろと思っている。


「私たちはツパイ様の奴隷ですから。謝罪など必要ありません」


  エリザの言葉に全員が頷く。


「そうか。まあ手元の資料を見ろ。メルリアが訊きだした情報を司書長が纏めたものだ。この世界の住人の強さはそれほどでもないらしい」


「ただのミノタウロスが冒険者の中でも3パーセントしかいないAランク級モンスターだってんだから驚きだねぇ」


  今の発言は戦士長によるものだ。


  マチルダ・スィン。メイド兼戦士長に任命されており、メイドの中では頭1つ分抜けたレベルを持っていて、ツパイと同じ100レベルの持ち主だ。

大柄で筋肉質な女で身長は2メートルを優に超えるだろう。髪の色は黒で、羽根飾りでまとめて後ろに流している。その褐色色の肌と相まって原住民のような風貌だ。

ツパイと同じレベルだが、一対一の戦いに特化しているツパイと異なり彼女の強さは群の強さだ。

  

  Next Earthにあった統率システム。プレイヤーのレベルや職業に影響されるが、NPCを連れて歩くことができるというものだ。パーティ扱いになるためNPCが1人はいるごとにプレイヤー枠は減っていくという微妙なものだが。

しかしパーティは最大4人に対して統率はそれをはるかに超える。ソロで活動する後衛職が壁として連れて歩くのが一般的な使い方だ。

連れていけるNPCは別にレベルの割り振りで作成したものでなくてもいい。ギルドホームで沸くNPCを連れてもいいということになっている。弱いので誰もやらないが。

統率補正のない職業で100レベルにすると最大でも5体までのNPCしか連れて歩けないが、統率補正の大きい職業――指揮官(コマンダー)系の職業を特化して取得してきた

彼女の最大統率数は1000体だ。NPCにNPCを率いさせても意味無いじゃんと思うかもしれないが、Next Earthではギルド抗争の際にNPCを軍団で送ることができるので何ら問題はない。


  指揮官系職業のもう1つの利点は率いているNPCを強化できるというものがある。これをマチルダに当てはめると、35レベルのミノタウロスが40レベルにまで強化されるのだ。……100レベルプレイヤーにとってはただの紙か2枚重ねの紙かの違いでしかないが。


  これにマチルダの種族『ミノタウロス・キング』の『種族特性(アビリティ)同族強化』を発動すればミノタウロスはレベル45相当の力になる。


  この職業と種族を生かした戦いができたからこそラビリントスは落ちなかったのだ。ミノタウロスしか沸かないという点にも助けられて。


  戦士長の発言を受けて他のメイドたちも仄かに笑みを漏らす。


「今話し合うべきことはこれからの我々の方針だ。何か意見を述べよ」


「我々がどこかの国へ攻め入り支配するというのはいかがでしょうか?ミノタウロスを300体ほど送れば制圧は容易でしょう。ですよねマチルダ」


「たぶん大丈夫ってか余裕だろ。何体かリーダーとかウォーリアを入れれば半分でも落とせると思うぜ」


「いかがでしょうかツパイ様。もしこの案が受け入れられましたならこのオルフィアが軍を率いて攻め入りましょう」


「それは却下だオルフィア。我々だけがここに転移したのならばそれでもいいが、他のプレイヤーやギルドも転移していたとしたら厄介極まりない」


「プレイヤー……偉大なる死の眷属の方々と同格の力を持ちかつてラビリントスに攻め込んできた愚か者の雑魚たちですね…」


  エリザから見れば100レベルプレイヤーなんか雑魚の集まりだろう。だが俺やエリザ以外のNPCから見ればまさに悪夢だ。実際メイドたちもエリザから目を逸らして俺を見つめてきている。

不安なのだろう。また奴らが攻めてくることが。そしてそれは俺も同じだ。誰だって自分が死ぬかもしれないという選択肢は避けたいものだ。


「エリザ、プレイヤーを侮ることはやめろ。あの戦いでは何とか撃退することは出来たものの、こちらの被害も決して小さいものではなかった」


  事実NPCのメイドにも死者が出ているのだ。すぐに復活させたが。


「申し訳ありません」


「まあいい。我々が表に出るのは危険が完全になくなってからだ。臆病と思うかもしれんがブラッディホリデイを守り抜くためにはそれが最善であろう」


「私はツパイ様に従うだけです」


「臆病などとんでもありません。完璧な策かと」


「ん…いいと思います」


「私も賛成だね。まずはじっくり腰を据えないと」


「ならば私が動きますか?」


  会議が始まってから一言も発言しなかった女が口を開いた。


  レティーシア・フラン・ムラウ。メイド兼暗殺者で深いフードを被っているため顔は見えないが美人なのだろうという見当はついている。髪の色も不明。

身長は160センチほど。鈴の音のように綺麗な声。命令すればフードを取ってくれるのだろうが…もし想像と違っていたらと思うと怖くて手が出せない。


  レベルは70だが一対一ならマチルダも倒せる腕利きで、諜報員として使っていたため斥候系の職を取っているので情報収集には最適な人材だろう。


「そうだな。とりあえず人間の国――アルガザイヤ王国だったか?そこに潜入し有用と思える情報を持ち帰れ。期限は無し。帰還は自由だ」


「かしこまりました」


  そう言って立ち上がる時も、歩く時も、扉を閉める時も音がしなかったのでツパイは苦笑してしまう。


(暗殺者とはこういうものか…村での一連の行動はまずかったな)


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