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足掛かり

 

話を聞くと、聞いたことも無い国の名前は出てきた。

 当初、ツパイはNext Earthの世界を基本に考えていた。Next Earthの能力が使えるのだからそれは当たり前の思考だ。

 だが、まるで聞いたことの無い地名、国名が彼を出迎えたのだ。

 先ほど教えてもらった周辺国家と地理に再び思い出す。

 

  まずアラムート皇国とアルガザイヤ王国。これは中央に森林を挟むことによって国境を分けている。この森林がエルト大森林。そして北方、南方ともに大森林の途切れるあたりに村や砦があるという。だが南ではモンスターの活動が活発化しており砦はどちらの国も破棄したようだ。、つまり今戦争は北の砦を奪い合う形で行われるのが基本だということだ。実際皇国と王国がこの数年何度か小競り合いを行っているらしい。

 実際、王国が砦の近くに陣地を形成しつつあるという。再び戦争が起こるのではないかという話だ。ちなみにこの村はアルガザイヤ王国の南の辺境だ。

 

 そして北の砦からさらに北方にもう1つ国家がある。

 ガルスト帝国。国家間の領土関係を簡単に説明すると丸で王国、皇国、帝国、モンスター活動地域を囲み、その中にXをいれる分かりやすいだろう。左がアラムート皇国、右がアルガザイヤ王国、上がガルスト帝国。それ以外にも小さい国々はあるらしいのだが、村長の知ってる限りはこんなものらしい。

 

  そして国力までは小さな村の村長では分からない。

  

 わかっているのは、皇国は亜人で構成された国家で、王が国内で1番強いものがなるということ。

 

  帝国は侵略国家で、この国が1番領土を持っており2国が戦争中に漁夫の利を取るのではないかということ。帝国は先代皇帝の時2国に攻め入ったが敗北したことに加え、今の皇帝が内政を重視しているやら弱気やら既に死んでいるなど噂はあるが、今は侵略戦争をしてこないということ。


  王国は軽い民主主義のような制度を取っていて、政治は王と土地を所有している貴族間で話し合い決定するらしい。昔は中央だけでなく辺境にも目を向けていたので3国の中で最も栄えていた国らしいが、今は見る影もない。大きな声では言えないが、国が衰退していったのは貴族の腐敗のためということだ。税を領民から多く絞り、中央に少なく送るということが横行。馬鹿な農民共は自分のためにいるという風潮が広がっているようだ。

なんでこの村はモンスターの活動区域に接しているのに対策が取られていないのかと尋ねたところ、暗い顔をされたのだが話を聞いてなるほどと思った。


  これ以上訊くこともないだろう。山賊から貨幣の価値については聞いているし、足りなければ無理やりにでも吐かせればいい。


「情報をありがとうございました。では私たちはそろそろお暇させていただきます」


「いえいえ、お礼などとんでもない。感謝するのは私のほうです。村を助けていただきありがとうございました」


  外に出ると、村人たちが一塊になって一点を凝視している。中には農具を構えようとしている男もいるが恐怖で力が入らないのか、構えているというより持っているだけになっている。


  何をそんなに怯えているのか。そう思い視線を向けるとミノタウロスがせっせと山賊の死体を荷車に乗せている最中だった。


(なんてシュールな光景なんだ…あの巨体で人間用の荷車を使うなんて…。っていうかあいつ荷車を担ぎ上げたぞ?引いて行けよ!なんで荷車使ってんだあいつらは?そして村の物を勝手に使うな!)


「村長!?あれは一体…?ミノタウロスが群れで行動しているなんて信じられません…。あとこちらを襲ってこないのですがどうしましょうか?女子供は逃がしますか?」


「心配はいらぬ。あれはツパイ様がお呼びになられたミノタウロスじゃ。こちらに危害を加えることはあるまい…そうですなツパイ様?」


(村長も随分逞しくなった…というより怖がらなくなってくれたな。ありがたい。これで普通の口調で話しかけても問題ないだろう)


「ええ、大丈夫ですよ。あれらは私の支配下にあります。ご安心を」


  ミノタウロスに運搬方法を指示していたオルフィアがこちらに気づき走ってくる。


「ツパイ様、ご命令通りミノタウロスを呼んで参りました。…来なさい。あなたの口から説明して」


  オルフィアの声を聞き巨体なミノタウロスの中から一際巨大なミノタウロスが出てきた。こいつがミノタウロス・リーダーなのだろう。

ただのミノタウロスはハンドアックス(ミノタウロスにとってのハンドアックスで人間でいえば両手斧)を持ち、鎧は己の筋肉という出で立ちだが、

リーダーはその身を鎧で固めている。ちなみに武器は一緒。


「ツパイ様ニオカレマシテハ――ゴ機嫌麗シク――」


「世辞はいい。で、どうなってる?」


「ハッ、死体ノ積ミ込ミ作業ハ終了シ後ハ運搬作業ノミトナッテイマス」


「お前たちは何名で来た?運搬には何名必要だ?」


「私ヲ含メテ11名デス。運搬ニ必要ナ数ハ……6名デス」


「わかった。なら6名にはすぐに仕事をさせろ。お前を含めた5名は村長の指示のもと村の復興支援に当たれ」


「了解シマシタ。復唱シマス。6名ハ運搬ノ作業ニ当タラセ、私ヲ含メタ5名ハ村長指示ノモト村ノ復興ニ当タル。ヨロシイデショウカ」


「すぐに行動を開始せよ」


「ハッ」


「お待ちくださいツパイ様。ミノタウロスは皆が怖がっておりますので…お気持ちだけ受け取らせていただきたいと思うのですが」


「大丈夫ですよ。さっきも言った通りミノタウロスは私の支配下にありますので、私の命令には逆らいません。そうだろ?」


「ハッ、偉大ナル死ノ眷属様ノ名ニ泥ヲ塗ルヨウナ真似ハ一切イタシマセン」


「ほら。それにこいつらは力もあるし、またさっきの残党が来ても追い返せるはずです。いい人材だと思うのですが」


(ブラッディホリデイの名は汚れきってるからなぁ。ほかのプレイヤーに気づかれたら攻撃対象だろう。すぐに。だからこそこの村とはいい関係になる必要がある。

村を助けているということがわかれば「ゲームの中ではっちゃけたんだろうな」と思ってくれるかもしれん)


「……わかりました。彼らの力を復興のためにお借りします」


「村長!正気ですか?あのミノタウロスですよ!凶暴なモンスター。Aランククラスだというのに…」


「煩い!黙っておれ。あのリーダーと呼ばれるものがいる限り問題はあるまい。我々の言うことを理解し、礼儀も持っておる。それに今の村の人手では復興にどれほどの月日が必要かわかっておるのか!」


「…わかりました」


「では私は帰らせていただくとしましょう。オルフィア、帰るぞ」


「かしこまりました」


  この世界のことを多少なりとも理解したツパイの足取りは、来る時と大きく異なり軽いものとなっていた。

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