初陣
「てめぇ、ただで帰れると思うなよ…ぶっ殺す!」
「自分で撒いた種だろうに、何を起こってるんだか」
(俺の能力を試すのにいい機会だ。こいつは他の雑魚共とは違ってそこそこにできそうだ。いろいろな魔法や特殊技能を試してみようか)
「元冒険者ランクBランクのこのバルパス・グライバ様と本気でやる気かよ?まぁ逃げても殺すけどな!弟共の無念は俺が晴らす」
「能書きはいいからさっさとかかって来い。時間をあんまり無駄にしたくはねぇんだ」
額に青筋を立て彼――バルパスが背中にかけてあった両手斧を手に取り向かってくるが――遅い。
(Bランクって言っても大したことがないってことかな。でもZが1番上のランクって線もあるんだよなぁ。もしそうならBランクなんて駆け出しもいいとこだ。
でもそうするとなんであいつがわざわざ初心者であるBランクを名乗ったのか疑問が残る…俺が強すぎるって線もあるけど過信はしないほうがいいな。
とりあえずさっさと終わらせよう)
ようやく――ツパイがそう感じただけで実際は数秒。周りを見ると奴の手下共や村人たちがそのあまりの速さに目を奪われていた。そのわずかな時間でバルパスはツパイとの距離を詰めそして
一閃。バルパスにとって最も自信のある攻撃、討伐に来た衛兵や騎士団を幾度となく倒してきたその攻撃をまともに受けて生きていられる奴などいない。
いや、いることにはいるだろう。冒険者ランクSランク『英雄』とされる人にありながら人外の力を誇る化け物たちやAランクの上位に立っている近接職。彼らなら平然としているだろう。
1部のAランクでも耐えることができる者もいる。そいつらは皆顔と名前が売れている者ばかり、こんな辺鄙な村にいるはずはない。そう考えたからこそ一撃必殺であるこの攻撃を選んだのだ。
自身の全体重と遠心力を生かして殺傷力を高めた右薙ぎという技を。
(口調だけは一丁前だが俺の動きに目がついていけてねぇ!棒立ちだし戦闘に慣れてるわけでもねぇんだろう。大方美人のメイドに格好いいところでも見せたかったんだろうが
相手を間違えたな。っ死ね!!)
殺った。
バルパスは確信し、――思わず瞠目した。
攻撃がが空をきった。それならばまだ我慢できただろう。自らの渾身の一撃が避けられる。大振りなこの攻撃は同ランクやそれ以上の敵には躱されることも多々ある。それは面倒なことだが強敵が現れたのだと納得がいっただろう。
だが――ツパイは掴んだのだ。
――その一撃を。様々なモンスターを武器の切れ味ではなく力で両断してきた、オーガの渾身の一撃にも匹敵するバルパスの攻撃を。
「…ば、ばかな」
消えゆくような声で喘いだ。。
バルパスはガクガクと震えそうな体を懸命に堪える。今目にしたものが信じられない。
攻撃を真正面から受け止める。しかも微動だにせず。受け止めるということは当然だがその攻撃にかかった力よりもさらに大きな力で止めたということ。
つまりオーガの渾身の一撃にも匹敵するこの攻撃を止めたということはオーガ以上の力――腕力を持っているということになる。
「化け物――」
「俺は化け物なんかじゃないさ。お前が弱すぎるんだよ」
バルパスの頭がカッと熱を持つ。どこまで馬鹿にするのだと。その反面Bランクの冒険者を馬鹿にすることすら容易だということなのかと、恐怖が背筋を滲み上がる。
――逃げるか。
バルパスは生き残るということを重要視する。勝てないなら逃げて再び戦えばよい。生き残り、最後に勝てばよいのだ。死ぬということは復讐の機会を永遠に失うということ。それは絶対に避けたい。
だが、逃げるにしても肉体能力の差は如何ともしがたい。体長2~3m前後のオーガ。彼らは人間と同じ2足歩行のモンスターで走る速度は人間よりも早い。
当たり前だ身長1.8mほどの人間と3mのオーガでは歩幅が違う。体格が違うということはそれだけで大きいほうに有利なのだ。
あの餓鬼の力はオーガよりも強い。ということは人間よりはるかに重いオーガを支える脚の筋肉よりもさらに強靭な筋力があの足に詰まっているということ。
上半身だけ鍛えているなんて自分に有利な仮説は持たない。そんなことで判断を誤って死ぬなんて御免こうむりたい。だから冷静に考える。
出した結論は足を切りつけ動きを鈍らす。そして逃げればよい。
「次はこちらから行かせてもらおう」




