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キライな人  作者: 太陽
終幕
40/43

「墓場」



ジュリエットが手にした短剣が、ロミオの胸を突き刺した。

ロミオは目を見開き、手を伸ばした。

力なく、震えた手は宙をかき、ロミオは「うっ」と呻いてその場にくずれ落ちた。

ジュリエットはその様子を信じられない思いで見つめていた。


「ロミオ……」


ささやくような声に答える者はもういない。


「ロミオ……」


もう一度呼んでみたけれど、結果は同じだった。

事切れている……。


「……ジュリエット!」


彼女を呼ぶロレンス神父の声が遠くから聞こえてきた。

でも、ジュリエットの耳には入らなかった。

ジュリエットはもう動かないロミオの身体をじっと見つめた。


「ロミオ……」


ジュリエットはそっと膝をついて、右手に短剣を持ったまま左手でそっと彼の頬に触った。

まだほんのり暖かさが残っている……。


「……こんな出会い方をしていなかったら、わたしたち憎み合わずにすんだのかしら?」


静かに語りかけるジュリエット。

でも、もうそれに答える声はない。

睨み付ける瞳もない。

拒絶する身体も……もうどこにもない。


ジュリエットの頬を涙が一滴流れ落ちた。


「ああ……ロミオ」


ジュリエットの手にした短剣が滑り落ち、地面にぶつかってカツンという音をたてた。

ジュリエットはロミオの手を両手でそっと持ち上げ、自分の頬にあてた。


「ああ、ロミオ。どうしてあなたは……ロミオなの?」








そのまま舞台はゆっくりと暗転していく。

最後のスポットライトが消えた時、体育館は嵐のような拍手でどよめいた。



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