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ACT:06  称号授与者は伊達じゃないよ、スズキタロウ!

評価ありがとうございます。

そのお礼とは言わないですけれど、今日二話目の投稿。


ぜひご覧あれ。

 さらば~ 地球よ~ 旅立つ~ おれは~ 宇宙~ 群体~ ス~ズ~キ~

 宇宙の都市の 月面都市へ 期待を胸に いま~降り~立~つ~

 必~ず 評価を~ うなぎ~のぼ~り~

 悲しい~ 過~去に~ 決別~ す~べく~

 地球を離れ 月面都市へ は~るば~る 来~たよ 宇宙群体 ス~ズ~キ~


 *合いの手(二番っ!)


 さらば~ 地球よ~ なじんだ~ 通称~ 宇宙~ 群体~ ス~ズ~キ~

 通称捨てる 願いを持って 戦うスズキ 燃え~る 我~欲

 誰もが~ 名前で~ 呼んで~ くれない~

 認識~ さ~れぬ~ おれ達~ だ~から~

 通称捨てる 一歩を踏むよ 宿願 果~たせ 宇宙群体 ス~ズ~キ~


 ……スズキタロウテーマソング。皆カラオケで歌ってくれな?

 冗談もさておき、おれ達も月面都市月読へと来たわけだけど、羽場下はどこにいるのかな?

 月読は木造建築が目立つ土地だ。キャンプ場で見るログハウスのような作りの建物が多く、高い建造物は特にない。すぐ傍に月読樹海という未開拓地域がある。ここは全惑星の中でも開拓、調査、採集の難易度がかなり高いことで知られている。

 だから月読にはベテランのプレイヤーが集まるし、彼らを対象として充実した市場が展開される。

 そんな風に三人で惑星開拓サポートセンター月読支部の建物の前で暇を持て余していた。

 その時重要なことに気が付いた、と言わんばかりの表情でキタちゃんが言う。

「羽場下って俺達のアバターがどんなのか、知ってんの……?」

「……」

「……」

 沈黙。


●×●×●×●×


 月読まで来たのはいいけれど、鈴木君たちのアバターの特徴を聞いておくのを忘れてしまった。

 私は惑星開拓サポートセンター月読支部へと小走りで向かっているところだ。

 とりあえずあそこに行けばプレイヤーの登録情報を調べてもらい、連絡を取ることも出来るだろう。

 ……周りの視線が鬱陶しい。弥生が言うには私は男性受けする外見なんだそうだ。いままで恋愛というものに興味がなかったせいでそんなこともわからない私だけれど、高校生になって少しづつ理解できてきた。

 男子がバレてないと思っている女子の人気投票の結果からも読み取れるのだが、うれしいというよりはやめてほしいと思う。陰でこそこそやるくらいならまっすぐに告白してくるなりしてくれた方が好感が持てそうだからだ。

 私のアバターは人型であるため、実際の外見とほとんど変わらない。そのため学校と同じように男性の視線が集まってしまう。

 人外型アバターにするべきだったかなぁ……。

 そんなことを思っていると目的地が見えてきた。鈴木君たちを待たせてしまっているだろうか?

 そこで建物の前に三体の人外型アバターが輪を作って何かを話していた。スライムとゴブリン、天狗だ。でもデフォルメされていて怖くない。いや正直に言うと、とてもカワイイと思ってしまった。

 三体とも背丈は一二〇センチほどしかない。本来の身長などに縛られないのは人外型アバターの特徴だ。でもあのデフォルメされたアバターどこかで見たような気がする……。

「あっ……!」

 朝のニュースで言っていた新しく魔王認定されたプレイヤーだ!

 なんでこんなところにいるんだろう? せっかくだから一緒に写真でも撮ってもらおうか、などと考えながら足を止めずにいたため彼らに残り三メートルくらいにまで近づいた。

「いや、一回学校に戻ればいいんじゃね?」

「学校じゃアバターの情報はわからんだろ」

「だからクエストカードの連絡先をだな……」

「教えてもらえねぇよ!」

「じゃあどうすんだよ? 羽場下が見つからなかったら行動できねぇし、もしなんかあったりしてもわからんままじゃ対処のしようがないだろ」

 ……。鈴木君?


 ●×●×●×●×


 う~ん。羽場下を見つけ出す方法を皆で考えているのだがおれ達の頭脳じゃ全く打開策が出てきそうになかった。これはおれ達だけで課題をクリアしておいて、羽場下にはあとで成果を分けるしかないか? と思い始めていたころ俺の身体が誰かにひょいと持ち上げられた。

 なんだ、なんだ? 顔を後ろへと向けると超至近距離で羽場下の整った顔が。

 ギャー!! おれの心臓が破裂する! あ、アバターだから心臓はねぇか……じゃなくて!

「は、羽場下……?」

「ごめん、待った?」

「い、いや……」

 待ってはないんですが、ちょっと羽場下さん? 降ろしてもらえません? ローとキタちゃんがフリーズしてるしおれもフリーズしそうなんですが……。

「鈴木君たちのアバターかわいいね」

 かわいいね………………かわいいね…………かわいいね……キミカワウィーネェ―。おれの脳裏にエコーが響く。最後のは違うな。

「う~ん私はこの中だとスライムが一番かわいいかなぁ……さわり心地も気持ちいいね」

 神様。どうやらおれは今日で全ての運を使い果たしたのではないでしょうか?

 しかし優越感に浸ることも忘れない。

 以下アイコンタクト。

『くくく、どうだ? 羨ましかろう? ロー、キタちゃん』

『タロー! 貴様抜け駆けを!』

『落ち着けロー。羽場下がおれ達のアバターをかわいいと思うなら、上代と南野も同様に思うのではないか?』

『!! タ、タロー大明神……』

 誰だ。

『いまおれは確かに輝いている! おれにできるということは、お前たちにもできるということだ! 違うか!?』

『流石でございます。伊達に我らを率いてはおりますまい。そのお言葉、この喜太郎の胸にしかと刻み付けまする』

 もはやキャラがぶれまくりである。

 おれにとってのハッピーイベント、ローとキタちゃんにとっては未来への期待が膨らんだ一幕であった。


 ●×●×●×●×


 そして皆でサポートセンターに来たわけだが。

「私今日の課題である〝ジャンプ・ザ・ホッパー〟と〝月虹の花〟について何も知らないんだけど、鈴木君たちは知ってるの?」

 おれを胸に抱きながらの発言である。もはや無意識に抱いているとみて間違いない。他の二人の視線が痛い。視線って物理的に痛いんだね……というか普通に奴らの武器でつつかれてたりする……。

「どっちもかなりの難易度だな。結構独特な動物と植物で道具の準備などをしておかないと見つけてもまず手にすることはできない。おいロー」

「おう。〝ジャンプ・ザ・ホッパー〟はとにかく跳んで飛んでトビまくるんだけど……動きを止めるためにかなり高性能な武器とかが必要になってくるんだ。オレの場合は飛んでいるのを落とすための〝空乱扇〟」

「で、俺の場合は奴がトンだときに必要になるであろう〝気絶棍〟」

「そして跳ねるのを阻止するために〝吸着床〟」

「最後のやつだけ人外型特有のインストールウエポンでしょ? 人型アバターじゃ捕まえられないってことなの?」

 インストールウエポンというのは人外型特有のアバター機能だ。そのアバターにプログラムをインストールすることによって、まさにゲームなどに出てくるモンスターのような身体機能などを身に付けることが出来る。

 ちなみに普通の装備などの備える効果も科学技術の発達により実現されたものだ。

「いやそんなことはない。とにかく跳ねることを阻止、飛んでいるならば落とす、トンだならばぶちかます、ということが出来る装備やインストールウエポンがあればいいんだ」

「ただ、なぁ……」

 おれの説明の後にローが言葉を濁す。もちろん羽場下がそれを疑問に思わないわけがなく、

「何かあるの?」

「本っ当に、かなり高性能じゃなければいけないんだ。俺達の準備するやつもポイントで三千万はするからね……」

 本当に最初、プレイヤーになりたての時はアバターの支払いはローン形式で買うのだが、そのローンは色々ポイントをためて返済していく。その最初のローンが百万ポイントである。

「さ、三千万~!?」

「こ、声が大きい」

「ご、ごめんなさい……でもそんな高価なものを所持してるなんて魔王認定されるくらいなんだから、当然なのかな……?」

「まぁ、結構知識とかもあるしなぁ、おれ達。任せてもらって大丈夫だと思うよ」

 なんだかんだで魔王認定は伊達じゃないことを羽場下にアピールできた。羽場下のなかでおれ達の評価は上がったんじゃないだろうか? 期待しておこう。

「おいタロー。〝月虹の花〟についてはどうすんだ?」

「あれも面倒だったよな……。キタちゃん〝空震鎚〟も持って来いよ」

「はいよ。ローも〝大吸気〟インストールしとけよ。タローはなんだっけアレ?」

「え~と〝ホイホイロープ〟だな」

「どれも聞いたことない……結構珍しかったりする?」

「もともとおれ達のように雑魚モンスター型のアバター使う人がいないからね。知らないのも無理はないと思う。よし準備は整えたし行こうぜ」

 センターを出てルナティックフォレストへと向かう。その間もおれはずっと羽場下の腕に抱かれたままだ。

 月読の二重ゲートをくぐると体が軽く感じる。月読の重力制御範囲を出たのだ。

 ここから目的地までは三〇分程度だ。ポーンポーンと身軽に跳ねながら目的地へと向かう。


●×●×●×●×


 ルナティックフォレストは森という割には結構開けた場所だ。

「きれい……」

 羽場下が呟くようにこの森の植物などは月光を浴びて幻想的に輝いている。

 さておれ達はターゲットを探すとしよう。まずはウサギだな。あいつはすぐに見つかるだろう。なぜなら……

「きゃ~!」

「ひ~、たすけてくれ~」

 ほらきた。多分同じく実習でここに来ているクラスメイトだろう。とりあえず「ヤツ」がすぐ近くにいることはわかった。

「……なに?」

「羽場下。声のした方に向かってくれ。〝ジャンプ・ザ・ホッパー〟がもう出てる」

 その言葉に驚いた彼女の腕に抱かれたまま移動する。どうでもいいがすごく暖かい。頭の後ろなど背中の柔らかさは……。

 しかし羽場下が急に止まりおれ達の視界に入った光景はそんな幸せな思考を中断せざるを得ないものだ。

「で、でか……」

 そう、羽場下が呟いた通り。

 〝ジャンプ・ザ・ホッパー〟というウサギは途轍もなくでかい。

 おれ達の目の前には五メートルほどの生き物がいた。

 ……もはやウサギという分類ではないんじゃないだろうか。とにかくここで逃すへまはできない。この課題にはおれ達「スズキタロウ」の評価が掛かっているからな!

 ヤツがおれ達の気配に気づき跳ね、そしてそのまま「飛んだ」。

「うっそぉ……。ほんとに飛んでる……」

「よいっしょ! ロー!」

 羽場下の腕から降りながらローへと促す。同時にインストールウエポンの発動。

「任せろ! ぬりゃあぁぁ!」

 ローが手に持つ、楓の葉の形をした扇を馬鹿でかいウサギに向かって振りかぶる。その瞬間、周りの空気が荒れ狂い、ターゲットを捕える。

『キ、キキィ!?』

 大気を蹴ることにより飛んでいた〝ジャンプ・ザ・ホッパー〟は足場を乱されたことにより地面へと落ちる。ものすごい振動が周りに響き渡り小さいおれ達三人はもちろん、羽場下でさえも宙に浮く。

「わわわっ!」

 普段の羽場下からは予想も出来ないほどかわいらしい反応でした。ごっつぁんです!!

 再び跳ねることにより宙へ行こうとするがいつの間にか地面に漂う粘液により足が捕られてそれは叶わない。

 おれの身体が周囲へと広がり展開した、フィールド効果型ウエポン。これが〝吸着床〟の効果である。

 ここまでくればあとは待つだけなのだが……これがどれくらいかかるかがわからない。

「……おわったの? 結構あっけなかったね」

「羽場下さん……? おれ達しか働いてないですからね?」

「あはは……」

 ぺろっと舌をだし苦笑する姿は普段の格好いい雰囲気とのギャップがすごい。はっきり言って超かわいいと思ってしまった。

 神様。こんな幸せでいいのでしょうか?

「キタちゃん! 来るぞ!」

 おう、ローの声で我に返ったぜ。今日は早かったな。キタちゃんが装備を右手に〝ジャンプ・ザ・ホッパー〟に近づいていく。

「何するの?」

「最初に説明した時に言っていたこと覚えている?」

「え? え~と飛んでしまうのを落とす、跳んでしまうのを防ぐ、トンでしまうのをぶちかます……トンでしまう……?」

 そこで眉を顰め首を傾げる。そう、何か不吉な言葉が残っているのだ。瞬間、

『グルル……ガァァァ!!』

 ――トンだな!

 このウサギ厄介なことに、追い詰められると正気が「トブ」のである。

 これが意識があるままに捕獲できない理由である。超凶暴。

「ふん!」

 そのウサギの目の前に立ったキタちゃんが手に持つ棍棒をぶちかます!

 周囲を照らす眩い閃光とともに、「バリバリバリ……!」という音が鳴り響く。

「で、電気? 死なないの?」

「はっきり言ってあのウサギ銃で撃っても死なない。生命力に満ち溢れてもいるという地球外生命体のなかでもかなり厄介な部類に入る」

 周囲の輝きが収まった後には、静かに横たわる巨大なウサギがおれ達の前に鎮座していた。

次回予告。

やっぱり君は君だよ、スズキタロウ!


この小説は1200%の悪ふざけと-1190%のシリアスと10%のやさしさでできてます。

……やさしさ?

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