ACT:30 本領発揮!? スズキタロウ! その二
ご無沙汰しております。駄犬です。
リハビリ程度で短め。
オレの目先で青と白が翻る。
方卓騎士団のトップ4、青騎士と白騎士がアバターの超人的膂力を十全に活かした突撃。青騎士は両手剣を、白騎士は大槌を大きく振りかぶっている。身に纏う金属鎧と相まって重量感を感じさせる二人の大男の突撃はさすがに圧迫感が違う。
「……おおぅ。ビリビリすんねぇ」
「まずは!」
「一匹!」
『地面のシミにしてくれるわ、長っ鼻!』
頭上から振り降ろされる大槌と、右下段から振り上げられる大剣。
対し、オレは――――。
●×●×●×●×
人は、寒気以外にも鳥肌を立てるのだと初めて知った。
「すごい……」
『当たらない! 当たらない!! 当たらなぁぁい!! 唸る大剣、吠える大槌の嵐の中を華麗に舞うは一人の魔王!
誰が知ってる!? いや、この会場のほとんどが知らなかったその魔王が、いま!
その真価を発揮するかのように、無知を嘲笑うかのように舞う!』
レイレイの実況の表す通りだ。私の見つめるその先で、ロー君は体現している。
『知名度は、実力ではない! そうだ、わたし達は何を思っていたのでしょう?
惑星開拓に必要なのは何なのか?
人気?
外見?
違うっ……! 必要なのはただ実力だということを、わたしたちは、忘れてるッ!』
キノピオチックな小柄な天狗アバターを操る鈴北 楼という少年が〝魔王〟の称号の意味を体現しているんだ。
自分にあれほどの動きが出来るだろうかと自問してすぐに無理だと断じる。アバターの補助のレベルの動きを越えているからだ。
膂力、スピード、動体視力、反射神経、高速思考などアバターによるアシストは確かに膨大かつ強大だけれどただ一つ、生身と変わらないものがある。
それは、意志。
決断とも判断とも言えるそれは、どれだけ力が強くても、どれだけ早く動けても、どれだけ長く熟考できても、無駄に体は緊張し、はやる身体は空回って、多大な隙を生むだろう己の未来を切り開く、指標。
あの攻撃の中を無傷で潜り抜けるだけの指標たる意志を支える経験が、私には無い。
目立たないだとか、悪ふざけしたアバターだとか騒いでいたけど。
私はいまになってその凄さが初めてわかった。
惑星開拓と言う一大プロジェクトにおいて、命の危険はないアバターとはいえ五感リンクシステムにより感じる恐怖は本物。現に無残にアバターを地球外生命体に破壊されたプレイヤーの中には長期のリハビリ――カウセリングや精神病院への通院――が必要になる人も居る。
いわばアバターは己の心が具現化したものなのだ。惨い壊れ方をすれば精神も病むように。未開惑星という危険地帯において自分の心の憑代たるアバターに、遊びを加えられるという余裕のなんと頼もしいことだろう、と。
自分はそんなすごい、外見などでは太刀打ちできない魅力のある男の子に恋してる。
私は――南野 夏海はその感動に鳥肌が立ったんだ。
●×●×●×●×
うひょう!
久しぶりに使うとこの疾走感がたまらんな!
オレの〝転化護剣〟は第二世代兵装。第二世代のコンセプトは「支援」である。
最近使った形態で言えば、野太刀形態の大天堕は無差別に、脇差形態の呪受丸はカウンターとして相手に負担を強いる形で自分に利を生むためのもの。また見禍月は遠距離攻撃を可能とし、相手の行動範囲を限定することで逆に自分の動きの幅を広げるためのものだ。
そして、いまオレの手にする小太刀形態の小荷丸は自分に作用する形態だ。
効果は簡単。掛かる負荷が小さくなるのだ。
もともと超人的なアバターに意味があるのかって? 意味はあるとも!
アバターにも当然耐久度があるし、メンテナンスも必要だ。どれだけ技術がつぎ込まれようと振るう力も強大なれば損耗も早い。人の戦闘スタイルによって「十全」に多少の違いはあれど振るえる力に変化なく、掛かる負担が軽減するというのならそれは、
「――瞬間的な爆発力が違うってことだよ!」
「うおっ!?」
オレの小柄なアバターが下から掬い上げる小太刀が、青騎士の振り降ろす大剣を跳ね返す。質量と動作の不利を覆す原因はオレの負担を怖れない力の発露のみならず、相手の攻撃もまた軽くなっているのだ。
自分の激しい動きも負担なら、相手の苛烈な攻撃もまた負担。攻防一体の支援がオレの背中を後押しする。
「遅い!」
青騎士の動きが、オレの動きに追い付かなくなっていくのが分かる。オレを狙った攻撃が徐々にオレの動きを追う予測になって、遂には予測すら置き去りに残像を狙うものになる。
「軽い!」
白騎士が二人であるという利点を活かして、青騎士の攻撃を目測にオレを捉える。しかし大槌は避けていたものが、機動を逸らし始めるようになり、受けるように弾くようになり、遂には逆にこちらから打ち込んで跳ね返す。
「そんでもって、弱い!」
思い切り振り上げた身化月によって白騎士の大槌を上空に跳ね飛ばす。そのがら空きになった胴を加速した身体で間を置かずに蹴り飛ばした。
「ぐおぉぉぉ!?」
「わぁぁぁぁ!?」
青騎士を巻き込んで二人は勢いよく転がっていった。騒々しい金属音がその勢いと二人に与えたダメージを想像させる。そう軽くは無いだろう。
「オレ様、鼻高々。どうよ? これぞ魔王ッ!」
『な、な、な……なんと、無駄な機能! しかしこの酔狂さが魔王たる所以なのかぁ!』
立灯の実況の通り今のオレは通常よりも〝ムダに〟鼻が伸びている。アバターもそうだが文字通り天狗になっていると言えよう。
「ぬはははははははは! チョロイ! 噛ませ犬もいいところ! 貴様ら程度にはオレたちの残念機能を見せる暇がないくらい実力に隔たりがあることを思いしれ!」
●×●×●×●×
「せっかく、格好良かったのに……。でもロー君らしいかなぁ」
●×●×●×●×
「調子に、乗るなぁぁぁぁ! ガキィィィ!」
「お?」
怒髪天を衝く、とはこのことだろうか。兜ごしに物理的な圧力を伴うような視線がオレに突き刺さる。
イノシシを髣髴とさせる、勢いはあるが何の捻りも無い突撃をもって青騎士が迫る。
「その鼻っ面叩き折ってくれる!」
大上段から、青騎士がオレの長っ鼻に大剣を振り降ろし――その腕を振り抜いた。
一分ほどか。
実況も、観客席も静まり返り。
周りの赤騎士と黒騎士すらも絶句して。
当たり前という風に立っているのはタローとキタちゃん。沙知ちゃん、刀華とロロ。剣正、ライナス、弓奈にレイラ。
白騎士のように吹き飛ばされた衝撃で気絶――コネクトアウト――したほうがまだマシだったかもしれないと少しだけ同情するぜ、まったく。
眼前では剣を振り降ろした体勢で固まる青騎士。彼の身体はずっと震えていた。
剣を振り抜くことが出来たということは、軌道上に障害物がなくなったことを意味する。だけどそれがオレの鼻が切断されたと思うのは拙速。
青騎士の握る大剣は、半ばで折れている。
オレの鼻に叩き折られることで短くなった大剣が何にも邪魔されずに振り抜かれたのだ。
「自慢の鼻だ。簡単には折れねぇよ」
青騎士が膝をつく。お前もよくやった……あれだけの実力差を見せつけられながら、怒りに我を忘れたからとは言え、全力で真正面から立ち向かってきたのだ。
オレは人生の中でもベスト5には入るだろう決め顔で、青騎士を讃えようと――――
『アー〇ン!?』
え…………? あ! ち、ちが……っ! この場合、このセリフしか言えなくない!?
『パクリ、パクリ、パクリ、パクリ……!』
「おい立灯! パクリコールを煽るのはやめろ!」
格好よく決めようと思ったのに、それが過去の漫画に影響された演出だと自分でも気づかなかった事実をパクリコールによって暴かれる。
「恐るべし、スズキタロウクオリティ……おれたちも腹をくくっておこう。やることなすことイマイチ締まらないのだと……!」
「あぁ……俺、ローが格好良く見えたのに、言われてみればって思ったよ」
「タローとキタちゃんやめて! オレのライフはもう0よ!」
パクリの大歓声のなか、オレはこっそり泣いた。
大変お待たせしてしまい申し訳ありません。
長らく更新できない間もお気に入り登録を継続してくださった方、ありがとうございます。
また今回の更新を機会にたまたま拙作を見つけて「暇だから読んでやったぜ!」という方もありがとうございます。
次回の更新はまだ未定ですが、近況を活動報告に書いておこうと思いますのでそこで私の言い訳wをきいてください……。
ではまた次回!




