ため息
何度かゴトルーの胡坐の上で短い昼寝を繰り返して、気が付いた事がある。
夜、今までよりもしっかりと起きていられ、その状態で月や星の光を浴びると魔力の回復が早く感じた。
更には変化時間も長くなっている気がする。
もうじき猫や鳥の様に変化に慣れたものならば、半日はその姿を保っていられる勢いだ。
ただ問題は一人で昼寝をしても、効果が今一つという点だった。
ゴトルーに撫でられると途端に睡魔が襲って来るので、その手に理由があるのではと、ぺしぺし叩いてみる。
が、分からない。
「……何でしょう?」
ゴトルーが怪訝そうにしているが、首を傾げたいのはシャリも同様なのだ。
猫の手だから問題なのかも知れないと、人差し指を舐めてみた。
「汚いですよ? さっきから何を……。……」
これは汗の味、だろう。
そのままぱくりと指先を咥える。
それから金属、剣の柄だろうか……?
猫の口ではなかなか大変だ。
とにかくこの手に力は宿っていない気がする。
断言出来ないのは、いつも感覚だけで魔力を使っているせいだ。
シャリには魔力の師がいない。
完全な自己流である。
今回の様な疑問にぶつかった時、たまに師が欲しいと思う。
それから感覚だけで行っている変化は、理論で述べるとどうなるのだろう?
間違いは正し、教え導いてくれる存在が欲しい。
でもシャリは自分以外の魔女に会った事もない。
とりあえず今回の疑問も謎のままになりそうだと、シャリは諦めて口から指を離した。
するとゴトルーに視線が合う高さまで持ち上げられ、剣呑な光とぶつかった。
気を付けていたつもりだったが、痛かったのだろうか?
それなら謝った方がいいのだろうが、それとはどうも違う気がして困惑していると、ゴトルーの強面が急に近付いた。
そして額が合わさる。
「貴女が何のつもりであぁしていたかは知らないが、私の思う事とは違うのだろうな」
ため息を長く吐き出す様に、ゴトルーが呟いた。
距離が近過ぎて、どんな表情をしているのか、シャリには見えなかった。
ゴトルーがモンモンです。