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魔女のご主人様  作者: きいまき
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出会い

 何年も王宮の庭を歩けば、お気に入りの場所がいくつか出来る。

 そのうちの一ヵ所でぬくぬくしようと思い、やって来たのだが……先客がいた。



 胡坐を掻いているというのに、大きい。


 立てば、元の姿のシャリよりも頭二つ分は背が高いのではないかと思えた。

 手はゴツゴツとし、全体的に華やかな騎士という言葉よりも、武人というイメージである。


 髪は錆掛けた銀、どうもあまりの大きさにマジマジと見てしまったらしい。

 気付いたその男がシャリに視線を向け、ぶつかった瞳の色は月明かりの青。


 大きな男の目に驚きは浮かんでいるものの、決してそれが厳しくない感情だと知る。



 だが別にぬくぬく出来る場所は他にもあるのだから、ここに留まっている必要はない。


 視線を逸らし、シャリがこの場を離れようとした時、男がポンポンと自分の横の地面を叩いた。


 黒が魔の色である事は小さな子供から老人まで知っている事。

 そんな色を持つ自分を横に招くなど、どういうつもりなのだろうと、再びシャリは怪訝な気分で男を見た。


「……」

「……?」


 その表情を見て、シャリは余計に困る。


 ただ図体が大きいだけではなく、黙っていれば精悍さを通り越し、十中八九、怖いもしくは虫の居所が悪いに違いないという印象を持たれるだろう強面。


 たぶん三十後半、もしかすると四十も越え……いや明らかに老け顔なので、実際の年齢はもっと若いかも知れない。


 が、とにかくそんな男が「こっちにおいで」の「こ」の字もないのに、普段使っていなさそうな表情筋を精一杯動かして、シャリを呼んでいるのが分かった。


 本人は優しそうな顔を作ろうとしている様だが、それが分からなければ思わずドン引きしているだろう非常に奇妙な表情となっている。


 なぜここまで呼び寄せたいのか理解に苦しむが、その必死さに免じて、シャリは男の横に寝転んだ。



 ぬくぬくさが気持ち良くて、とろんとなり掛け、急に心配になる。

 使い魔と仲良さ気にしていたと誰かに醜聞を立てられでもしたら、大変な事になるのではないだろうか。


 顔を上げ、そわそわと周囲の様子を窺った。


 いつもの事だが、騎士団の鍛錬の声が聞こえて来るだけで、近くに人の気配はないと安心し、シャリは横の大きな男を見上げる。


 王宮に勤めている以上、使い魔と関わる事がマイナスにしかならない事ぐらい、この男だって分かっているはず。

 それに見た目だけで判断するなら、誰かの気配が近寄って来たなら、すぐそれに気が付くだろう。


 そして自分から去って行くに違いない。


 だからこの男の心配を自分がする必要はないと、シャリは結論付けた。



 シャリが頭を下げると、おずおずと大きな男が手を伸ばして来た。

 機嫌を損ねて逃げ出されるのを恐れるかの様に、そうっと黒い毛並みに触れられる。


 他の猫や犬が撫でられているのを見た事はあったが、実際にされるのは初めてだ。


 あぁ……思いの外心地好くて、シャリは目を閉じた。




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