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魔女のご主人様  作者: きいまき
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始まり

 ラーシカ王国で黒は魔の色とされている。


 黒い髪。

 髪よりは色がやや薄いものの、黒に近い瞳を持つシャリは魔女だ。

 魔法使いの女という意味ではなく、魔の色を持って生まれた女だった。


 今年十六になるシャリの外見は正に、絵本に出てくる悪い魔女と同じだった。


 ぼさぼさの長い髪、細く血色の悪い手足の表面はカサカサとして、背は低い。

 そして極め付けに目だけがぎょろりと大きかった。


 この外見は人間にとても似ているが違う、更に鳥や猫といったものに変化出来る様になってから、シャリは確かに自分が魔女だと思う様になった。



 シャリには本来もっと長い名前があったはずなのだが、呼ばれた試しがなく覚えていない。


 王宮で衣食住の提供を受け、生かされている。

 病気や事故で死んでくれればいい。


 故意に殺して、呪いでも降り掛かっては困る……そんなところだ。




 王宮の庭はとても広い。


 シャリはいつも暇になった時、猫の姿に変化して気の向くまま散歩をし、時に寝転んで日向ぼっこをする。


 変化する為には魔力が必要であり、それは夜になると日中よりも回復が早い。

 夜空が綺麗で、星や月が美しく輝く日には特にその実感があった。


 なぜ猫の姿かというと、それが丁度良いからだ。

 猫以上に大きいと、その分魔力を消費するし、人に見つかった場合、必要以上に騒ぎ立てられ、武器を持ち出されてしまう。


 シャリは悪意さえ持っていないのに、だ。



 そして猫より小さいと、本物の猫や蛇等に狙われる。

 本物の猫とは王宮の庭を徘徊し始めた頃に、よく喧嘩をした。


 今でもたまにどこかで飼われ始めたか、紛れ込んだ新入りの猫と喧嘩する事があるけれど、完全連勝している。


 いつの間にか猫達の間で、あいつは自分達とは違う奇妙な生き物だから手を出すなという暗黙の了解が広まったらしく、滅多に絡まれなくなった。



 地面を歩く時、基本は猫の姿だが、魔力ある限りそこは臨機応変にやっている。


 そして王宮で徘徊する黒い動物はシャリ本人ではなく、魔女の使い魔だと囁かれていた。


 当然ある魔女への嫌悪や蔑視、嘲笑。

 悪意ある言葉の数々。


 それらが変化している時にだけ、ほんの少し自分に向けられているものではなく感じられた。



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