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完璧な鏡

作者: 遥(はるか)奏汰(かなた)
掲載日:2026/08/20

日常生活のすぐ隣に潜む、不気味な違和感。洗面所の鏡に映る「自分」と目が合ったとき、あなたはその姿が本当に自分自身だと断言できますか?

わずか数分で読める、日常が崩れ去る恐怖をお楽しみください。


朝、洗面所の鏡に向かった時、違和感を覚えた。

自分のまばたきに対して、鏡の中の映像がほんのひとコマ、ほんの1秒だけ遅れてまばたきをしたのだ。

気のせいだと思おうとした。寝ぼけているだけだと。

しかし、じっと見つめ返していると、鏡の中の自分がすっと口角を上げた。

こちらが表情を変えていないにもかかわらず、だ。

鏡の中の「私」は、静かに言った。

「やっと気づいた?……じゃあ、交代ね」

直後、激しいめまいに襲われた。視界がグニャリと歪み、次の瞬間、鼻腔を突いたのは冷たく湿ったガラスの匂いだった。

手伸ばそうとするが、硬い透明な壁にさえぎられる。

壁の向こう側では、さっきまで鏡の中にいたはずの男が、私の身体を使って満足そうに身なりを整えていた。

彼は振り返りもせず、洗面所のドアを開けて出ていく。

取り残された私は、次に誰かが洗面所へやって来るのを、ただじっと待つことしかできなかった。


     【了】

いかがでしたでしょうか?

毎朝当たり前のように見ている鏡の向こう側。もしもあちら側が本物で、私たちが偽物だとしたら……。次に洗面所に立つときは、どうかお気をつけて。

お読みいただき、ありがとうございました!

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