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冒険者協会 冒険録 初期版  作者: 青識
幼少期と訓練生時代

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9/10

1-9 寮

夕方、

育成場の鐘が鳴ると、

僕たちは寮へ案内された。


訓練生寮は、

思っていたよりも大きく、

そして思っていたよりも質素だった。


石造りの建物。

壁には古い傷が残り、

装飾らしいものはほとんどない。


「……砦みたいだな」


フロックが率直に言う。


「守る場所だから、間違ってないかもね」


バルトが少し楽しそうに答えた。


中に入ると、

長い廊下が奥へと続いている。


両脇に並ぶ扉には番号だけが振られていた。


案内役の補助教官が足を止める。


「一部屋、三人だ」


僕たちは顔を見合わせた。


「規則は三つ」


「無断外出禁止」


「消灯後の私語禁止」


「体調不良は、必ず報告!」


最後だけ、声が大きくなる。


「隠したところで意味がないからね!」


部屋に入ると、木製のベッドが三つ並んでいた。


二段ベッドが一つと、

壁際に一つ。


小さな机が一台、

共有の棚。


「狭いな!」


フロックはそう言いながら、

迷わず二段ベッドの上段に登った。


「ちょっと!落ちたら危ないよ」


「大丈夫だって!」


そのやり取りに、

少しだけ緊張が解ける。


僕は壁際のベッドに荷を置き、

バルトは下段を選んだ。


「三人だと、静かだね」


バルトが言う。


「その分、誤魔化せないな」


フロックが笑った。


夕食は大食堂だった。


量は多いが、

味は素朴。


「訓練生向けだな」


フロックが言い、

それでも皿は空になる。


食堂では、

あちこちで声が飛び交っていた。


今日の授業。

ガルド教官の話。

これからの不安。


「正直さ、戦えないのが怖い」


フロックが箸を止めて言う。


「剣しか取り柄ないし…」


バルトは少し考えてから答えた。


「きっと大丈夫だよ!」


「そうだな!」


部屋に戻り、

消灯までの短い時間。


僕は、今日描いた地図を

自分の箱にしまう。


線はまだ歪で、

未完成だ。


それでも、

戻るための線だけは引いてある。


ベッドに横になると、

天井が近く感じた。


三人分の気配。

呼吸の音。


「なあ、ライズ」


暗闇の中で、フロックが小さく言う。


「今日の地図さ……」


「戻り道、ちゃんと考えてたよな」


「うん」


短く答える。


「……ならいいんだ…」


それだけ言って、

フロックは黙った。


消灯の鐘が鳴る。


灯りが落ち、

部屋は完全な闇になる。


初めての寮。

初めての三人部屋。


慣れないはずなのに、

不思議と落ち着いていた。



その時僕はなにかを確信した。


それを胸の奥で静かに抱きながら、

僕は目を閉じた。


冒険者になる道は、

もう始まっている。


それは剣を振ることでも、

魔法を放つことでもない。


「同じ部屋に、同じ夜を過ごす」


それが、

最初の一歩だった。

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