第95話 難民の受け入れ
「その件ですが、こちらからは協力できません」
「やはりそうなるか」
「え?
予測していらしたのですか」
「ああ、話には聞いている。
何でもすごい船を使徒様は操るのだろう。
あれを使えば、航海の安全は成ったものだと聞いている。
それに、先程シードラゴンだっけか。
それと戦っても問題ないとな。
そんな戦力、どこの国でも持ち合わせていないよ」
「それを承知で、我々が協力できないとなぜ思われたのですか」
「それこそ、教国を敵に回して、全面的に宗教戦争でもするつもりでもなければ、神によりもたらされた神機を人との争いに使えるとは思ってもいない。
それでも、私としては、明日は国の代表者として要望を出さざるを得ない。
理解してほしい」
やはり、ここに来た目的が俺の持つ巡視艇だった。
尤も、今話しているフランの兄は元から成功すると思ってもいなかったようだが、宮使いの辛さか、命じられれば命令に従うしか無いとかいうやつのようだ。
「ええ、明日当然その話が出ることもこちらとしては理解しておりますが、理解をしていてもやはり手を貸すわけにも行きません。
理由は言うまでも無いようですが」
「ああ、それも理解しているが、みんなが理解しているわけではない。
政治というやつは、どうしてもレベルの低い方に合わされるものだ」
「守様。
明日の会合には出て頂く必要はありません」
「ああ、どうやら俺が出る方が、問題がありそうだな。
そのあたりについてはダーナと相談して決めてくれ。
俺は、その決定に従うだけだ」
「ええ、私としてもそうして頂けますと助かります。
お礼というわけではありませんが、私個人としてできるだけの協力は惜しみません。
最悪、こちらの亡命も考えなければならないような状況ですので」
「流石にそれはないのでしょう。
お兄様の、今の表情を見ておりますに時間さえ掛けることができれば元に戻るとお考えのように思われますが」
「流石に同じような教育を受けていればわかるか。
ああ、連中にハートポンドの地は治めきれまいよ。
そうだな、二回くらい冬でも越せば勝手に逃げていくが、上の連中はそれが待てなくて、私も苦労している。
尤も、植民都市に逃げてきた連中の暮らしが苦しいことが背景にはあるのだろうが」
彼が言うには、占領しても長らく統治は能力的に無理があるので、彼からすればしばらく様子見だけで問題は無いと考えているようだが、他の貴族連中はそれが我慢出来ないらしい。
というよりも、自分たちが積極的に攻め取り返さなければだと後の政治向きで不利にでもなるのか、要は自分らの利益しか考えずに行動していると言っている。
そんなことすればかえって状況が悪くなると言うのにもだ。
しかし、現状でもそのための被害者は出る。
下層階級の多くが生活に困窮をしてきているので、フランの家の領地にいる庶民の家で生活に困窮してきている連中をこちらで受け入れて欲しくて、今回の船団の依頼を引き受けたそうだ。
端から、貴族連中が要求する協力体制など無理だと判っていてもだ。
それよりも、困窮者の受け入れについてだが、以前に助けた船に乗っていた連中を俺達が受け入れたという情報を得ているようなので、様子見がてら手に職を持つものから連れてきたと言っていた。
「受け入れについては、明日話し合いになるが、フランは受け入れに賛成で良いのだよな」
「はい、お兄様。
特に今回は、私が育った領地で生活していたものだと聞いております。
助けられるのならば助けます。
守様は人が良すぎますので、困窮者をそのままにはできそうにありませんしね」
何を言い出すのかと思ったら、やたらと人助けをする俺についてディスり始めた。
「尤も、私を含めここにいる人達はその御蔭で生きているのですが。
守様。
受け入れでよろしいのですよね」
「ああ、構わないができれば、いざこざが起きないように注意だけは払ってくれ」
「はい、そのつもりです。
これからこの地も大きくなってまいります。
今回受け入れについては、ここで以前に受け入れた者たちと一緒に扱いますが、今後については、状況を見て考えます」
「今後?」
「ええ、お兄様のことですから植民都市だけでなく本国からでも困窮者の受け入れを要求してくるでしょう。
その時にどうするかです」
「よく判ったな。
今回は、こちらの状況を知るためにかなり遠慮した人数しか連れてきていない。
だが、現在植民都市の一つでしかない俺のいる場所ですら、今回連れてきた者たちの10倍はくだらない数の困窮者が出ている。
流石に全員とは行かないが、できれば受け入れてほしい」
「そのあたりについてはフランとダーナの判断に任せます。
よくよく二人と相談して決めてください」
なんだか今回の船団の目的はこの場での会談で要件は済んでしまったようだ。
その後も色々と話し合ったが、内容的には、先程の話の続き程度で、俺が興味を引くようなものは出なかった。
話の流れ的に、フランを頂いたことなど結局話すことはできなかった。
でも、フランも祖国に戻るつもりがなくプレアデスの姫に仕えると高らかに宣言していたことだし、この地に残る意思だけは伝わったことだろう。
俺が美味しく頂いたことには触れずにだ。
俺はどのタイミングで、『フランも俺にください』とご親族の方に伝えれば良いのかな。
そんな事を考えながら、ワインを飲みながらではあるが、その日の会合をすべて終わらせた。
この地ではまだ道交法など制定していなかったが、流石に元だが公僕であった俺が飲酒運転などできるはずもなく、俺はこの浜に作った小屋の一室で雑魚寝で一夜を過ごした。
翌朝は早くに起きて、車でフェリーまで戻りひとっ風呂浴びてから朝食を摂った。
昨日は、飲み始めた時間が早かったのと量も抑えめだったこともあり、車を運転したが、あれも正直かなり微妙だ。
検出器を使えば、多分アウト判定だっただろうが、そこは勘弁だ。
あそこに車を置いておけるはずもなく、ゆっくりと気をつけて運転していたので、大丈夫……あれは多分ダメだな。
昨日の状況から考えても、後数時間は運転は避けたほうが良かったが、この件もそのうち考えよう。
すでに、車くらいならば運転できる者も出てきているので、そろそろ運転手も……それよりも国賓といえば良いのか、外交関係者を招く屋敷の建設や、その関係者を出迎える基準というかルールを作る必要もありそうだ。
今回はフランの親族が団長だったこともあり、かなり融通がきいたが、これが関係の怪しい連中ならば……尤もそんな連中は浜に上げないが。




