第90話 天使族の仲間入り
話し合いの主題が道路インフラから天使族の扱いについて変わってきた。
もともと彼女らが我々に加わるということからこの話し合いが持たれたので、やっと本題に入ったといった感じか。
天使族の長から聞いた話になるが、天使族の村は崖の上にあるらしく、一般人の立ち入りが非常に難しいとか。
もともとからして彼らは飛べる、いや、飛べたといえば良いのか、種族的には飛べた事があったらしい。
確かに背にはそれこそ俺でも知る天使のような立派な羽がある。
あれなら飛べたというのも……俺は一応大学校でそういう理系的なことも仕込まれているからわかるが、あの羽根で飛べる等がおかしい。
力学的に飛べるはずはないが、そんなデタラメ?はこの世界にはご万とあるらしく、とにかく昔は飛べたようなのだが、それが代を重ねていくうちに飛べなくなったと教えてくれた。
それでも滑空はできるらしく、村からあの拠点に来るときも滑空して降りてきたとか。
戻る時には自分の足で登って戻るか、それこそグライダーのように上昇気流を捕まえての話になるようだ。
早い話が俺達に合流する以上、現在の村では不都合がある。
俺達との交流に支障があると言ってきている。
そこで、俺達の拠点に移住したいと最初に相談された。
「長の言われる通り移住したいというのは村の総意なのですか」
「長らく住んでいた村ですから半数まではいかなくとも村に残りたいという者はでましょう。
ですが、我らとてプレアデスの姫をお守りする種族としての誇りもあります」
「どうでしょう、守様」
「ああ、姫の従者だっけか、その人達くらいはここフェリーに一緒に来てもらっても構わないと考えるが、フランはどう考える」
「ええ、ここは姫とその従者の生活の場とだけにと考えております」
「そうだよな。
そうなると、ここに移住させる事もできるが……」
「移住をお認めくださいますか」
「長、ですがここですと村に残したものが少し心配にはなりますね」
「姫、ですが、かと言って……」
天使族の長と姫であるアリエルの意見が少し食い違ってきたようだ。
確かに村から離れるには心配もあるだろうが、そうかと言って俺達がそんな崖の上に住むのも無理な話だ。
フェリーに積んである資材を使ってどうにかできないかといえばなんとかなりそうだとは思うがそれだってすぐには無理だ。
「どうでしょう、守様」
「どうした、ケリー。
なにか意見でもあるのか」
「はい、我々と天使族とが最初に出会った場所かその近くに新たな拠点を作れませんか」
ケリーは、島中央付近にも村を作れないかと俺に聞いてきた。
確かにあそこならば天使族の暮らしていた村からもそれほど遠くない。
会おうと思えばすぐにでも会える距離だ。
特に天使族ならば滑空して簡単に降りてくることができるようだし。
尤も村に帰る時に地獄を見ることになるが、それでもここに移住者を連れて来るよりもこちらからあそこに移住者を募ったほうが良さそうだ。
村に帰るのが地獄だと言っても、もともとからそういう生活をしていたのだし、ケリーの案は案外いけるかもしれない。
俺達の会話を聞いていたダーナが天使族の二人に提案していた。
「長殿。
どうでしょうか。
先程守様とケリーさんが言っておられたように、最初に我々と会われた森の中に村を作ったら、そこに移住はできませんか」
「それでは、ここと距離が……」
「ああ、それなら気にすることはないよ。
俺達の村を作ったのならば定期的に車を出すことにするから、毎日だってここに来れるようにはしておく」
「村長。
守様たちからのご提案、私は受けたく思います」
「姫がそう言われるのならば」
「なら決まりだな。
ダーナ、それにフラン、それでいいか」
「はい、守様」
「でしたら、まずは村の場所と大きさを決めませんと、ダーナ様」
「ええ、フランさん。
ですが、そうなりますと島の探索はいかが致しましょうか」
「それは、一旦終了でいいよ。
もともと俺がヘリで見かけた、多分天使族の方の滑空の場面だと思うが、それが気になったからだしな」
話し合いの目的は達した。
天使族を我々の中に受け入れるということだが、それも一部住人を我々との交流に支障ない場所に移住してもらうことで双方納得してもらったのだ。
後は、こちらからの提案でもあることだし、移住先の村を準備していく。
最近は、土木や大工仕事ばかりの我々だが、なにも無いこの島で生活していく以上は仕方のないことだ。
ドワーフ族の親方たちも、今ではすっかり俺が提供して居る工具や建機類の扱いにも慣れてきている。
天使族の村の整備をこの場でお願いしておいた。
一応今進めている工事計画に割り込む形になるから、それなりのお願いの方法がある。
そのあたりを考慮して丁寧にお願いをしたら、ウイスキーを数本で簡単に引き受けてくれた。
うん、フェリーの売店にポケット瓶のウイスキーが売っていたな。
あれって、在庫があるのか心配だが、売店の棚に置いてある分全てをその場で渡したら、この問題がきれいに片付いた。
……これって、賄賂のような気がしてきたが、まあ、ダーナも見ていたが何も言ってこないのでセーフなのだろう。
しかし、だんだん俺も汚い大人に成長していくような気がして、少しばかり落ち込んだ。
俺が告発した不正よりは比べるべくもなく可愛いものだが、本質の部分で同じでは……フランが言うには計画が変更されるのは当たり前で、迷惑をかける部署に感謝を伝えるのは人としてまともなとこだと慰められた。
尤も、それすらできない人が多くいるから世の中が騒がしいとも言っていたが。
変な慰めとも聞こえるこの世界の常識?をフランから教えられて、俺はとりあえず自分を納得させた。
気にしたら負けのような気がしてきた。
で、打ち合わせが終わり、一旦解散となったが、女性陣はそのまま残り、天使族の姫を連れて一つ上の階に上がっていった。
どこに行くのかと思ったら、天使族の姫を風呂にいれるらしい。
女性全員で行くこともないだろうとは思うのだが、何やら怪しげな空気が流れているような気がしたので、俺は何も言わずにフェリーから出ていった。




