第81話 ブッシュに阻まれたので
俺は、みんなにゼリー状の携帯食を配り30分ばかりこの場所で休憩を取った。
俺の配った携帯食をケリー達は喜んで食べていたが、ダークエルフはおっかなびっくり一口食べて驚いていた。
あれ、彼女たちは食べたことが無かったっけかな。
……そういえば、前に難破船を救助した時に使ったきりで、その後は使った覚えがない。
ダークエルフは、あの何でも揃うカーフェリーで救助したので、食べ物も困ることが無かったし、何より救助後に上陸するまでの時間も大したことが無かった。
それよりも、なんだっけか、そうそうシードラゴンだっけか、それらとの死闘の方が印象が深い。
シーサーペントは前にも倒したこともあり、それほど脅威には感じていなかったが、あのシードラゴンだけは違ったな。
結局、CICまで行って主砲を使ってやっとって感じだった。
この時代では、俺の少ない経験からだけど、ほとんど30mm機関砲だけで武装は済んでしまいそうな感じだったが、より強力な魔物っていうのか、そういうものもいるという感じだ。
だとすると、俺は空から発見できなかったが、空飛ぶドラゴンも居るのだろうか。
それに、これから探そうとしている天使族だっけか、それだって敵対しないとも限らないし、その天使族の持つ武力もわからない……あれ、ひょっとしてまずかったかな。
敵かどうかも知らない者に対して、いきなり向かうのなんか。
しかし、どちらにしても調査だけはしないといけないし、選択肢も無いことだけは確かだ。
俺がそんな感じで思考がループに入りかけたころにケリーから声がかかる。
「守様、そろそろ……」
「ああ、みんなも食べ終わったようだし、休憩も済んだな。
悪かった、それではまた探索の続きを始めよう」
結局なんだかんだで小一時間ばかり休憩してから、俺たちは島の中央を目指してどんどん奥に入って行った。
午後2時過ぎになっても、あまり探索が進んだ気になれないが、ここらで野営するつもりも無かったこともあり、戻ることにする。
「もう一度休憩しよう」
俺から声をかけて、いったん休憩を取り、この後のことについての説明をする。
「今日は、ここまでとして戻ることにする」
「え?
ここまで来ても、戻るのですか」
「ああ、野営の準備もしてないしな」
「いえ、守様。
食料は数日分用意しておりますが」
「食料だけだろう」
「え?
食料以外に、準備など必要なのですか」
ああ、この世界の人では、そこらでごろ寝の野営がスタンダードなのだろう。
令和日本でも、無い訳でもないが、普通計画された探索では、テントなどの宿営施設の準備をするものだ。
少なくとも俺のいた海保では、そこらでのごろ寝などありえない。
尤も陸上での活動が限られているためなのだが、それでもだ。
「ああ、そこで相談だが、今日通ってきた所を道にしたい。
今度の探索ルートにでもしたいと思うのだが」
「え、ここまで重機を入れるのですか」
あ、勘違いさせたな。
連中は、拠点間を結ぶ道のことを思い浮かべたのだろう。
俺が考えているのは、物資を運ぶのでも困らない程度の獣道を考えていたが、それを説明していく。
明日は、ここまでの獣道の整備に時間を使おうかと考えている。
出ないと俺の体力が持たない。
「実際に、明日以降いかがするおつもりなのですか」
ケリーが俺に聞いてきた。
「ああ、ここまでの道を整備していくつもりだ。
実際にすることはブッシュを刈っていく位だが」
「ブッシュを刈るですか」
「ああ、あのフェリーには建機以外にも便利な物がある。
明日はそれを使って、最低でも歩くのに困らない程度にしておきたい」
「それでは、探索が進まないのでは」
「ああ、すぐに島の中央まではいきつかないだろうが、どのみち俺たちはこの島で生活していく覚悟を決めたのだろう。
ならいつか必要になるはずなのだから、明日やればいいだけだ。
それに、天使族だったっけか。
あれの発見も急ぐ必要は無いのだろう」
「ええ、そうですね」
俺たちは休憩を終えてフェリーを停泊してある浜に戻っていった。
俺たちが戻ると浜の連中が一斉に驚いていた。
「守様。
何かありましたか」
すぐにダーナが危機感を募らせた声で聴いてきた。
「いや、時間になったので戻ってただけだ」
「は?
時間ですか……てっきり数日かけて探索するものだと」
「ああ、周りの連中はそのつもりだったようだな。
俺の指示がまずくて悪いことをした」
「いえ、そんなことは……」
俺はダーナに、俺の考えを伝えて、明日以降について相談していく。
翌日から早速作業に取り掛かる。
俺はカーフェリーの車両デッキに降りて、機材を探す。
災害救助に向かう防衛隊の車両の中には俺の探すものが絶対にある。
トラックの中身を確認しながら数台を見て回ると、まとめてしまってあるトラックを見つけた。
すぐに、ターナを呼んで人を貸してもらい、草刈り機とチェーンソーをそれぞれ10台ずつ外に運び出して、昨日一緒にいたメンバーにこれらの使い方を説明していく。
一通り説明をした後に、俺は浜からジャンブルの端までそれらを運んでから、実演して見せた。
チェーンソーなんか普通町で生活している人には使うことなど無いだろうが、あいにく俺の育ったのが田舎だ。
しかも早くから祖父との暮らしだったこともあり、村での当番で里山整備に良く狩りだされていたこともあって、ある意味懐かしさも感じたくらいだった。
俺は近くのブッシュに向かって草刈り機を使って、蔦などを刈っていく。
まずは獣道からだ。
俺はターナたちに向かって実演後に、簡単に説明をしてから、次に邪魔な木々を10台あるチェーンソーを順番に俺の指導の元で使ってもらう。
昨日のメンバーはそれこそ簡単にコツをつかんで上手に扱っている。
……しかし、なんでここにサーシャがダーナと一緒に居るんだ。
その横でフランまでもが俺のことを興味深げに見ている。
サーシャは分かる。
しかし、フランやダーナには仕事があったはずなのだが。
幸いここから浜は良く見渡せるので、作業全体を見守ることはできようが、二人とも本来していた仕事でなく、俺の方を監督しているようだ。




