第79話 上空からの偵察
翌日以降も、こんな感じでヘリの習熟訓練に俺は時間を費やした。
流石に4日も訓練をしていればって、普通はこんなに短時間で操縦をマスターできるはずは無いのだが、そこはそれ、神様チートとかいうやつらしく、自信も付いてきた。
俺の操縦訓練中は毎回いつも巡視艇の後部甲板で待っているサーシャが、そろそろかわいそうに思えてきたので、一度だけサーシャを後部座席に座らせて島を通常モードで、しかも最大速度で一回りをしたら、サーシャは大喜びだったが当然のようにそれは皆にもばれて、とりあえず、会議に集まるメンバーを順番に同じように遊覧飛行に招待する羽目になった。
通常モードでの飛行であるために高高度に当たる1000mくらい上空を島の外周それもそれなりに島から距離を取っての飛行で、二日掛けて該当メンバー全員に飛行体験をさせておいた。
全員が体験した後に、皆の感想として、この島は大きいということだ。
そのためなのか、島の全容解明ではないが、少なくとも魔物の生態だけでも調査する必要があるという認識を遊覧飛行に参加した全員が持ち、話し合った。
「守様。
それでしたら、うちからメンバーを出して探索させましょうか」と後から俺たちに合流してきた黒エルフのダーナが提案してきた。
「いずれ、お願いをしないといけないが、まずは事前調査という感じで、少数で近くだけでも探索したいのだが」
「少数での森の中の移動は危険が伴いますが」
「まずは俺が空から確認するが……」
「それでしたら、目の良い者を一人載せてはいかがでしょうか」
「目の良い者?
それは……」
「ええ、上空から確認するにしても、目の良い者、この場合私の部下で斥候を担当するものがいますので、その者を載せて、探索するエリアを見てもらえばと考えております」
「空がというよりも高い所が苦手ってことは無いよな」
「ええ、もし苦手のようでしたら別の 者もいますので」
ダーナが俺に提案してきた。
前に遊覧飛行をした時にダーナも載せたことがあるのだが、その時から彼女は空からの偵察を考えていたようだ。
とにかく、この島は当初考えていたよりも大きく、島の中心部の偵察の必要性を特に感じていたようだ。
俺が、フェリーから作業車を各種出した時に、それらを使ってでもとも考えていたらしいが、ヘリに乗せたことで空からの偵察の方が良いと思ったらしい。
何せ、浜のすぐそばまで迫っているジャングルのような森がある。
現在二カ所ある拠点を結ぶようにジャングル中に森を切り開いて道を整備しているが、その道くらいしか彼女らの言うところの魔動車、要はトラックや乗用車の類だが、それらを走らせることができそうにない。
フェリーには悪路走破を目的としてバイクも数十台積んであるので、それらを使えなくもないが、まだ、彼女らにそれを見せてもいない。
一度空から観察してから考えようか。
俺は、ダーナの提案を受け、彼女の部下の一人、ダークエルフの少女を載せることにしたのだが、どうもサーシャが焼きもちを焼いているような感じで機嫌が悪い。
いつものように重量軽減の魔法を頼もうかとしても調子が悪とか言ってどこかに行ってしまった。
ダーナも、そのあたりを心得ているようで「あとは私にお任せください」と言って、サーシャを追いかけて行った。
う~む、なんだか色々と面後臭くなってきているな。
こんな調子であと6人だっけか、プレアデスの姫とか言ったのは。
それを娶れるのかな。
俺の方が、先に特に胃の辺りからやられそうだ。
とにかく俺たちは、格納庫からヘリを出して準備を始める。
ローターを広げ、出発前の最終確認をしているときにダーナがサーシャを連れてきた。
「守様。
サーシャ様の機嫌が収まりましたので」
「ダーナ!
あの時は本当に調子が悪かっただけだもの。
ですが、お手伝いできなくて申し訳ありませんでした、守様」
「ああ、サーシャも元気になってよかったよ。
島の中心までは、これだとすぐだ。
時間もそんなにかからずに戻ってくるから」
「ハイ、お待ちしております」
「では行ってくる」
俺は見送りに来ていたサーシャたちに一声かけてヘリに乗り込んだ。
先に後部席には斥候のダークエルフの一人が乗っている。
「出発ですか。
私の方はいつでも問題ありません、守様」
そう何だか嬉しそうに後ろから答えてきたので、俺は軽く手を上げ合図を送ってからヘリを飛ばした。
普通の感覚では大した飛行時間を持っていない俺だが、ここ数日の訓練でベテラン並みと言えば言い過ぎだろうか。
でも俺の中では船の操船と変わらないくらいの感覚でヘリを飛ばせるようにはなっている。
すぐに上空300mくらいまで上がると飛行モードを変えて、上昇を続けながら島の中央付近に向けヘリを飛ばしていった。
静音モードでの飛行なので、速度は出ないので、最近高速遊覧飛行での操縦が多かったためか、かなりゆっくりとした操縦に感じる。
「どうだ、
偵察できそうかな」
俺は後ろに乗っているダークエルフに声をかける。
紹介されたときに名前を聞いたのだが、あいにく俺は人の名前を覚えるのが苦手だ。
だからなのか、海保時代に他から浮いてしまうことが度々あり、俺が嵌められた時には誰も俺のことを庇ってはくれなかった。
まあ、あのお役人の世界だ。
誰もが自分はかわいいし、何より上層部が絡んでいることは薄々だが、誰もが知っている。
それならば、あの態度もうなずける。
そう、お役人の世界では、とにかく上からにらまれたら終わりだ。
まあ、ほとんどは、俺の様にいきなり首になることはならないし……あれ、できないはずだよな。
できないはずのことを無理やりしてきたということは、あの件相当やばかったのか。
簡単な汚職なことだけど、上、特に政治家が絡んでいるとあそこまで無茶をしてまで俺を辞めされたのか。
下手をしなくとも、殺されなかっただけましだとか。
まあ、その後実際に俺は令和の時代からは放り出されたわけだけど。
そんなくだらないことを考えながら、俺は今回の相棒に声を開けていたのだが、その相棒のダークエルフからすぐ返事が返ってきた。




