第77話 空を飛びたい
島を一回りして、ヘリを巡視艇の甲板に降ろすことにした。
これもおっかなびっくりとゆっくり高度を落としていき、甲板上から20mくらいの高度で、甲板に描かれているあの『H』 のマークの真上の来るようにそれこそ慎重に操縦して、高度だけをゆっくりと降ろしていく。
俺からすれば割と上手にできたと評価していたのだが、俺の操縦するヘリが船の上空に来てから30分近くかかってやっと着陸だったので、甲板周りにはこの船に入れる者たち全員が集まっていた。
相当に心配をかけたようだ。
集まったみんなには、その場で簡単に説明した後に、フェリーで詳しく説明するからと言って、この場を解散させた。
エンジンが十分に冷めるのを待ってからローターをたたんで、今度はサーシャに重量軽減の魔法を使ってもらい、一人で格納庫にヘリをしまった。
ヘリを格納庫に仕舞ってから約束した通りみんなに説明するためにフェリーに向かった。
フェリーでは、いつものメンバーの他にドワーフや獣人族の代表者も集まって俺のことを外甲板上で待っていた。
俺はすぐに皆を食堂に連れて行き、温かな飲み物を出してから、へりのことについて説明していく。
当然、俺の説明では分からなかったのか、見事に全員がぽかんとしていたら、フランの一言で状況が変わった。
「では、守様。
先ほどの物は神様からの思し召しなのですね」
すると今度はミーシャが言葉を繋げる。
「あれは、神様からの聖遺物なのでしょうか」
「遺物ではないとは思うが……」
「そうですよ、ミーシャ。
あれは、他にもあるように、神様から守様に遣わされた神機なのでしょう」
「この船や、外で働いているあれらと同様に神機なのですね」
「神機というのはよく分からないけど、カミサマから頂いた物だというのはその通りだ。
この船同様に、あれらを使ってって言ってもな~
一応、カミサマからの宿題はこの船を見つけた段階で終わっていたような……あ、文化がどうとか言っていたかな。
しかし……」
「そうですか。
なら、あれらも使われるのですね」
「ああ、サーシャ。
そのつもりだ」
「でしたら、私たちもあれに乗ることは可能でしょうか」
「サーシャ様。
それは危険では」
「いえ、ダーナ。
神様から頂いた神機ならば私も守様と一緒に乗りたくあります」
「あれって、攻撃用なので大勢乗るには向いていないというか、乗れない。
それよりも、もう一つあるが、それなら乗せられるかな」
「なら、そちらに……」
「でもすぐには無理だ。
俺が慣れていないので危なくてとてもじゃないが他の人を乗せられないよ」
「そうなのですか」
サーシャだけでなく、他のみんなもなぜか肩を落として残念そうにしている。
まあ、高所恐怖症でもない限り乗りたくなるのはわかるが、それにしても空を飛ぶなんて発想も無かっただろうに……え?あるの……
ミーシャがそっと俺に教えてくれた。
伝説上の話になるそうだが、天使族という人種がかつていたそうで、彼らは自由に大空を飛んでいたそうな。
ミーシャの話を聞いていたエルムは魔法でも可能だと教えてくれた。
「守様。
あれには大魔法の一つである飛行魔法が使えるというのでしょうか」
「飛行魔法?
なんだそれは」
エルムが簡単に教えてくれたことによると風魔法の一つであるものに飛行魔法というのがあるそうだ。
だが、風魔法もフラン達の国では珍しいものらしく、使い手が少なかったうえに、飛行魔法まで使える魔法使いはさらに少数らしく、フランはいまだかつて見たことが無いとか。
魔法大国であるアンタレス教国や、軍事大国の帝国などでは偵察などでごく少数ながら空を飛ぶものがいるらしい。
これはあくまで風聞だと断ってから教えてもらったことでは先に伝説がどうとかと言っていた天使族も少数ながら保護しているとか。
なので、この世界でも空も飛ぶことはできるらしい。
尤も、軍事大国では竜種と称しているワイバーンという魔物を使役して馬の様に使い空を飛んでいるとのことだ。
フランのいた国では、もともと空軍にあたるワイバーンを使役して使うという発想も無かったらしい。
ワイバーンの使役は相当難しく、それに維持する費用もかなりの高額になるらしい。
一説によると馬の飼育にかかる費用の五百倍から一千倍になるとか。
騎馬千騎に対して一騎のワイバーンでは確かに普通では考えないよな。
しかも、圧倒的な攻撃力が見込めれば考えなくも無いが、上空から攻撃魔法くらいしか使えないとなると、迎え撃つ側も同様に攻撃魔法で対抗できることになり、費用対効果に疑問も出そうな気がする。
多分、どの国の特に軍事を司る人たちは一度は考えることなのだろうが、皆費用面と技術的なことからあきらめているのだろう。
実際に自国に無くとも、外交などで訪れた国で見たことがある人も珍しくないらしく、貴族たちにとって空を飛ぶ人がいることについては珍しくもあるだろうが、それほど驚くようなことではないようだ。
まあ、ただでさえ費用の掛かるワイバーンなのだから、外交面でもと見せびらかすようなことをワイバーンを持つ国ならどこでもするらしい。
しかし自由に空を飛んでみたいという欲求は人の根幹から来るものらしく、実際に空を飛べるのならば飛んでみたいという欲も出るのは自然の流れだ。
だから俺から無理と言われた段階であれほど落胆したのだろう。
「まあ、いずれ機会があれば順番にでも乗せるから、すぐには無理だけど我慢してほしい」
「わかりました。守様。
ですが、いずれで結構ですので、私を空に連れて行ってくださいね」
「ああ、約束するぞ、サーシャ。
それにこの場にいるみんなにもだ。
もう一つあるヘリは、ある程度の人数を乗せられるはずだしな」
「え!
そうなのですか」
「ああ、そうだぞ、フラン。
一度にたくさんの兵士を戦場に運ぶためのヘリだしな。
あ、ヘリってあの空飛ぶ機械のことな。
正式にはヘリコプターと呼ばれていたものだが、略してヘリと呼ばれることも多かったものだ。
ちなみに、もう一つはヘリとは呼ばれずにオスプレイとか言っていたけど、まあ名称などはどうでもいいか」
一応その場では。全員が納得してくれたようで収まり、明日以降の活動について話し合った。
基本今までと変わりなく、浜周辺の開発にあたるそうで、俺はヘリの習熟ににあたると言っといた。
みんなもできるだけ早い段階での俺の習熟を望んでいるようだ。
俺がみんなを順番に乗せると先ほど言ったばかりにやたらと協力的でもあった。




