第70話 フェリー内の片付け
艦橋に入ると三人の騎士たちが俺を出迎えてくれた。
「守様。おはようございます」
「おはよう。
昨夜はきちんと寝れたのか」
「はい、当直を残して順番に」
「それは良かった。
無理しても良いことは無いからな」
「今日は……」
「ああ、船が二隻になったので、管理が面倒になるから、一緒に管理をするためにこの船をフェリー……フェリーって目の前の大きな船のことだが、それに横付けをする」
「え!」
「ああ、大丈夫だ。
操船は俺がする。
みんなは、周りを警戒してくれ。
大丈夫かとは思うが、ボートや、帆船に積んであったカッターなどを巻き込みたくないからな」
「はい、わかりました」
すぐに俺は操舵輪を握り船を動かす。
一旦湾の外に出てからゆっくりとフェリーに近づき、完全に横付けして巡視艇を止めた。
しばらく動かすつもりもないのでビルジに溜まる排水用のポンプだけを動かして排水機能を残しそれ以外の動作を一切止めた。
その後デッキで舫を用意してフェリーに繋いで船を固定してからみんなで梯子を使いフェリーに戻った。
これでしばらくはこの巡視艇は使われないだろう。
尤も、フェリーも当分は動かす予定もないけどな。
「おかえりなさい」
ミーシャたちに出迎えられた。
時間にして30分もかかっていなかったとは思うが船の固定などでかなりの時間を使ったようだ。
「さあ、悪いが今日はこの船の中の確認と整理だ」
「何を始めるのですか」
「ミーシャなら一度経験しただろうが、まずは服の片付けだな。
今日はきちんと整理して保管するから」
ミーシャに聞かれたので、上の階から順番に部屋を回り一度食堂に散らばっている服を集めた。
それだけでも半日が過ぎたが、集まった服を見ると驚いた。
予想通りだが、自衛省防衛隊の戦闘服がほとんどだったが、それなりの数もの背広もあった。
後は防災服や、つなぎの作業着など。
それに各部屋には個人所有も持ち物もあったので、それらも一か所に集めさせた。
これらはそのうち中身を調べるが今は服と靴。それらの種分けだ。
同じ服を集めさせた後にラベルを確認させて大きさごとに集めさせた服からたたむようにお願いしてある。
服のたたみ方も知らないものがほとんどだったので、まずは種分けをさせて、たたみ方を知るミーシャとドーラにたたませるよう手分けをさせた。
そこまで頼んでから、俺は船長室に向かう。
船長室は情報の宝庫だ。
この船の積載されている物や備品類の数など、調べられるものは調べておこうと思ったためだ。
当然サーシャも付いてきたのだが、俺のしていることが理解できなかったのか、すぐにみんなの所に戻り手伝いをしているようだった。
なんだかんだと時間ばかりが過ぎていくが、俺の作業も終わりそうにない。
小腹もすいてきたので、俺は一旦みんながいる食堂に向かった。
食堂は大量の服の山だ。
辛うじて端に余裕があるので、みんなの作業を止めさせてそこで食事にした。
朝食バイキングのメニューはそのまま補充がされている。
「昼もここで食事だ。
同じもので悪いが好きなものを選んで食事にしよう」
俺がそう言っても、みんなは俺が何で不満がるのかわからないようだった。
彼女らにしたら、同じもので何で不満なのかが分からないといった感じだ。
そういえば巡視艇でも、から揚げばかりのことがあったので、俺が無理やり変えたこともあった。
とにかく、フェリーが来たので食生活から変えていきたい……島にいる全員には無理か。
そのあたりも考えないとまずいな。
そのまま数日を俺はフェリーの中で過ごした。
とにかく、フェリーの中にある物の整理が追い付かない。
巡視艇でも、中の物の整理が完全に終わったとは言えないが、それでも実用に耐えるくらいまでの整理はしてある。
しかし、このフェリーはとにかく大きい。
それに、空荷での航行中だったならばもう少し楽だっただろうが、ほとんど満載状態で移動中だったようだ。
唯一の救いは、その満載が災害派遣のための部隊移動だったために、積んである荷や乗員の服や備品類も統一されていることだ。
これならばサイズさえ合えばそのまま使えそうだし、何より整理が楽だ。
そうなってくるとせっかく制服なのだ。
役割ごとにその制服を利用しない手は無い。
フェリーの乗員も制服姿であったので、フェリー乗員の制服もある。
防衛隊の制服や、作業着、それに背広にフェリーの乗員用の制服、大きく種分けするとこんな感じだろうか。
服の整理が済んだこともあるし、一度みんなと相談して決めていこう。
それよりも、浜の方には俺は一切関知していないが大丈夫なのだろうか。
ここのところ毎日夜になれば浜に出ているフランたちも戻ってくる。
フェリーで夕食を摂ったのちに一晩を俺と一緒にフェリーで明かすのが日課となっていた。
なので、俺は食後に服について相談を始めた。
「フランたちに渡している服な、あれは俺が働いていた傭兵の制服の一つだ」
「制服?
それは何ですか」
「ああ、そうだな……決められた職種は同じ服を着るようにしている。
そうすれば簡単にどんな仕事をしているかを知ることができるからな」
「近衛の騎士たちが同じ甲冑を身に付けるようなものですか」
「そうだな、俺の世界ではほとんどの者は甲冑を付けない……というか、甲冑って見ないかな」
「それでは、戦でどうやって身を守るのですか」
「それは……、あそうだ。
前にボートに乗るときに付けさせたベストがあっただろう。
あれもそうなのだが、あれって身を守る機能もあるよ。
そこいらの刃物ではついても貫通はできないはずだ」
「え?
そうなのですか……」
「ああ、それに俺がいた世界の戦は俺の船を見ればわかるが乗り物に乗って攻撃を行うのが主流だ。
尤も歩兵もいるが、全てが遠距離からの攻撃だから、実際に攻撃に遭えば甲冑程度ではどうすることもできない。
だから歩兵たちも攻撃に遭わないような工夫をしている」
「海の上ではわかりますが、陸上ではさすがに船を運ぶわけにもいかないと思いますが」
「ああ、流石に船は無いな。
しかし、実際に昔には陸上に船を上げて戦をしたことがあるらしいが、それはあくまで例外だ。
それも実際に陸に上げた船は反対側に浮かべて使用したようなのだから、ケリーの言う通り陸上での戦闘では使っていないか。
でも、俺のいた世界では陸上でも船で使ったような大砲が付いている乗り物がある。
それらを使って戦をしていた。
尤も、火力が上がれば悲惨な戦闘がより悲惨になるがな」




