第64話 この船のお酒
なんか今聞いただけでもとんでもない情報ばかりなんですけど。
正直話を聞いているだけで疲れてきたな。
まだ昼前なのだが、酒でも飲んで全てを忘れたくなってきた……あ、この船には酒が積んであった。
ならみんなを昼に誘って酒でも出すか。
もう話し合いも今日は良いよね。
…… 片付けがまだだった。
人を呼べるための最低限しか準備していなかったので、上にある食堂までにそこら中に服が散らばっている筈だ。
俺はミーシャを呼んでとにかく見えない場所に服を片してもらうよう頼んだ。
これから向かう通路と食堂だけでいいので、できそうかな。
「守様。
ここから食堂にはどうやって向かうのですか」
普通ならばこの階から4つ上の階にある食堂にはエレベータを使うが、人数が多いので階段で向かうことにした。
前にこの船に乗っていた防衛隊の皆さんもさすがに移動中だったので、階段での移動は少なかったようだ。
片付ける服も少なくて済んだが、食堂にだけは多かった。
それをいちいちたたむのではなく、隣にお部屋にとにかく全部突っ込んでもらい急ぎ準備をしてもらった。
これをコピーした時間帯もよかったのか朝食のバイキングの終了まじかだったようで、食堂にいる人の数も思いのほか少なかったようだ。
まあそれでも相当服は散らばっていたのだが。
それよりも食べかけの食器類だ。
これもとにかくトレーに入れて隠して準備をしてもらう。
一通り片付けが終わったところで、みんなの前に行き食事の提案をしてみる。
「本船でも食事の準備ができるのだがいかがだろうか」
俺が追う言うとフランやケリーたちの目が変わった。
最近では携帯食や付近から採取した者ばかりの食事だったので、前に船で出した食事を思い出したのだろう。
ものすごい食いつきだった。
「守様。
船での食事って……」
「フラン、期待していいぞ。
軍艦と違いこの船はお客様を運ぶ船だ。
尤も豪華客船ほどではないが、それでもいいものは食えると思うから。
皆様もよろしいでしょうか」
全員が納得したようなので、また俺が先頭になって食堂に案内していく。
プロムナードを通り、中央にある階段を上っていく。
「守様。
ここって宮殿なのですか」
サーシャが階段をのぼりながら俺に聞いてきた。
確かに見た目は豪華に見えなくも無いか。
何せじゅうたんが敷きつけられている階段を上っているのだから。
でも、この階段って旅行者などが写真撮影くらいにしか使っていないとか聞いたことがある。
あ、エレベータ混雑時に若者たちは階段で移動することもあるとか聞いたな。
階段を歩いて上がるのもきついかと思われたのだが、この世界では当たり前の話なので、何ら抵抗なく皆は食堂に到着した。
しかし、食堂のあまりの大きさと、明らかに軍艦の食堂との雰囲気の違いによりフラン達も驚いている。
俺はみんなを連れてバイキングの料理が並べられているところまで案内してから、説明を始める。
「皆さま。
良いですか、まずそこの水道で手を洗ってください」
そう言って俺が手本を示す。
いや~ありがたいことにこういう場所の水道って皆非接触タイプなんだよね。
しかもシャボンまでもが勝手に出るタイプ。
俺はまずシャボンを出してから手をこすりその後水を出させる。
その様子に皆驚いている。
「守様」
エルムまでもが声を上げる。
「これも魔道具ですか」
「魔道具……そうだな、俺の世界での魔道具だ。
このように絵の描いてある下に手を出すと泡や水が出てくるので、最初に泡を出して手をこすってからその泡を水で流してくれ。
最後にこのペーパータオルで水を拭てくれればいいよ」
流しは3か所あったので3か所を使ってもらいみんな手を洗ってもらった。
その後はトレーの場所まで来てから一人一人にトレーを俺から手渡したら、またここでも恐縮された。
俺以外では使い方が知らないで、知る俺がするしかないじゃないかと思うのだが、他の者たちにはそんな道理は通らない。
全員が恐縮していた。
もう勘弁してほしい。
その後好きな料理をとってもらおうかと思ったけど知るはずもない料理ばかりなので、俺が適当に渡してテーブルに着かせた。
あ、そうそう、ここに来たのはビールが飲みたかったためだったので、俺は大人の分だけと言ってもフランやミーシャ、それにドーラだの三人以外は皆20歳を超えている。
だが、正直サーシャだけは微妙なんだよな。
年齢だけは先ほど聞いた限り20歳を超えているけど、見た目がJKに酒を出していいものか。
フラン達にも飲ませないので、今回はその4人は別の物を考える。
フルーツジュースでもいいけど、仲間外れともとられるとな~。
俺はあたりを見渡すと、良いものを見つけた。
さすがに車を運ぶ船だけあって、あったよノンアルコールの物が。
確か、日本ではノンアルでも未成年はダメだとかあったけど、この際いいか。
梅酒のノンアルを4人に配った。
ノンアルのビールもあるが、アルコールの無いビールを、ビールを飲んだことのない人に出しても苦いだけだ。
準備ができたので、簡単に説明しながら食事を始めた。
「飲み物なんですが、これは私のいた世界でのお酒です。
アルコールは弱めですが、お酒ですので、20歳未満の方には別の物を出しております」
「あの~」
「ええ、ハイエルフのサーシャさんが20歳を超えていることは先ほど紹介の際にお聞きしておりますが、うちのフラン達と同じものを用意しておりますからご勘弁ください」
俺が『うちの』なんて言うものだからフランは非常にうれしそうにしている。
まあ、機嫌が良いのならば、そのままでもいいか。
「お酒も他の飲み物もお代わりがありますからおっしゃってください。
ではいただきましょう」
俺はまずビールを一気に御飲み干した。
「プハ~」
親父臭いと言われそうだが、本当に久しぶりのビールだ。
もともと酒好きという訳でもないが、それでも社会に少しばかりいたこともあって、それなりには酒を飲んでいた。
俺の飲みっぷりを見ていたドワーフや男性陣がビール口にする。
「少しに苦いが、守様の言われるように酒精が弱いとは思われないが」
「そうですか。
私のいた世界ではこれなんか弱めの酒ですが、いかんせん量が飲めますので、結果的にはしっかりと酔いますね」
「そう言われるのならこれより酒精の強い酒ってあるのですか」
そこから特に男性陣と酒について語りながら昼食を摂った。




