第59話 思いのほか多かった
そんなことを考えているとケリーから無線が入る。
「守様。
この後如何しましょうか」
「おお、ケリーか。
とりあえずその船からこちらに移ってもらうが、人数はわかりそうか」
「はい、この船だけは人数を確認しました。
かなり詰め込んでいたようでこの船には530名の人が乗っています」
「その船だけで500名か。
ボートでは無理だな」
「どうしますか」
「この船をそちらの船に横付けするから伝えておいてくれ。
横付け後に直接移ってもらおう」
「分かりました」
「あ、この船にも人手が欲しいので、その船からでもいいが2~3人ボートで寄越してくれないか」
「分かりました。
私が二人連れてそちらに向かいます」
「ああ、乗り口は向かって右側の左舷前方に梯子が降りているからそれを使ってくれ。
大きいのでそこ以外からは乗り込めないと思う」
「了解しました」
それからしばらくしてケリーが階段を使って操舵室の入って来た。
「守様。
本当に神様からの船ってすごいですね」
一緒に来ていた部下の騎士たちも驚いている。
「本当にすごい大きさですね。
さすがカミサマって感じですか」
ああ、あのカミサマの所業としたらあたりを引いたようだ。
尤も、部下の神様が苦労でもしたのだろうが、そんなことは今は良い。
「さて、横付けしても、船の大きさが違いすぎるな……あ」
俺は梯子のそばにいいものを見つけた。
これも水先案内人を洋上で拾うためのもので簡易型のタラップがあるのだ。
タラップがあるのならばそれを使ってくれればいいのにと思ったが、ゴムボートからだと高さがきつい感じのようだ。
「あれを使おう」
周りが驚いているが、俺は構わず船を動かすことにした。
「船を動かすから、周りをよく見てくれ。
特に向こうの船と横付けするからその距離に注してほしい」
「わかりました」
俺はまずフェリーを帆船に平行となる位置まで持っていき、大型船ならではの秘密兵器でもあるサイドスライダーを操作する。
「え、え、船が横に移動してませんか」
デッキで出て外を監視していた騎士が驚いて声を上げていた。
「ああ、ここから横移動で船に付けるから」
しかし、いくらサイド側にもカメラがあるからと言って、初めての船で横移動して他の船の横付けするなんて至難の業だ。
これも神様からの祝福のおかげか、操作を理解しているだけでなく習熟している感じだったのでできたようなものだ。
うん、こればかりは感謝しかない。
「守様。
あと2mを切りました」
帆船側を監視している騎士が距離を教えてくれる。
俺は、その声を合図にさらに速度を落とした。
帆船までの距離が1mを切ったところで動力を停めた。
フェリーはまだゆっくりとだが横移動している。
でも、横に動くので抵抗も大きく、横移動していたフェリーはすぐに慣性での移動は止まる。
距離にして30cmくらいか。
これなら大丈夫だ。
「悪いが誰か俺についてきてくれ」
「守様。
ここには何名を残しますか」
「そうだな……一人いればいいかな。
誰もいなくとも問題は無さそうというか、操作できる乗員の数が圧倒的に足りないんだよな俺たちには」
「一人でいいのなら私が残ります」
俺と一緒に最初にこの船の乗り込んだ騎士が名乗り出てくれた。
「そうか、悪いが頼む。
デッキから周りの監視をよろしく」
「わかりました」
俺たちはケリーとその部下を連れて簡易タラップのあるメインデッキまで下りて行った。
簡易タラップの操作パネルの前まできたらケリーが聞いてきた。
「ここからどうやってあの船に移るのですか」
もう一人の騎士も聞いてくる。
「あの、梯子でも使うのですか」
「他に手が無ければそうなっていたけど、この船にはいろんな装置があるんだ」
「装置……ですか?」
「うん、そうだな、俺の世界の魔道具とでも思ってくれ」
「魔道具ですか」
「ああ、今回はこれを使う」
俺はそう言ってから簡易タラップの操作パネルをいじり始めた。
これも、操作パネルを触ると操作の仕方がインストールされてくる。
うん、そうだな。
もうこれは完全に神様たちからの祝福という名の呪いかもしれない。
いや、こればかりは呪いでもないか。
とにかく俺は操作パネルを使い向こうの船のデッキにタラップを下ろした。
完全に向こうの船のデッキにタラップが下りるのを確認した後、俺はケリーと一緒にタラップを使って移った。
すぐに俺たちの周りに人だかりができ、その人だかりをかき分けるように一人の女性が俺の前に来た。
「守様、彼女がこの一団の代表のような方です」
「そうか、なら挨拶をしないとな」
俺が彼女に向かって挨拶をしようとしていたら、横からケリーが前に出て俺のことを集まった人たちに紹介し始めた。
「この方が、我らの主である、使徒様で大魔導士の守様だ。
そして、皆を魔物たちから守ったのも守様のお力の一部だ」
ちょっとかなり大げさに俺のことを紹介している。
思わず『やめて~』って叫びそうになった。
すると、代表と呼ばれた女性はその場で大粒の涙を流しなき始めた。
「神により天から遣わされた使徒様であらせられるか。
これで、これでお嬢様の旅も終わる……」
「は? どういうことだ」
俺の疑問も周りの歓声にかき消されたのか伝わらない。
ケリーたちがどうにか周りを落ち着かせた。
「とにかく、ここでぐずぐずはできませんので、順番に一人ずつそこの階段からあの船に移って下ささい」
「良いか、お前ら、もうこの船には戻らないつもりで忘れ物の無いようにな」
先ほど涙を流していた代表者も、ケリーに協力して周りを先導していく。
俺がここに着くまでに話がついていたようだ。
誰もいなくなった船を離れて、残りの二隻も同様に回収していく。
どの船も代表者の姫と呼ばれた者とケリーとで話がついていたのか本当にスムーズに移乗は終わるが、それでも昼は過ぎてしまった。
まあ、俺たちが拠点を置いている浜から急げば数時間の距離にあるので、今から帰れば日没前には拠点に着けるだろう。
全員が移ったことを確認後に、俺は今まで乗っていた船に対して、乗りそびれがいないことを確認してもらい、俺たちだけで一足早くフェリーはこの地を離れた。
このフェリーは巡航速度で23ノット強出ているが、できるだけ拠点での時間も欲
しかったこともあり最高速度で船を走らせることにした。
それでも巡視艇には到底及ばず25ノット前後しか出せない。
頑張ればもう少し出せそうな気もするが、無理してエンジンをダメにするくらいならば我慢することにした。
なので、先ほどの地で最終の確認を済ませた船にも途中で追い抜かれた。
俺たちについて走行すると言ってきたが、俺はフラン達に状況の説明のために先に戻らせた。
最初に拠点を置いた場所ではなく、捕虜たちがいる浜に向かうことにした。




