第56話 ついに見つけた
さてさて、俺はドローンを飛ばして先方に確認するか。
ケリーがゆっくりと問題の壊れた船団に向け船を走らせている。
「お~い、大丈夫か」
俺の呼びかけに、すぐには返事が無かった。
俺は、懲りずに続ける。
「もしかして、先の魔物を横取りした格好になっていないよな。
あれの所有権を俺たちが主張しても問題ないよな」
そうすると、返事のような感じで『助けて頂き感謝する』って感じに答えてきた。
尤も声も小さく、普通ならば聞こえないが、俺たちは近くに飛ばしているドローンを使って声を拾っているので聞こえている。
「それよりも助けは要るか?」
すると今度の返事は俺の予想を違えてきた。
『その前にそちらの身分を聞かせてほしい……』
『姫様。
もうこちらは……』
「けが人がいるのならばすぐにでも助けるが……」
『けが人はほとんどいない。
それにケガした者たちもこちらで十分に治療ができるから問題ない……が、船が持ちそうにないな。
諦めるか。
悪いが救助を要請する』
『船が先の魔物との襲撃で壊されたために沈みそうなんです。
お助けください』
先ほど横から姫と呼んでいた者の声だった。
「すぐに沈みそうか」
『いや、今日一杯くらいは持つだろうが、ここから動けい以上無理だろう』
「こちらの船に移すしかないか……ちなみにそちらの人数はわかるか。
わかるのならば教えてほしい」
『正確には無理だ。
皆着の身着のまま逃げてきたものたちばかりだ。
私の部下たちだけでも1000人はいたはずだが』
ここでまた1000人以上の要救助者が発生か。
どうしたものかなって、この船に1000人の乗船はさすがに無理だろう。
救助ボートを出して、イヤイヤ、それならピストン輸送もこの霧の中では次に戻るときに発見できるかどうか……
すると一人の騎士が艦橋に走り込んできた。
「守様。
霧が晴れてきまし」
「何??
なんでいきなり霧が晴れるんだよ」
そもそも霧の発生するような気象条件でない中での濃霧だったのだが、これまたいきなり晴れるっておかしい以前の話だ。
するとまだ、何か言いたそうにしている騎士が俺の報告してきた。
「この霧の先に大きな船のようなものが」
「霧の先だって……」
「はい、魔物を回収に向かった騎士の話ではこの船と同じような感じの船のようですが……」
「どうした?」
「この船を大きいなとは思いましたが、その大きさが尋常ではないそうなんです。
この船の比ではないそうです」
「尋常ではない大きさの船だというのか」
「はい、徐々に霧が晴れますので、ここからでももうじき見えるようになるかと」
「え?
だってレーダーには反応が無かったのだろう」
「それが……守様」
今レーダーを監視していた騎士の一人が声を出す。
「急にすぐ傍に反応をとらえました」
「急に反応を捉えただと」
『クソ~、あのカミサマやりやがったな』
思わず声に出したのか俺の独り言に周りがドン引きしている。
現状から考えられることは、これはイベントだったということだ。
霧の中での魔物との戦闘で勝つことで船が見つかるというイベントだったようだ。
だいたい、霧の中で視界が遮られた状態でレーダーも使えずに船を探せってムリゲー以外にないだろうに。
そうならそうとヒントくらい神様も教えてくれてもいいだろうに、二人いや二柱はグルだったのかと疑いたくもなる。
……あ、神様ってあのトンデモカミサマの部下のようだったから、グルというのも当たり前か。
「守様……」
ドン引きしている騎士たちを代表してかケリーが声をかけてきた。
「あ、悪い、独り言だ。気にするな。
それよりもあっちだが、誰かを派遣して状況を確認したいのだが、頼まれてくれるか」
「はい、私と数名連れてボートで向かいます」
「無線を忘れずにな。
何かあれば連絡してくれ。
もし危ないようなら遠慮なく海に飛び込め。
すぐに救助に向かう」
俺が海に飛び込めと言った瞬間騎士たちの間から独特な空気が流れる。
あ、もともと丘の人たちだから泳ぎが苦手なのか。
しまったな。
救命胴衣のことを忘れていたよ。
本来ならばボート作業時には絶対に着用しなければならないやつなのだが、あれって結構邪魔なんだよね。
この船に積んであるやつは防弾性能まで持たせてある奴だから初めから膨らんだような形をしているので、実際にボート作業をする時には邪魔でしかない。
ミーシャを助けるときから慌てていたこともあるが、面倒だったのと邪魔であることからつけずに今まで作業をしていた。
俺が忘れていたこともあり、ケリー達にも装着を義務付けていない。
しかし、ちょうど良い機会だ。
俺は艦橋後ろのロッカーから救命胴衣を取り出して、まず自分でつけてみた。
うん邪魔だな。
もし、運が良ければこれから向かう船には飛行機でも使われるベストタイプを見つけることができるかもしれない。
飛行機などで、使用時のみに膨らませる奴だ。
それには防弾性能は無いだろうが、別に構わないだろう。
まあ、今は目の前にいる騎士たちにこの救命胴衣を着けさせるところからだ。
「これは、俺が着けているようにみんなにも着けてもらう。
正直邪魔ではあるが、これを着けていれば海に落ちても問題ないし、多少の攻撃にも耐える……そうだな、水に浮く鎧とでも思ってくれ」
「これを着けろと」
「ああ、俺が忘れていたから今まで着けてこなかったが、本来ボート作業時には装着が義務付けられているものだ」
「これって、人数分あるのですか」
「ああ、この船の定員、確か60名だったか、その数はあるからこれからはなるべくつけるように」
「なるべく?
義務と言いませんでしたか」
「ああ、俺のいた世界では義務化されていたよ。
でも、この世界ではそんなルールは無いだろう」
「そもそも水に浮く鎧なんかありませんよ」
「『郷に入れば郷に従え』という言い伝えが俺の国には古くからあったんだ。
この世界のルールに合わせようかと思うが、それでも便利な物や安全に関するものについてはできるだけ俺のいた世界に合わせようかと思う。
俺は海の男だから海に落ちても泳げるから着けてこなかったというのもあるがケリー達は泳ぎは苦手なんだろう」
「苦手というよりも、誰も泳いだことがありません。
私たちの国では漁師や一部の者しか泳げませんから」
「船乗りなら泳げるだろう」
「船乗りも一部の者しか泳げません」
「まあ、良いか。
これを付けての訓練はしていなかったが、これなら絶対に大丈夫だ。
俺が保証するから躊躇なく危なくなったら海に飛び込め。
いいな命令だぞ」
「わかりました、守様。
ですが、海に飛び込むようなことは目の前の船が突然沈まない限り大丈夫でしょうね」
ケリー、それをここで今言ったらダメなやつだ。
俺の世界ではそれはフラグと言われる強力な呪いだから。
俺はケリーの言葉に触れずに、フラグをへし折る気持ちで全員に救命胴衣を手渡し、その場で装着させて確認した。
「大丈夫のようだな。
では向うを頼む」




