第53話 捕虜の扱い
準備ができたのを見計らって俺は騎士たちに護衛をしてもらいながら敵さんの船に上がる。
甲板上に並べられたけが人は酷いものだった。
士官らしい者たちは一応に手当てがされているようだが、明らかに下級の船員にはそれすらされていない。
俺は下級の船員から重傷者を選んで俺の船に運んでもらった。
酷いものから順番に治療室に運び手当てをしていく。
治療が終わったものから順に後部デッキの格納庫に連れて行き、そこで寝かしてある。
結局ほとんどが裂傷の治療だったので、消毒後に接着剤で終わり。
それでも全員を見るのに一晩掛った。
一応感染症予防のための抗生物質も与えておいたので、全員の命だけは助かったようだ。
翌日格納庫に見舞いに行くと驚くことに全員から感謝されたのだ。
俺は敵だったはずにもかかわらずにだ。
症状の軽い者たちから解放したいが、いかがなものか。
ちょうどフランが船に来たので、そのあたりも相談してみた。
「守様。
守様の言いたいことはわかりました。
私が一人で全員と面接したいと考えております」
「危険ではないか、それに敵だったのだろう」
「心配は御無用に。
ケガした者たちは皆が下層の者ばかりでしょう。
もしかしたら奴隷も多くいるやもしれません。
私の敵は確かにアンタレス教国の者ですが、それは上流と言われる階級の属する者たちです。
庶民、それも下層の者たちには害はないでしょう。
それも、面接すれば教国への忠誠心もある程度わかりますから」
「わかった、俺の付き合うか」
「いえ、大丈夫です。
守様もお忙しいでしょうから、その代わりケリーに護衛を選んでもらいますから安心してください」
フランはすぐにケリーを呼んでけがを治療した捕虜たちの面接を始めた。
俺は、任せられるとあるので、ここにも拠点を築けるようにテントなどを倉庫から浜に運んだ。
前に相当な数を落としたままだったはずなのに、神様の言った通り補給扱いになっているのか、翌日にはしっかりと倉庫に新品が収まっているので、俺もすべを運び出した。
しかし、浜には500名になるハートポンドから連れてこられた人たちで結構込み合っている。
体力的に弱っている者たちも少なからず出ているようだが、そこはエルムが学生を使って治療をしている。
俺はテントを運んだあとから、経口飲料水なども運び、治療の手助けを行う。
また、携帯食料も段ボール箱ごと運んで、とにかく難民キャンプの設営を急いだ。
しかし、いきなりの増員、それも一挙に500人以上だ。
捕虜も入れるとその倍近くが増えたのだが、俺たちにそれらを扱えるほどの力量は無い。
せめて味方でない捕虜はどうにかしたいが、それもままならないだろうし、どうしたものか。
食料だけはどうにか、今の人数くらいまではあの船から運び出せるが、それだって限度もあるだろうからこれ以上人が増えると無理だぞ。
できるだけ早急に生活の基盤だけでも整えないとまずい。
フランは面接を終えると奴隷だった者たちだけを浜に上げた。
「彼らは問題ないのか」
「ええ、かれらは奴隷でしたので。
それに心根も良い者たちばかりです」
「それならばよかった……あれ、ひょっとしてケガしていない者たちの中にも奴隷っていたりして」
「ええ。たぶんいるでしょう……ですが、命を助けられたのと、船を襲ってきたと感じている者とでは考えもおのずと違ってきます。
それに、国からも人が多く来ましたし、無理に仲間を集わなくとも」
そういえばそうだな。
捕虜の件はそのうちフランたちの国の植民地にでも連れて行けばいいか。
フランとは、捕虜たちの今後について話し合った。
とりあえず捕虜たちはそのまま乗っていた船に押し込めることで猶予を貰う。
その猶予で今後について考えようというのだ。
「捕虜たちのことは分かったが、残りはどうする。
前に助けた人を頼って植民地にでも連れていくか」
「捕虜についてはいずれ植民地に連れていくしかないでしょうが、残りの人たちについてはここで建国の準備をさせます」
「え?」
「あ、一応希望は聞きますが、前に助けた人たちはそのつもりで既に動いておりますから。
残りの人たちについても同じようにしていこうかと考えております」
「なら任せても大丈夫か」
「守様はいかがしますか」
「俺は付近の探索かな。
それに神様からのもらい物である船も探さないといけないしね」
「そうでしたね。
こちらは私たちにお任せください」
「ああ、明日以降、無線が届きにくくなるかもしれないが少し足を延ばして探してみるよ。
食料などは置いておくから大丈夫かと思うが、捕虜たちは大丈夫か」
「ええ、ケリーにも言いましたがボートを降ろさせましたので、問題ないかと。
もしあいつらが攻めてきても、人数的にもこちらの方が多いいですから。
それに夕方には守様も戻られますよね」
「ああ、そのつもりだ。
とにかく神様との約束の船を探さないとな」
俺はフランとの会話を終えて船に戻る。
戻る船にはケリーと昨日とは別の騎士が一緒についてきた。
それに今度はミーシャも一緒だった。
「ミーシャ。
フランはいいのか」
「ええ。守様。 フラン様から言いつかりましたので」
「それなら、今日の夕食も頼んでも良いか」
「ええ、任せてください」
とにかく今日も色々とあったな。
大取物があると、どうしてもその日だけでは済まずに翌日まで掛かるな。
まあ、期限のあることをしているわけでもないのでかまわないが、どうしても日本にいた時の癖が抜けないというか、仕事はさっさと済ませないと気持ちが悪い。
それもこれもいい加減なカミサマのせいだ。
船をよこすのならば俺と一緒によこせばいいのに何で探させるようなことをするかな。
そういえば前の勇者の時も探させて結局使われなかったというのに懲りていない。
とりあえず捕虜たちの処遇もどうにか片付いたことだし、一応船の周りをボートで監視するらしいが、まあ交代でするので問題ないらしい。
どんどん仕事を任せるようにしているが、よくよく考えると俺の仕事って船を探すことだけだったはずだ。
仲間がいないとつらいので、困っている人を助けるのは一向にかまわないのだけれど、建国とか面倒なことが増えてきているような気がする。
フランが張り切っているので水を差すのは控えるが、そう言えばエルフの伝説でもあるプレアデスの姫を探すというのもあったな。
夕食を食べながら今後についてケリー達に話しているが、だいぶケリー達も船に離れてきているので俺も少しは楽ができそうだ。
まあ、とにかく付近の偵察と、船の探索だな。
もうこれ以上の面倒は避けたいというのが本音かな。
翌日も朝から食料などを倉庫から出して浜に上げていく。
現在最初に拠点としておいたところにも人を配置しているようだが、ここに捕虜たちもいるので多くの人がここで寝起きしている。
はっきり言ってテントが足りない。
今日も全部ではないが少しテントも下ろしておいた。
全部降ろすには時間も無かったし、今朝もフランやエルムと打ち合わせをした後すぐに船を出した。




