第52話 敵船の拿捕
俺はケリーにそう説明してから俺はもう一度マイクを使って相手に呼び掛けた。
「降伏に意思があるとお見受けしたが、降伏するならば、船長は副長を伴ってこちらに来てもらおうか」
俺がそう言うとすぐに向こうに変化が現れた。
と言ってもドローンで見ているからわかる変化だが、船長が部下たちにカッターとかいう船を降ろさせている。
30分くらいだろうか。
それくらい待つとカッターに船長が乗り込みこちらに向かってくるのが見えた。
それからさらに待つこと20分でやっと俺の船のそばまで来た。
「デッキで船長と話してこようか」
まず船にも上げずに降伏に意思を確認する。
俺はケリーを連れてデッキまで出た。
「貴様の言う通り我々は降伏する。
捕虜としての待遇を要求する」
まだそんなことを言うのか、大した玉だ。
でも言っていることは当たり前のことなのだがなんか釈然としない。
俺もこの世界に毒されたのかな。
「おいおい、先ほどそちらの方だったけか、勝者は何をしても許されるようなことを言って無かったか」
「そ、そんなことを……クソ!」
「どうしろというのだ」
「そうだな、まずはハートポンド商業連合の者たちの解放かな。
だがここではできないので移動する」
「貴様がマストを折ったのですぐには無理だ」
「いや、この船で曳航するから無駄な抵抗などするなよ。
こちらはいつでもお前らを殺せるのだからな。
そうだな、まずは船長はこちらに来てもらおうかな」
俺はケリーに頼んでロープで船長一人を引き上げてもらった。
そのまま船長を後部デッキに連れて行き、船長に指示を出す。
「船首から曳航のための舫を垂らさせろ。
副長にでも命じてやらせればいい」
「俺はここで人質となるのか」
「そんなところだ」
そこから2時間。
カッターを戻すのにも時間もかかり、たかが舫一つ出させるのに2時間かかった。
その間、船長は騎士たちに見張らせて後部デッキから動かさない。
2時間もあれば無線でフランとも相談できた。
曳航している船をそもまま拠点を置いているあそこに運ぶのは安全上まずいというので、少し先にある湾内に運ぶことにした。
そこに浜で待機している兵士や騎士たちも移動してもらい、俺たちを待ってもらう手はずを整えている。
浜にいる連中は島の中を移動するらしいが、それでも連絡から2時間以上あるので問題ないそうだ。
一部は浜からボートを使うとも言っていた。
そんな課なら俺たち彼女らの敵であるアンタレス教国の船を曳航して、湾内に入ると待っていた連中から歓声も上がった。
相当恨まれているようだ。
俺は船を停止させて、アンタレスの船にも錨を降ろさせた。
すると浜からボートが近づいて来る。
「守様」
そう呼び掛けてきたのはフランだ。
それにエルクさんも一緒だ。
どうやら、ハートポンド商業連合から連れてこられた人たちが心配だったようだ。
「どうした?」
「その……」
「ああ、すぐにハートポンド商業連合から連れてこられた人たちを浜に上げよう。
こちらからもボートを出そう」
そう言って、全部で5艇のボートを使いアンタレス教国の船からハートポンド商業連合から連れてこられた人だけを連れていく。
それでもハートポンドの人たちの人数が人数だ。
そう簡単には終わりそうにないし、何もない浜に降ろしても行き場もないだろうにと思ったら、俺が浜に置いてあった仮設テントを数張りこっちに持ってきていた。
とりあえずここでの基地本部とするようだ。
結局奴隷として連れて行こうとしていたハートポンドの人たちはおおよそ500人もいたのだ。
あのフリゲート艦の乗員は士官下士官を含め450名になるそうだからその倍近くを載せていた訳だ。
前に助けた帆船、あれって、2本マストのガレオンではなくてなんと言ったか、スクーナーとか言っていたかな、そんなものだったか。
中型の使い勝手の良い船のようだが、乗員として載せられる数も目の前の船よりは少ない。
だからなのか、流石に目の前で500人近く降ろされるのを見ると、少々引いてしまった。
「守様、この後いかがしますか」
「おろしたハートポンドの人たちはフランに任せるしかないかな。
まだあの船には同じくらいの人が乗っているんだよな」
「そうなりますかね、船長、どうなんだ」
ケリーが俺の横で、捕虜としている船長に聞いている。
「ああ、俺の部下は423名になる。
尤もあの戦闘でいくらかは……」
俺の撃ちこんだ銃弾で船内に爆発を起こしたようで、いくらかの死人は出ているようだった、あの船にはけが人もいるはずだよな。
「ケガした者たちもいるよな」
「ああ、あの時大砲のそばにいた連中は大なり小なりのけがをしていたな」
「副長にここから命じてくれ。
今度は怪我人をデッキに並べてほしい」
「どうするのだ。
ケガ人は不要だとでもいうのか」
あ、この人勘違いしている。
俺が怪我した人たちを船から海に向け捨てるとでも思ったのかなって、ひょっとしたらこの船長も、そんなことをしたことがありそうな感じだ。
自分がしでかしたものだから他もするとでも考えたのだろう。
「俺がそんなことするかよ。
ケガの具合を確かめたいだけだ。
酷いものならばこちらで治療しても良い。 とにかく指示に従え」
船長は渋々ながら大声で副長を呼び出し、俺の指示に従うよう命令を出した。




