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第49話 付近の偵察


 

「それで、守様はこの後いかがいたしますか」


「そうだな。

 この地での整備を手伝っても良いが、海図も手に入ったことだし、付近の偵察だけはしておきたいかな」


「でしたら、ここは私が守りますから、守様はその……偵察ですか、それをなさってはいかがでしょうか」


「大丈夫か」


「ええ、問題ありません。

 エルム先生やその生徒さん、それに兵士の方もおりますし。

 それに船とはいつも連絡が取れますよね」


「ああ、無線か。

 そうだな、無線がつながる範囲を偵察する分には問題ないかな。

 明日から二手に分かれての作業なるが、頼めるかな」


「ええ、私に任せてください」


 無線での連絡か。

 短波無線ならばそれこそ地球の裏側にでも届くと聞いたことがあるが、あいにく俺の船には積んでいない。

 ならば精々見通し距離である2km、いや、マスト最上部にレーダーと一緒に無線アンテナもあることから10kmくらいならば問題ないだろう。

 ここに拠点を置くならば、それこそ高い木の上にでもアンテナを設置すれば、20kmくらいの範囲で自由に活動できるはずだ。

 まあ、そのうち考えるとして、今は助けた船から頂いた海図の正確度の確認が先か。

 あ、助けるときに向かていた島影?も調査しないといけないが、それも急ぎではない。


「この先どうなるかはまだ考えていないが、明日は無線の繋がる10km範囲で調査することするよ」


「はい、わかりました。

 守様、こちらはお任せください」


 ちょうど中断していた気になる影の調査もあることだし、まずはこの世界の海図と照らし合わせながらその陰の辺りについて調べることにした。

 

 とりあえず、フランがこの島に残り助けた人たちの世話をするというので、夜も島に残るらしい。

 そうなると、フランに着いたメイドの二人はもちろん

 騎士たちも島に残るようだ。

 俺は、船も気になるし、何よりカメラに収めた航海日誌も気になるので、ボートで船に戻ることにした。

 俺だけが船に戻る物かと思ったらケリーが三人の騎士を連れて船に俺と一緒に来るらしい。


「え? フランの警護はいいのか」


「ええ、フラン様からも守様に付いてお守りを命じられました」


「あの船にいる限り、大丈夫だとは思うが、まあいいか。

 なら行こう」


 この浜から、すぐに見える所に留めてあるが、あれ以上浜には近づけない。

 砂浜なのが救いだが、そうでなければもっと遠くに止めないと船が壊れる恐れがある。

 まだ、この世界の潮の満ち引きの具合が分からない。

 今のところ満ち引きはあることは分かっているし、それも常識の範囲で収まっている。

 しかし、大潮などの時には数メートルもの差があっても俺は驚かない。

 だが、そうなると今ある場所ならば確実に座礁する。

 砂浜だからたとえ着座しても潮が満ちれば離礁できるので、ギリギリまで近づけてはいる。

 そうでないととにかく面倒だ。

 本当は着岸できればいいのだが、そのうち桟橋でも作ろう。


 船に戻ると、ケリーが騎士を一人交代で艦橋に残すと言ってくれたので、俺は任せることにした。

 ありがたいことだ。

 別にレーダーで見た範囲でも船影を見つけることができていないし、風も安定していることから、少なくとも数時間の単位で、船かここに近づけない。


 それだけは正直助かっている。

 この世界に動力船が無いだけで緊張の度合いが違ってくるのだ。

 いつどこから高速でミサイルが飛んでこないとも限らない世界から考えるとずいぶんのんびりとした世界だ。


 もっとも、この世界の方がより血なまぐさいが。

 何せ、目のまで人が怪物に食べられるような世界なのだ。

 あれ見た時には少し引いたが、荒事に向いていないフランでさえ、大した驚きは見せていなかったな。

 それよりも怪物を見た時の方が驚いていたようだ。

 確かシーサーペントとか言っていたような。

 肉はうまかったけど、本当にファンタジーの世界に来たと実感してきた。


 俺は部屋に入り、カメラに収めた航海日誌を読んでいく。

 特にシーサーペントに襲われる数日前から入念にだ。

 どのあたりからどこに向かってなのか、それにどういう感じでの航海なのかなどが読み取れれば今後に参考になる。

 それに何より神様から俺に与えられたという船もまだ見つかっていない。

 神様が言うには、この辺りだと言っていたはずなのだが、そのあたりの発見でもあれば必ず航海日誌に記載もあると俺は考えていた。


 読んでいくうちに分かったことは、ここから北にこの世界では割とメジャーな航路がありそうだということだ。

 あの助けた船もそのメジャーは航路を使って庶民地に向かっていたようなのだが、メジャーの航路を使って逃げ出すというも俺には理解できなかった。


 敵から逃げるのに、発見されやすい航路を使うなんて自殺行為だと思うのだが、レーダーも無い双眼鏡すらない世界ではどうにかなるものなのか。

 しかし、中断していた調査海域までがギリギリだと思うので、そのメジャーな航路までは今回行けそうにないな。

 この辺りの調査を先に済ませたら、そのあたりについてフランと相談でもするか。


 翌日、一度浜に上陸してから向かうことにした。

 昨夜から船に居るのは俺の他にはケリーとその仲間たちを含めても5人しかいない。

 この世界に飛ばされた時には俺一人しかいなかったことを考えると5人もいればとも思うが、騎士たちも船の扱いに慣れてきたこともあり、もう少し調査に仲間が欲しかった。


「おはようございます、守様」


 浜に上がるとフランが早速挨拶をしてきた。


「おはよう、フラン」


「守様、今日は……」


「ああ、前に船を助けたことで中断しているレーダー上で見つけた影を調査してみようかと考えている」


「そうですか」


「ああ、そのうちもう少し先も調査したいと考えているのだが」


「それは……」


「ああ、何でもその先には割とメジャーな航路があるようなんだ」


「メジャーな航路?」


「ああ、前に船長に見せてもらった航海日誌にはフランの故郷から各地に向かうのに便利は航路、船の通る道のようなものだな、それがあるようなんだ」


「それを今日……」


「いや、その航路まではここからだと無線が通じなくなる距離になりそうなんだ。

 今日は、前に中断した辺りの調査で済ませるよ。

 それに航海日誌には気になることも書かれていたから」


「気になることですか?」


「ああ、あの時倒してシーサーペントだったけか、それから逃げてあそこまで来ていたようなんだが、その少し前に別の船を見たともある」


「別の船?」


「どうもフランたちにとっては敵だったようなことが書いてあった。

 その船からも逃げるためだったとあった。

 その敵だった船も気になるからそのあたりも調べてみようかと。

 まあ、あれから数日が経過しているから見つからないとは思うけど」


「敵ですか。

 私たちを捕まえた海賊ですかね」


「いや、それはわからないが、多分それは無いだろう」


「なぜですか?」


「同じようにマストを折られた船をここで修理しただろう。

 それを見ていたら、あの海賊も、あそこで漂流なんかで何もしていないとは考えられない。

 応急的だとしても何らかの修理をしてあの海域から逃げ出すだろう。

 俺ならそうする」


「守様」


 ケリーが俺を呼ぶ。

 ケリーの部下たちの準備ができたようだ。


「では行ってくるよ」


「あ、守様。

 今日一日私の手伝いをしているミーシャをお連れください。

 私との連絡係でもさせれば良いかと」 


 そう言って、ミーシャを俺の方に押し出してきた。


「それは助かる。

 なら行こうか、ミーシャ」




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