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第46話 始まる曳航作業



 フランから無線を貰ってからは話はどんどん進んでいく。

 まあ、今向かわせているフランたち以外に遭難した船に人を送る必要も向こうからこちらに運ぶ必要もなかったことが幸いしたのか、それからは作業、それも向こうのプロの船乗りからしたら慣れた作業のようで、こちらの船を近づけただけですぐに舫が渡されてきた。


 問題はこちらだ。

 後部デッキには当然他の船を曳航するための装置類は完備されているのだが、人手が必要となるのだ。

 で、その人手なのだがはっきり言ってこれを使えるのは俺一人。

 当然、先ほどまでシーサーペントと格闘していた騎士たちには手伝ってもらったのだが、それでも足りない。

 何より、慣れない作業の連続だ。


 俺も使い方は知っている。

 そう知っているだけで、熟知しているわけでもないし、実際に使ったこともない。

 あ、学生時代に訓練で一度だけ使ったことがあるが、俺一人で使った訳でもないので、少々てこずった。

 最後には、マニュアルを無視して、舫を結べる場所に無理やり舫を結ぶといった力業でしのいだ。


 まあ、距離にして20kmも無いのだ。

 それまで持てばいいし、舫が解けなくとも最悪切ることも簡単にできる。

 あ~あ、完全に力技だな。

 俺は、少々落ち込んだが、作業を終えてからすぐにフランに無線で拠点を置く浜に向け船を動かす連絡を入れる。


 さすがに今度ばかりは俺が操船していく。

 非常にゆっくりと船を動かし、徐々に速度を上げていく。

 後部デッキには無線を持たせた騎士を二人残して、無理やり繋いである舫の様子を見張らせているので、連絡を取りながら速度を上げた。


 それでも曳航作業中ということもあり10ノットも出てればいい方か。

 シーサーペントと格闘していた船を見つけた場所までは巡視艇の巡航速度で向かったために、時間にして大したことも無かったが、さすがにその距離をゆっくりと低速での移動で戻るとなると時間ばかりがかかってしまう。


 午前中から始めた今日の作業だが、そのほとんどの時間を曳航作業に費やしたような感じだ。

 なので船を浜まで曳航したのが終わるのは夕方近くになってしまった。

 今日はシーサーペントと格闘していたこと以外では曳航だけで一日が終わってしまった。

 浜まで持ってきたので、あとの修理を任せようかと思ったのだが、フランが船長を連れて戻って来た。

 

「守様。

 船長の一時乗船をお許しください」


「ああ、乗船を許可する」


「守様、改めまして、あの船の船長を紹介します。

 こちら、私の父親の商館で働いておりました船長のヘリックです」


「ヘリックと申します、船長。

 この度はお助けいただき感謝いたします」


「ああ、ここでの話もなんですので、こちらに」


 俺は船長をフランと一緒に船内に案内していく。

 

 船員食堂に連れて行ってもと考えたのだが、そう言えば士官食堂もこの船にはあった。

 ほとんど使われることは無かったのだが、こういう打ち合わせにはもってこいのスペースだ。

 実際に、この船が地球にあった時には、船長と士官との打ち合わせはここで行われていたのだ。

 当然士官だった俺もここで食事をしても問題は無かったのだが、傭兵になったこともあり、堅苦しいことを嫌い、俺はいつも普通の食堂で食べていた。

 数人の士官だけで、あの場所での食事は精神的に疲れることもあるので、特別なことでもない限り遠慮していた。

 だからという訳でもないが、フランたちを助けた後は一切使っていない。

 存在すら忘れていたくらいだ。


 そこに連れて行く途中で、無線が俺を呼び出してくる。

 今度は誰だ。

 浜にいるエルムからなのだが、ケリーも一緒のようで、二人の声が聞こえる。


「どうした?」


 ケリーはフランが船から降りてこちらに来る時に同時に、浜に降りていたようだ。


「守様、ケリーから相談があるそうなのですが」


「ケリーは傍に居るのか」


「はい、今隣でこの無線を聞いております」


「なら、代わってくれ。

 直接話す」


 そこからケリーより、相談された内容だが、先の船には当然のように本国から逃げてきた避難民をたくさん乗せているようで、かなり窮屈な思いをされているとか。

 なので、とりあえず今後の方針が決まるまで浜に上陸させてはいかがと、相談された。


 ケリーは相談という形で俺に話を持ってきたようだが、どうも有力者でも載せていたのか、断り切れないようで、困ってエルムに相談をしてきたらしい。

 エルムも船ではないが、現在環境を整えている拠点も俺の管轄と認識しており、俺の許可を求めてきたという。


「ああ、かまわない。

 ボートで浜に上陸させてくれ。

 必要があれば、保管している物資も使って構わない」


「ありがとうございます」


 無線でのやり取りを聞いていたフランがニコリとして俺に話しかけてきた。


「私の抱えていた問題が先に一つ片付きましたね」


 その後、船長を含め今後について相談していく。

 船長はフランのいた国が持つ植民都市に向け船を向かわせていたようだ。

 祖国から逃げ出す人たちを載せてだが、まあ、一般庶民はそう簡単に逃げ出せないので、国の有力者と相場が決まっているが、まさしくその通りで、船、確かキャラックと同じような帆船だったが、定数が70名の船だ。

 そこに、乗船客として96名の人が乗っていたとフランが言う。

 細かい内訳については後日詳細に報告が貰えるらしいのだが、70名の船乗りについては全員が男で、船の修理が終わったら当初の目的地である植民都市に向け出発したいという。


 救助のお礼については植民都市に一度戻ってからとなる話のようだが、別にお礼が欲しくて救助したわけでもないので、断ろうかとしているとフランが横から話を進める。

 国から逃げ出してきた乗客96名についても相談を受ける。

 流石に定員の2倍以上もの人を乗せての移動はきついらしく、俺の方で預かってくれないかという話だ。

 フランも希望者については島の方で受け入れたいようで俺に聞いて来る。

 正直拠点をこれから整備していくのに男では必要だったこともあり、二つ返事で了承したのだがフランの顔色がおかしい。


 どうも、乗客の三分二は女性のようで、男性は少ないうえに、話を聞く限り助けた船に乗って植民都市に向かいたいようだ。 

 全員では無いらしいのだが、どうしても男手はわずかになりそうだというから、いかがなものか。

 今までは女性でも騎士だったり魔法使いだったりで、性別に関係なく働ける……いや、戦える女性だったこともあり、今まであまり不都合は感じていない。

 だが、今回ばかりは助けたはいいがって感じになりかねない。


 まあ、唯一救いなのが、御年輩の女性やその女性についている使用人たちは、船と一緒にここを離れたいようで、実際どれくらいこの地に残るかはまだはっきりわからないといわれた。


 まあ、この世界では正直生きていくのが大変そうで、見捨てるという選択肢も多分にあるらしいが、流石に俺のメンタルがそれを許さない。

 後は、殿下の宝刀『丸投げ』を使い、フランに全てを任せた。

 正直、フランやエルムの言うプレアデスの伝説とやらもよくわからない所に建国に向け頑張り始めているフランが何をしたいか全く理解できないが、成り行きに任せるしか俺にはできそうにない。




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