第41話 この世界の海図
「ケリー。
この後、悪いがこのあたりだけで構わないが偵察を出してほしい」
「安全のためですね」
「ああ、できればここを拠点にしたいとも思っている」
「拠点ですか」
今度はフランが聞いてきた。
「ああ、いつまでも船上という訳にもいかないだろう」
「あの~、この船は快適でしたので、別にかまわないかと……ハ!」
フランは思わず本音が出たのか急に恥ずかしそうにしている。
「ああ、確かにあの船はこの世界の常識からは外れているので快適に過ごせるかもしれないが人は丘の上で生きているものだ。
いつまでも船上とはいくまい」
「そ、そうですね」
「ああ、ここに拠点が置けたらここから次に進めそうだと考えている」
「次ですか?」
「ああ、『カミサマ』からの贈り物を探さないといけないし、それこそエルムから話があったプレアデスの姫もな」
「そうですね」
「それ以外にも、我々に協力してくれそうな勢力や、それこそフランやエルムたちの他の仲間たちもできれば助けたいと思っている」
「守様」
「守様。
ありがとうございます」
「まあ、助けるにしろ、探すにしろここがどこかを調べないと始まらない。
だからしばらく俺はこのあたりの地図を作ろうと思う」
「地図ですか」
「ああ、そうだ。
ここと、先に見つけた岩礁があるだろう。
その二か所を基準とした地図だ。
俺の元居た世界でも通用できるくらいの精度で作りたい。
な~に、あの船の機械を使えばどうにかなるだろう」
「ケリー。
だからこの付近だけでいいから偵察を頼むな。
無線が使える距離でいいから。
……そうだな、この湾が見る範囲で頼む」
「湾が見える範囲ですか」
「ああ、あの無線って見通しでしか使えないわけでもないが、そのつもりでいた方がいいだろう。
それに、日のあるうちに戻ってきてもらいたいというのもあるから」
「わかりました」
俺はケリーから二人ばかりの騎士を借りて、ボートでいったん船に戻る。
船に入ると連れてきた騎士には連絡用にもう一隻のボートを出して浜とこの船との連絡役を頼んだ。
ついでにケリーと浜にいるフラン達用に無線機を渡してもらった。
その後は、地図つくりのための準備だ。
船倉に行って海図に使えそうな模造紙を探してきた。
これは、事務用品などをしまってある倉庫にあることを俺は知っていた。
ちょうど薄い青色でマス目も入っているやつなので、適当な縮尺として使える。
その模造紙を数枚持って海図室に入る。
海図台に模造紙を置いて、中心にこの島を描く。
レーダーでとらえた画像や、カメラ映像から大体の島の形状が分かっている。
二マス程度に島を入れるようにしたので一マスが4kmくらいになってしまった。
縮尺で一マス4kmでは切りも良くないと思いなおして、一マス5kmでもう一度島を描きなおした。
下手な絵だ。
だが、地図としては使えるだろう。
次に岩礁だが、俺は自動海図のところまで行って岩礁に位置と方向を確認していく。
自動海図機がログを記録してあったので、それらを調べるのに苦労はなかった。
しかし、問題は岩礁だ。
岩礁の場所はわかっているが、大きさなどについては一切調べてもいないので、岩礁の危険範囲が特定できない。
とりあえず今は船のあった場所を中心に適当に円を点線で描いて岩礁の印をつけておく。
そんなかんだで知らないうちに時間ばかりが過ぎていき、フランがボートで俺の下にやっていた。
「守様。
日も傾きだしておりますし、ケリーも戻りましたが如何しますか」
「え、そんな時間か。
悪かった、気が付かなくて」
「いえ、皆も久しぶりに浜でゆっくりさせていただきました」
「そうか、ならよかった。
さすがに夜は浜でという訳にもいかないだろう。
悪いが全員を船に戻してくれないか」
俺がフランにそのように頼んでから海図室の時計を見ると午後三時を回っていた。
まだすぐには暗くはならないだろうが、正直危なかった。
完全に日が沈んでからの回収は危険が伴う。
慣れている俺たち軍人でも危険な作業になるのだから、ほとんど素人のフラン達では回収もおぼつかない。
全員が船に戻るのを確認後に夕食準備をしてもらう。
それ以外は順番にでもシャワーを浴びてもらった。
その際に。エルムやフランから『乗船の儀』がどうとかと言ってきたが無視をさせてもらった。
まだまだ俺にはやることが残っているし、何より夕飯前だ。
少なくともフランとは……シャワーだけで済むとは思えなかった。
とにかく全員を食堂に集めて簡単なパーティーを開いた。
今日は唐揚げの呪いから解放するために、俺が自ら冷凍食料庫からステーキ肉を持ってきて、ガーリックソースで焼いてみた。
当然サラダについても、生野菜も少なくはあるがしっかりと補充されているので全部使い、それ以外にポテトサラダやマカロニサラダまでも取り出して食卓に並べた。
これで酒でもあればいいのだが、さすがそこは軍艦だ。
酒など積んでいない。
それでも目の前に並べられた御馳走は実にいい香りを辺り一面に漂わせていた。
それは暴力的とまで表現できるくらいだ。
簡単な挨拶をした後、無礼講とばかりに食事を始める。
いざ食事が始まると、食堂は喧騒に……包まれることなく、唯々食器が触れ合う小さな音位が聞こえるレベルだ。
うん、宴会でカニ料理が出た時に似ている。
カニ料理もみんなが食べ始めると無口になるんだよな。
もう、それは皆カニから身を取り出すのに必死で無言で食べるあれだ。
流石に、カニ料理の様にまで必死に食べる必要のないステーキのはずなのだが、まあ、食事中大人しいのは行儀が良いということで良しとしておく。
とにかく初上陸の祝いとしてパーティーのつもりだったが、ただの食事会となってしまった。
まあ、この世界ではこういうものなのだろう。
俺の方の常識を基地らに合わせていく必要もあるのだろうか。
食事の後に、これからについて簡単に相談しておく。
明日以降も、ケリーたちには無線を持たせて上陸地点の探索をお願いしていく。
その間に俺はこのあたりの地図を完成させてから、みんなを拾って島を一周してみたい。
まあ、地図の作製もあるので、島の周遊は遊馬無理として、明後日以降になるから、今日のところはそれでいいか。
後か解散して船でお休みだ。




