第28話 救助作業
座礁船を見つけた以上、調べない訳にもいかない。
まあ、これは職業病のようなもので、この世界では海難救助も珍しいものだとか。
俺が救助とすると言っても、驚かれたくらいだ。
『奴隷でも探すのですか』なんて言われたりもした。
この世界に人権は元居た世界のお隣の国以上にないらしく、死ぬのは当たり前で、生きていること自体が奇跡だとか。
『人権? 自由?何それ、おいしいの?』って感じにすらある。
みんなには俺の持つ常識を無理やり当てはめるようなことはしないが、少なくともこの船では俺の常識の範囲で行動だけはしていく。
俺の行動についていけなければこの船を降りてもらえば済むだけだ。
今のところ、不思議には思われていても俺の行動を妨げるような言動は見られない。
別に前にフランに言われたように奴隷としたわけでもないが、今のところ全員が素直に俺に従ってくれているので、とりあえずそのままこの方針を貫くことにしている。
船を、座礁船の南1kmの位置まで近づけ停船させた。
水深を確認すると20mを切っているがまだ十分に深いので、この船がすぐに座礁するようなことは起きない。
だが、海流が確認されていないからと言って流されないとも言えず、この水深ならば錨も使えそうなので、錨を下ろして船を固定する。
投錨作業を終えたのでやっと問題の船をゆっくりと観察できる。
ここから双眼鏡を使って確認するが、人のようなものは見られない……あ、人がいるな。
動きが散漫のようであることからかなり衰弱しているかもしれない。
「守様。
何か見つけましたか?」
「ああ、人が乗っているようだが、かなり弱っていそうだ。
すぐに救助したいが……」
「守様が乗り込むにしては危険すぎます。
私たちに、その救助とやらをさせてください」
ケリーが俺に訴えてくる。
フランも「ケリーの言う通りです」なんて言うものだから、任せてみることになった。
幸いケリーだけでなく、他の騎士たちもボートの扱いにだいぶ慣れてきているから問題はなさそうだ。
ならば、俺はこの船に残りできることをやればいいな。
何をしよう……そうだ、この船にはドローンがあった。
それを使おう。
「よし、わかった。
俺はこの船に残るとしよう。
ここからドローンを使って乗り込む人たちのサポートをしよう。
悪いが、フランもここに残って俺のサポートを頼む」
「はい!」
俺がフランに手伝いをお願いしたら、フランは非常に喜んで返事を返してくれた。
仲間を助けるのがうれしいのだろう。
「ケリーは、部下を率いて乗り込むつもりだろう」
「はい、守様」
「なら、騎士は全員連れて行ってくれ。
俺たちはこの船の中にいるから安全だ」
「わかりました」
「それと、ケリー達を助けだす時に使ったドローンというやつだが、それも使うから、その声に注意してくれ。
俺か、フランから指示を出すかもしれない」
「わかりました。
守様の大魔法の一つですね」
大魔法って……いい加減どうにかならないかな。
「大魔法についてはこの際どうでもいいが、そのようなものだ」
その後すぐに作戦は開始された。
俺は、いつものようにドローンを仕舞ってある倉庫に行って、使えそうなドローンを持ちだして、ドローンを飛ばした。
すぐに難破船の様子がドローンコントロールシステムのモニター画面に映し出される。
「酷いものだな」
「ええ、何があったのでしょうか。
船が座礁するとこんなことになるのですか」
「座礁によりまちまちだが、少なくとも弱っている人は、座礁が直接な原因ではないとは思うぞ」
「そうなのですか。
では、この人たちは……」
「聞いてみるか」
「え、そんなことできるのですか」
「ああ、ちょっと待ってくれ」
俺はそう言って、話ができそうな人を探した。
俺の横で画面を見ているフランが一人のエルフを見つけ、声を上げた。
「あ、この人……」
「知っているのか?」
「はい、学園の教師に招いている魔法使いです。
名前は、確か……」
フランは、学園を卒業して時間が空いているのか、すぐに名前が出てこない。
フランが言うには、自分は魔法使いの授業を受けていなかったために直接の指導を受けていたいとか言い訳をしているが、俺に言い訳をしても意味の無いことだと思うが、何も言わない。
こんなことをつついても良いことなど一切ないことは、前の女性ばかりの職場で経験済みだ。
「フラン、悪いが彼女に声をかけてくれ」
俺はそう言ってマイクの使い方をフランに説明する。
マイクのスイッチやボリューム操作は俺がするから説明と言ってもマイクに向かって話しかけてくれと言っただけだが。
「私は、フラン。
フラン・ネザートと以前は名乗っておりました。
私の声は聞こえますか、先生」
『……、ん? どこ? だれ?』
「大魔導士の守様の魔法で話しかけております」
『魔法?』
「それよりも、あなた方を助ける用意があります。
すぐにそちらに騎士たちを向かわせますから彼女たちの指示に従ってください」
『助けてくださるのですか、フラン様』
「今では貴族のフラン・ネザートではありません。
ただのフランですので、敬称は不要です。
それよりも、教えてください」
フランはそういうと、何故座礁したのか、なぜそこまで弱っているのかなどを聞いている。
そうこうしていると、エルフの周りが騒がしくなってきている。
救助に向かった騎士たちが到着したようだ。
なので、フランによる聞き取りはいったん終了して救助作業に入る。
船の中央安全な所に、難破船に乗っている要救助者を集めてもらった。
ドローンも一旦騎士たちのそばに向かう。
徐々に集まる要救助者は俺が考えていた以上に弱っているようだ。
脱水のような症状が見て取れるので、先ほどのエルフにそのあたりを聞くと二日目から水を口にしていないとか。
流石にそれはまずい。
俺はケリーに数人載せてボートを戻してもらうように頼んだ。
水と、簡単な食料を運んでもらうためだ。
その後ドローンを戻すと、フランを連れて食糧庫に向かう。
幸いなことにペットボトルに入った経口補水液がそれこそ段ボール単位で在庫している。
そのうち二箱を甲板に運んで、液体状の栄養食も一箱ドーラに運んでもらった。




