第13話 救助開始
「守様。
姫が、お姫様が甲板に出てきました」
ミーシャがそう言って俺に端末を見せてきた。
船長に腕をつかまれた状態で甲板に女性が現れた。
彼女がミーシャの言う姫なのだそうだ。
「ミーシャ。
今ここで姫に声を掛けたら敵に見つかる。
今ドローンを動かすから女性騎士に姫の様子を伝えて海に飛び込ませてくれ」
「わかりました」
俺は端末でドローンを動かし、前に見つけた女性騎士を探した。
彼女は数人の仲間を集めるのに成功しているようだった。
しめた!
「ミーシャ。
彼女たちを船長に見つからないように船尾方向に移動させて姫を助けださせてくれ」
「わかりました」
そこからミーシャは騎士たちに声をかけて上手に彼女たちを船尾に誘導している。
船長を襲うタイミングは彼女たちに任せよう。
帆船の船尾から飛び込みになりそうなので、俺はミーシャに足から飛び込むように伝えてもらった。
さすがにこの時代の帆船だ。
船尾と船首は異様に高さを持っている。
船首はわかるが、船尾は権力の象徴のようだ。
前に学校の歴史で教わった記憶がある。
船長などの力を持つものは船尾に部屋を持っている。
それ以外の水夫たちは船中央から船首にかけての窓もない船倉に近い場所で寝るそうだ。
だから日中は甲板にいるとか、それも船尾に近づけるのは用がある時だけで、それ以外には甲板がどんなに混んでいても近づけない。
船尾は船長や航海士などしか許されていない。
だからなのかは知らないが、船尾はひと際海面から高さを持っている。
幸い船尾の出入り口が船中央近くにあるので、船尾の甲板よりは低くなっているから、中央から飛び込めればまだましになるだろう。
でも俺でもあの高さからの飛込には躊躇するので、足からの方が事故も少ない……と思う。
船上はかなりの騒ぎになっており、俺たちを乗せたボートはかなりの大きさなのにもかかわらず誰にも見つからずに、死角……多分死角であろう船尾の突き出た窓のある所の下に着いた。
こんなところにいても、海に飛び込んだ人を助けることができないだろうと言われそうだが、そこは問題ない。
何せ船上の様子をここからでも手に取るようにわかる。
正直ドローンを飛ばす判断をした自分をほめたい。
で、船上の様子は、船上の喧騒に加えて、木がきしむ音が大きくなってきているような……俺はミーシャが見ている端末を一緒に覗いた。
あ、これ、だめかもしれない。
折れたマストは、ロープでかろうじて倒れるのを防いでいたが、自分の重量でロープの強度が足りずに次々に切れ始めついには倒れそうな様子だ。
先ほどから聞こえてきた木のきしむ音は、マストが倒れるのに引きずられて、もう一つのマストも折られたからのようだ。
その音が聞こえていた。
しかし折られたマストはかなり元の方から折れたようで、これってこの船危なくないかな。
まあ、沈没するにしてもまだ相当時間はかかるだろうから今回のミッションには影響は出ないと思う。
で、騎士や姫の様子は、海賊の船長がつかんでいた姫の腕から手を放している。
「ミーシャ。
今だ、騎士たちに姫を連れて海に飛び込ませろ。
うまくすると誰にも気が付かれずに救助できるぞ」
「はい、すぐに声を掛けます」
ミーシャは俺の提案を受け、すぐに声をかけたが周りが騒がしいためか、なかなか通じていないようだ。
俺は端末をいじり音量を上げた。
すると騎士たちの行動に変化が現れたが、同時に気が付いた海賊たちもいたので、余計に現場が混乱し始めている。
しかし、今の俺たちには何もできない。
ただ端末から送られてくる映像を見守るだけだ。
騎士たちの一団は二手に分かれて、半分近くの人が海に飛び込んでいる。
俺はどうするか悩んだが、海に飛び込んだ騎士たちを拾うことにして、ボートを動かす。
船に近い場所での救助はリスクもあるが、できるだけ近づいて救助用に常備してある水に浮く特徴を持つロープを近くの女騎士に向け投げた。
「それに捕まれ」
俺が声をかけてもなかなか彼女は反応しない。
何度も言っているが、伝わらないのか、なかなか指示に従ってくれい。
それを近くで見ていたミーシャが騎士の名を叫んで、同じことを大声て言うとやっと彼女はロープの先についているリングをつかんだ。
すぐさま俺はロープを手繰り彼女をボートまで引っ張ってくる。
ボートの端まで彼女が近づくと、彼女をボートに引き上げる前に少しボートを動かして別の女性に向け同じようにロープを投げた。
このボートにはこのような救助用のロープがあと一つ合計で3つ積んである。
なので、ミーシャが手伝うだけではどうしても効率的には作業ができない。
しかし、俺が投げたロープをつかむように、今ボートの端に捕まり海の中にいる女騎士が捕まるように彼女に指示を出したので、こちらは先ほどとは違いすぐに救助にかかれる。
彼女が捕まったのを確認すると俺はすぐにロープを手繰る。
その間、ミーシャが手伝って最初に助けた女性をボートに引っ張り上げていた。
俺はミーシャに頼んで、今助けた女性に手伝ってもらえるように声を掛けてもらう。
彼女は良くわからないといった顔をしながらも仲間がおぼれているので、俺の手伝いをしてくれるそうだ。
今手繰っているロープをその女性騎士に任せて、もう一つのロープを別の女性に向け投げる。
投げ終わり、彼女がつかんだのを確認すると俺はボートをゆっくりとだが、動かし、別の女性の救助に向かう。
と言っても、それほど離れているわけでもないが、少しボートを動かした方がより近くにロープを投げられる。




