第118話 従者の二人
しばらく彼女らの食事姿を見守り、落ち着くまで待ってから、話を始める。
彼女たちもお茶をゆっくりと飲めるようになり、初めて会話ができるようになってきた。
まずは、状況の聞き取りからだが、こちらの方は政争という話を聞いていたので、想像の範疇から外れなかった。
僅かな供を連れて逃げていたときに反勢力から襲われて船は沈没して、命からがら逃げてきたのは、俺達が救助した者たちを載せた小さなボートだけらしい。
その辺は詳しくは聞かないが、この後について希望を聞く前に、フランが主任侍祭に話を聞いた。
「侍祭様、あなたは聖女様なのですか」
この質問が新たな、それもややこしい問題を持ってきた。
先に聞いている政争に繋がる話で、反勢力は主任侍祭を聖女として祭り上げたかったようだが、肝心の主任侍祭は先に神託を受けているようで、自分が聖女になるわけにはいかないと反対していた。
聖女が、どうも他国の平民にいるらしいことまで神託を受けていたので、彼女を探し始めた矢先に、身柄を拘束されそうになり慌てて逃げてきたと教えてくれた。
そもそも、彼女の属する教団においての聖女とは、特別な力を持つような俺の知るファンタジーに登場するような人ではなく、あの伝説、プレアデスの姫となる者のことを言うらしい。
もっと正確に言うと、そのプレアデスの姫はいろんな種族から選ばれているが、聖女と呼ばれるのは人族からの姫についての名称だとか。
「では、貴方様が聖女様ではないのですね」
「ええ、フラン殿。 私は確かに神託を受けましたが、聖女ではありません。
私は聖女に尽くす従者の一人でしかありませんので」
「聖女の従者……では、私と同じ……」
「フラン殿も従者でしたか」
「はい、私の家では古くからの言い伝えで、そう育ちましたが、神託は受けておりません」
「ご安心ください。
私が受けた神託は、恥ずかしい話ですが教団が聖女を亡き者にしそうだというので、すぐにでも探して保護してほしいというものでしたから。
そのために、私はプレアデスの姫の従者に選ばれたようなものです」
「確かに、他の姫たちの従者は、姫自身が選んでいるか、それでもなければ私のようにいい伝えで……」
「え? フラン殿。
あなたはプレアデスの姫にお会いしたことがあるのですか!」
「ええ、ここには獣人族を始め、ハイエルフや天使族の姫が既に集まってきております。
また、その従者も全員ではありませんがおりますから」
フランと主任侍祭との会話で、侍祭がプレアデスの姫の存在を改めて確認できたことで、人種の姫の捜索を俺に依頼してきた。
「使徒様。私はどんなことでもいたします。
使徒様の奴隷となれと命じられれば……いえ、命じられずとも奴隷として働きますので、どうか、どうか、姫の捜索に協力していただけないでしょうか」
そこからが少し大変だったのだが、俺達が元から姫を探していることを説明して、捜索するのに協力を仰ぎたいのは俺達の方だと言っても聞いてはもらえず、奴隷の件も有耶無耶にしようかとしても終いには彼女が連れてきた侍祭全員を俺の奴隷として差し出す始末だ。
尤も、差し出された侍祭たちも、俺のことを神でも見るかのようにうっとりと見ながら、声を揃えて「奴隷として何でも命じてください」なんて言ってくる始末だ。
中には「この身をいかようにも、毎日の慰み者にでも……」などと言いだすやつまで出てくる。
とにかく、この話から離れるように、人種の姫の捜索に次のターゲットを絞った。
今まで、積極的にプレアデスの姫を探してきたわけではなかったが、探さなかったわけでもなく、ただ成り行きで探す者たちに協力してきただけなのだが、それでも順調にこの地に、その姫たちが集まってきているのだ。
これって、絶対にあのカミサマが関係しているよな。
まあ、元々から無茶振りしかされてきていないが、それにしても、いい加減どうにかしたいものだ。
彼女らが言うプレアデスの姫を全員集めればどうにかなりそうなのだが……。
まずは、探すにあたり情報の入手から始めるが、先に主任侍祭、彼女の名前がソフィアというらしいが、そのあたりも、フランとの会話で知ったばかりだ。
「侍祭様……」
「フラン殿、その侍祭様というのは……私は教会から追い出されたようなものですから、ソフィアと呼んでください」
「なら、私もフランともっとフランクに……」
こんな感じで、同種の姫に仕える従者同士で通じ合うものがあるらしく、その後も話に花を咲かせていた。
そのおかげなのか、他の侍祭たちの雰囲気も和らいできて、この先に希望を持つように見える。
まあ、どちらにしても6人だか7人の姫を探さないと収まらないのだろうが、俺の命じられた使命は、文化面でどうにかしろというやつなので、このままここで生活するだけでもどうにかなりそうなのだが。
後、色々とやらかした前の勇者の資産でもある豪華客船を探さないと、あのカミサマから何を言われるか知れたものでもないかな。
その後、ソフィアからもたらされた情報には、かなり刺激的なことが含まれていた。
教国が黒幕としてフランの祖国を襲った理由が、その人種にプレアデスの姫がいるためらしい。
もっと正確に言うと、教会というか神国の多分一部だろうが、その姫をなき者にしたかったようで、それも殺人ではなく戦乱による事故によってと考えていたようだ。
流石に、神託まで信じられているこの世界で、神様関連の人を殺すなんて、そんなだいそれたことをまともな国なら考えないが、それを自国の主任侍祭までも亡き者にしてまですることなのか……ん……ひょっとして、その計画が失敗……多分それが真実だろうな。
成功していればどうにかなったかもしれないが、失敗となると……計画そのものがかなり危ないものなのに、実際の計画まではソフィアは知らないようだが、他の国との協力も得て……あれ、あの戦乱の黒幕は帝国だと聞いていたが、どうなっているんだ。
どっちが黒幕か、というか主体的に動いているのか。
実際に攻め込んできたのがアンタレス教国だと聞いていたが、その背後に帝国が絡んでいると聞いたけど、実際には聖女を自国以外から出させないために攻めてきたってことなのかな。




