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プレアデスの伝説 姫たちの建国物語  作者: のらしろ
第六章 新たな仲間
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第113話 要救助者発見



 彼女のような優秀な人材がいるからこそ、俺も安心して外洋に出られる。

 巡視艇は滑るように海面を進み、自動で海底のデータを記録していく。

 単調な作業だが、これが俺たちの世界の安全を広げる第一歩だ。


 昼食は、ミーシャが作ってくれた特製サンドイッチ。

 パンの間には、昨日の宴会の残りであるローストチキンがこれでもかと挟まっている。


「うまいな、これ」


「はい! ミーシャ殿の料理は絶品です!」


 穏やかな海の上で、ケリーと二人、サンドイッチを頬張る。

 こんな平和な時間がずっと続けばいいのだが。

 その時だった。


「守様、レーダーに感あり! 3時の方向、距離およそ10マイル!」


 ケリーの鋭い声が飛ぶ。

 俺は素早くレーダー画面を確認する。確かに、小さな光点が一つ、ゆっくりとこちらに向かってくる。


「船か? 漁船にしては小さいな……。よし、少し近づいてみる。ドローンを準備してくれ」


「了解!」


 巡視艇の速度を上げ、目標に接近する。双眼鏡で確認すると、それは小さな手漕ぎボートのようだった。

 帆も折れ、明らかに漂流している。

 ドローンを発進させ、上空から映像を確認する。

 ボートの上には、数人の人影がぐったりと横たわっていた。


「生存者だ! 救助するぞ!」


 俺たちは急いでボートに近づき、衰弱しきった遭難者たちを巡視艇に引き上げた。

 全部で5人。

 皆、日焼けと脱水でボロボロの状態だった。

 その中で、一人だけ、必死に意識を保とうとしている少女がいた。亜麻色の髪をした、気の強そうな瞳の少女だ。


「……あなたたちは……誰……?」


「俺たちはこの近くの島を拠点にしている者だ。君たちはどうしてこんなところに?」


 俺が問いかけると、少女は悔しそうに唇を噛んだ。


「……海賊に、襲われて……私たちは、とあるお方に仕える者……その方を、お守りするのが……使命だったのに……」


 そこで少女はぷつりと意識を失った。

 とあるお方。まさかとは思うが。

 俺はケリーに生存者の介抱を指示し、すぐさま島に連絡を入れた。


「こちら守。要救助者5名を保護した。全員衰弱している。至急、医療班の準備を頼む」


 無線越しにフランの落ち着いた声が返ってくる。


『了解しました。すぐ準備させます』


 俺は巡視艇を最大船速で島へと向けた。

 胸騒ぎがする。


 獣人の姫の付き人。

 天使の姫の騎士。

 そして、まだ見ぬ人族の姫。


 俺たちの世界は、この出会いをきっかけに、また大きく動き出そうとしていた。

 やるべきことは山積みだ。

 だが、不思議と焦りはない。

 一つ一つ、目の前のことを片付けていくだけだ。


 俺は操舵輪を握りしめ、水平線の先にある俺たちの拠点、プレアデス領国を真っ直ぐに見据えた。

 背後では、新たな仲間が静かな寝息を立てていた。

 助けた少女の残した言葉は重い。


『とある方にお仕え』と『お守りするのが……』の二つだ。

 これって、どう考えてもミーシャが最初に俺に頼んできた時のことだよな。

 自らの操まで差し出して。

 俺は要求したわけでは決してなかったのだが、結果的に……俺は誰に言い訳をしていたんだ?


 それよりも、少女の残した言葉だ。


 俺は操艦を任せて、助けた人たちを寝かせている士官食堂にケリーと一緒に向かう。


「守様。

 彼女の言い残した言葉は……」


 俺の横でケリーが聞いてきた。

 聞くまでもなくケリーもその先はわかっているはずなのだから、聞いているのはこの言葉からすぐに救助に向かう必要があるかどうかだ。


 まずは、助けた5人だ。

 まだ、完全に救助できたわけではないが、重傷を負っているわけでもないので、まずは時間を置けば大丈夫だろう。それでも治療は続ける。

 しかし、それにしても……。


「今までの生活でしたら何も気にしませんでしたが……」


 ケリーはさらに続けてきた。

 すると、士官食堂に寝かせている要救助者の面倒を見ていたミーシャがその先を続けた。


「そうですね。

 私が獣人だからというわけではなかったのですね、この臭いは……」


「ああ、私も正直、助けられた時のことを思うと恥ずかしくなるな。

 それも毎回海で人を助けるたびに思い出されるから」


 この場にいる全員が同じ思いのようだ。

 俺も先ほどから、正直参っている。

 今回助けた人は全員が人族の女性ばかり5人だ。

 それも、見た目から全員が神官のような服を着ているから、この場で服を脱がせて体を清めるというのも憚られた。


 あ、そういう作業は俺は立ち会わないし、俺は絶対にしないぞ。

 幸いというか俺の部下たちには女性が多いから、任せるのには困らないが、それでも神官ともなると正直命じにくい。


 ケリーたちも、俺と同様に考えているのか、服まで脱がせてどうこうしようとは考えていないようだ。


「まあ、全員の症状を確認する限り、すぐに措置を必要とするとは思えないので、先ほどの件だけでも検討するか」


「先ほどの件?」


「ああ、彼女が残した言葉の意味だ。

 どう考えても、襲われたか何かで、彼女たちとはぐれた者がいるということだよな」


「ええ、五体満足な状態かどうかはわかりませんが、船の沈没にしろ、捕縛されたにしろはっきりとさせたほうがよろしいでしょうね。」


「海賊に襲われてと、聞いたようだが……、さてさてどうするかな……」


「どうしますか、守様」


「海図を確認しようか。

 ケリー、悪いが一緒に来てくれ」


「ハイ、わかりました。

 この場はミーシャに任せてよいかな」


「ケリー様。

 お任せください」


 俺はケリーを連れて海図室まで向かった。

 海図室には、これまで俺たちが作ってきた海図が紙上に出力されている。

 自動作成でモニター上には最新のものを見ることはできるのだが、どうしても検討などする場合には自由に書き込める紙のほうを使いたくなる。


 当然出力されている海図には俺たちの現在地はないので、おおよその位置をモニターを見ながら紙の上に落とし込んでから検討を始めた。

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