表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プレアデスの伝説 姫たちの建国物語  作者: のらしろ
第五章 プレアデス領国
105/119

第105話 獣人国訪問





 俺達が待機を始めてから数時間が経過した頃、フランから待ちに待った無線連絡が入った。


『守様、こちらフラン。聞こえますか?』


「こちら守、感度良好だ。そちらの状況はどうだ?」


 俺はスピーカーから聞こえるフランの少し興奮したような声に、安堵しながら応答する。


『はい、帆船は無事、獣人国の港に入ることができました。大きな港で、活気があります』


「そうか、問題はなかったか。ダークエルフのダーナが団長だったから、獣人たちとのファーストコンタクトで揉め事は起きないと信じてはいたが……」


 ダークエルフと獣人は、この世界では比較的友好な関係にある種族だと聞いている。

 だからこそ、団長にダーナを据えたのだが、それでも異国への訪問は何が起こるかわからない。


『ええ、その点については全く問題ありませんでした。ダーナ様が名乗りを上げると、港にいた役人らしき獣人たちは驚きながらも、非常に丁重な態度で我々を迎えてくれました。どうやら、彼らにとってダークエルフは尊敬の対象でもあるようです。すぐに政府の庁舎に通され、現在、獣人国の代表者の方々と会談の席に着いたところです』


 フランからの報告は、俺が想定していた中でも最上の結果だった。

 事細かに、それでいて要点を的確に伝える彼女の報告は、まるで俺自身がその場にいるかのように状況を理解させてくれる。


 これなら、巡視艇で待機している俺達も安心して任せられる。

 フランの副団長としての能力は、俺の期待をはるかに超えていた。


「わかった。引き続き、状況に変化があれば報告を頼む。俺達はこのまま待機を続ける」


『承知いたしました。では、定時連絡で』


 無線が切れ、巡視艇のブリッジに静寂が戻る。

 俺の隣でケリーをはじめとした元騎士たちも、安堵の息を漏らしていた。


「団長様もフラン様も、ご無事なようで何よりです」


 ケリーが心底安心したように呟く。

 彼女たちにとって、フランは今でも守るべき主君なのだろう。その忠誠心は、巡視艇の乗員となった今も変わらないようだ。

 それから数時間後、再びフランから連絡が入った。今度はさらに良い知らせだった。


『守様、歓迎の宴が開かれることになりました。どうやら我々の訪問を心から歓迎してくれているようです。つきましては、ダーナ様のご判断で、このまま数日間、こちらに滞在することになりました』


「そうか。それは結構なことだ。わかった、では俺達も一度、二ノ浜に戻ることにする。何かあればすぐに無線で連絡してくれ。すぐに向かう」


『はい、よろしくお願いいたします』


 訪問団の安全と交渉の順調な滑り出しが確認できた以上、俺達がこの海域に留まり続ける必要はない。

 俺はケリーに舵を取らせ、巡視艇の進路を二ノ浜へと向けさせた。


 こうして、俺達の奇妙な監視生活が始まった。

 翌日から、俺達は毎日、巡視艇で獣人国の島へと向かい、無線が明瞭に届くギリギリの距離まで接近してフランからの定時連絡を受ける。

 そして、異常がないことを確認すると、また二ノ浜へと帰投する。

 この単調な往復航海は、しかし、ケリーたちにとってはまたとない実践訓練の機会となっていた。


「ケリー、今日の針路設定はお前に任せる。最短距離を維持しつつ、燃費も考慮したルートを引いてみろ」


「はい、お任せください!」


 最初のうちは、俺が逐一指示を出さなければ、レーダーの確認や航路の維持もおぼつかなかった彼女たちだが、日を追うごとにその動きは洗練されていった。

 今では、俺が何も言わなくても、出航準備から航行、そして停船までの一連の動作を、彼女たちだけでそつなくこなせるようになっている。

 だいぶケリーたちも巡視艇の扱いには慣れたようで、俺がブリッジの隅でコーヒーを飲んでいる間に、目的の海域に到着していることも珍しくなくなった。


 もちろん、武器の使用に関しては一切許可していないが、操船技術だけを見れば、ケリーたちだけでも問題ないレベルにまで達している。

 まあ、巡視艇と言えども、ただ船を動かすという基本動作においては、他の船と何ら変わりはない。

 帆船のように風を読む必要もなければ、櫂を漕ぐ人足の息を合わせる必要もない。

 エンジンを動かし、舵を切る。

 ただそれだけだ。だから、飲み込みの早いケリーたちが短期間で習熟するのは、ある意味当然のことだったのかもしれない。


 本当に難しいのは、武装や高性能な監視装置の類だ。

 複雑な操作手順、膨大な情報の中から必要なものだけを瞬時に選び出す判断力、そして何より、それらを使用する際の責任。

 これらは一朝一夕で身につくものではないし、今のところ彼女たちにそこまで触らせるつもりもなかった。


 今はただ、このハイテクな船を自分の手足のように動かす感覚を養ってくれればそれでいい。

 俺はほとんど何もしないまま、教官役としての日々を過ごしていた。


 そして、訪問団が獣人国に渡ってから四日目の午後。

 いつものように定時連絡を受けるために待機していると、レーダーに一つの大きな影が映った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ