第103話 島の発見と上空からの調査
まあこの船ならば自動操船機能があるので、レーダー画面を見る人を一人だけ艦橋に残しておけば、今まででもできなかった話ではないが、現にミーシャ一人を乗せていた時にはそのようにしていたのだが、それでもきちんと操船できる人が当直についてくれるというだけでも安心具合が断然違う。
この船は日本の巡視艇を元に建造されていたので、正確には軍艦とは言いにくいのだが、軍装だけを見れば十分に重武装の軍艦だ。
何せ攻撃ヘリまで搭載しているのだし、いったいこれで何をさせたかったのか、あの時の国の上層部に聞いてみたい気もするが……と言っても母国ではないのだが。
肝心の母国から裏切られた俺としては……悔しいが、カミサマにでも感謝しておくか。
それから30分ほどして、島影を視認できる距離まで近づいた。
「ダーナ様、やはり……」
先ほど来船長が気になることをダーナに言っている。
俺は思わず聞いてしまった。
「ダーナ、どういうことだ。
良かったら教えてほしいのだが」
「あ、すみません、守様。
いや、あの時の私たちが目指していたのが、多分あの島なのです」
「あの島……何かあるのか」
「いえ、直接外交があった訳ではありませんが、あの島には各地から迫害を避けて集まった者たちの作った国があります……尤もこれは伝聞ですが」
「あの島のことですか?
確か私が知る伝聞ですと、獣人国だったと記憶しておりますが。
尤も私たちには、どこかの島くらいしか情報は持ちませんが」
どうも俺以外の人たちには、あの島にある国については常識の範疇に入るらしい。
人間中心の国、帝国などから迫害されていた者たちが、逃げて作ったという国があるという。
大陸から海を隔てて作られた国らしく、一部の間では交易などもあり、情報は各地に伝わっているようだ。
フランたち貿易を生業としてきた国では、当たり前のようにその情報はあったらしいのだが、国として付き合いがあるわけでもないらしく、フランたちの国では各貿易商ごとに情報の扱いも違うらしい。
一部の貿易商の間では交易もあったようなのだが、そこは貿易商からの情報は出てこない。
相当、その国との交易で儲けが出るらしい。
「ええ、私の家ではそことの取引はありませんでしたし、私の家と取引のあった貿易商も取引をしていなかったようで。
ですが、確かにその国との交易をしていた貿易商もおりました。
そこからの情報は全く出てきませんでしたが……当たり前ですかね。
儲け話を簡単に外に漏らすようでは、とてもではありませんが商売などできませんので」
フランの話はもっともなことだ。
となると、そことは少なくとも話し合いはできそうだということだな。
となると、もう少し近づいていく必要はあるが、この船を見られるのは避けたほうがいいか。
「ダーナ。
あそこと貿易はできると考えているのだな」
「はい、守様。
貿易はできずとも少なくとも外交は開けると考えております。
うちには少数の種族がおりますし、噂ですが、迫害されている種族は国を挙げて保護してるようですので」
「こちらとしては、付き合うのに申し分なさそうだということか」
「はい、尤も噂ですが」
「なら、一度正式な訪問団を出さないとまずいか……となるとあの帆船の最初の仕事になりそうだな」
「そうですね。
一度戻りますか」
「いや、もう少し近づいて様子を見よう。
本当に噂通りの国があるかまだ分からないからね」
「守様。
そういうことですと、このまま予定通り近づくことですね」
操舵輪を握るケリーがそう言ってきた。
俺は、かねてから計画していたように、船を進ませた。
距離にして30kmはあるか、こちらからでも島影を視認できる位置まで船を使づけた。
俺は一旦船を止めて、この船に装備されている望遠装置を作動させる。
マスト上部に取り付けてある望遠カメラを使い、艦橋に映像を映し出して島の様子を観察していく。
「ここからですと、港は見えませんね」
「それどころか、人の営みを感じさせるものも見えないな」
「ああ、大国でもない限り港か政を行う町以外には村など作らないだろうな」
「そうですね。
これからどうしますか」
「船で一周してもいいが……ヘリを使うか」
俺は、前に島を観察したように船で島を一周することも考えたのだが、あの時にはヘリなど使えるものではないと考えていたので、一切ヘリを使っての調査を考えなかった。
しかし、すでに俺たちの住む島をヘリで上空から観察して、天使族を見つけている実績もあるので、ここらできるだけ悟られないよう距離を取りながら島に近づいていくことにした。
しかし、そうなると同行者が問題となる。
いっそのこと、オスプレイもどきでも使うか。
この船に搭載してあるヘリには二種類あり、攻撃に特化したコブラとか言った二人乗りの攻撃ヘリのほかに、人員人輸送用のオスプレイを二回り小さくしたものも搭載してある。
今までにも、何度か島で使ったこともあるので、操船しているケリーたちと、帆船の乗員を残してダーナとフランに数人を連れて格納庫に向かった。
今回は、人数もいたのでみんなで格納庫からオスプレイもどきを後部甲板に引っ張り出して準備を始める。
羽を広げて、全員の載せたら無線でケリーを呼び出して通信の確認後に出発させた。
高度1000mまで上昇させたのちに平行移動に移り島にむまって飛んでいく。
「守様、これって……」
外を持ていたフランが声を上げてきた。
「確かに、これって、前に乗せていただいた時よりも速いのでは」
そう、前に乗せた時には、完全な平行移動はさせていない。
ほとんどヘリと一緒の飛行しかしなかったが、さすがに島まで30kmもある場所からの飛行ともなると、少し飛ばしたい。
攻撃ヘリでも時速に直せば200km/hは出せるが、これはその比ではない。
巡航速度でも軽く700km/hは出せる。
その速度で島上空を何度か飛んで、島の大きさから国があればその位置などを調べていくが、すぐに港を見つける。
「守様。
あそこ」
フランが最初に港を見つけた。
すぐにダーナも反応を示して俺に声をかけてきた。
「あそこですと、我々の島からは反対になりましたね」
「ああ、島を一周周りでもしなければ見つけられなかったな。
尤もこれを使わずとも調べるとなると周回はしただろうけどね」
「ですが、我々の村と同じように湾内の奥にありますから見つけるのも大変だったのでは」
「ああ、さすがにこの船で人がいるとわかっている島の中には入りたくはないしな。
そういう意味でもこれを使ったのは成功だったな」
「この後どうしますか」
「船に戻り、ケリーたちと相談した後になるが、いったん拠点に戻ろう。
あそこには、帆船で向かってほしい」
「ええ、私もそう思います」
フランもダーナも同じ考えのようで、詳細に島の様子をカメラで納めたのちに巡視艇に戻っていった。




