第102話 調査の再開
まずは、帆船で相手先に乗り込んで、必要があり次第、巡視艇から密かに俺達が上陸する計画になっている。
そこまで説明すると、集まった全員は納得がいったのか、それ以上の質問はなかった。
まあ、こちらから出向くと言っても、頻繁にすることではないし、何より移動も巡視艇で曳航していこうかとも考えている。
そのあたり、船長を始め船員たちのプライドを傷つけないか心配したが、巡視艇の性能をまざまざと見せつけられていた彼らには、異論がなかった。
何より、帆船での移動よりも速度が断然曳航のほうが早いのが決め手に成っているようだ。
まあ、風などの条件の良いときには帆走もさせるつもりのようだが、そのあたりは臨機応変に考える。
その後に、集まった全員の前で、船長になるものに、任命状を渡して、改めて船長として紹介をしておいた。
こういうイベントというのは、どの世界でも大切なものらしい。
俺の元いた令和日本でも、任命式は大切な行事の一つだったし、そのあたりについては俺もよくその必要性を理解できる。
帆船の活用方法が決まった翌日から、俺達が活動を始めた。
まずは、この付近の海域の海図作りからだ。
一応今まで調べていた、いや、あの巡視艇が動いた範囲だけは調べ終わっている。
自動的に、ログが取られているので、そのログから簡単に船内の整理用端末を使い、簡易的な海図を作らせている。
簡易的と言っても、この世界で使われているものよりはよっぽど詳細なものだ。
俺は、海図を作りながらふと考えた。
『海図ができても、緯度経度を調べる手段がない』
そうなのだ、余りに俺は自動化された世界にどっぷりハマっていたようで、天測のことを失念していた。
天測ができないわけではない。
一応、学校でそのあたりもしっかり叩き込まれているので、思い出しながらだが、使えないことはないが、肝心の測定ができない。
帆船にも俺が学校の実習で使わされたようなものがあったが、コンパスと呼べるのか、かなり怪しい。
それに経度測定も怪しげなものしか見当たらない。
正直俺には、あれを使っての航海は無理だ。
それでも、あれらは帝国が自慢する最新鋭のものらしい。
なので、そのあたりについてはこれから船長を務める者に任せてはいるが、海図の件もあるので、船長らを一足早く,俺の巡視艇で海に連れ出すことにした。
島のことについては、ほとんどの者たちに仕事が割り振られているとかで、フランもダーナも手が空いているらしく、俺と同行して海に出ることになった。
「守様。
これからどちらに向かわれるのですか」
「ああ、途中になってしまったが、付近の偵察というか海図を作りながらの調査だな。
前にダーナを助けた海域までは行こうかとは考えているが」
「あの~、理由を聞いても」
「付近の調査もあるが、ダーナ達は俺たちとは反対側からあそこに向かったんだよな」
「え……」
「もし、俺たちのそばにいたのならば少なくとも半径20kmの範囲には居なかったわけだし」
俺の会話を聞いた船長が驚いたように声を上げる。
「半径20km……どうして、そんな……」
「ああ、ダーナや、船長は初めてか。
これでわかるのだ」
俺はレーダーモニターのところまで二人を連れて説明を始める。
実に簡単にだ。
本当は100kmくらいまでの飛行物体は認識できるが、海上移動の船では無理なので、モニターのレンジも最大範囲を20kmくらいに調整している。
ここではいきなりミサイルなど飛んできそうにないし、それよりも他の帆船の方が気になるので、見落とさないように実用に合わせてある。
俺の説明を聞いた二人、特に船長は酷く驚いていた。
「でも、これも万能ではないよ」
俺はそう言ってから、ダーナ達を見つけた時の様子を説明していく。
「霧が苦手というのですか」
「いや、霧が苦手という訳ではないが……多分カミサマからの試練というか、そんな感じかな。
後、考えられるのは特別な能力を持つ魔物の影響というか、とにかくこの世界独特の問題のようなのだが」
「この世界独特……ですか」
「ああ、でも、それ以外では大丈夫だ。
フラン達を見つけたのも、このレーダーだからな」
それで、その先についての話をしてみる。
あの海域の先の様子を調べたい。
島のようなものも以前見つけたようなので、それも調べ、そこに他の種族というか、仲間になりそうなものがいれば、同盟でも俺たちの島に移住してもらうなど色々とある。
幸いにもこの船には、俺たちの政を仕切るダーナとフランの二人もいるし、そのあたりの難しい判断は任せることができるのだ。
とにかく、今まで調べてある範囲は巡航速度か、それ以上の速度で移動している。
「守様、そろそろ……」
レーダーを担当している騎士の一人が声を掛けてきた。
ダーナ達を海龍から救ったポイントに近づいたということだ。
「さすがに霧は無いか」
「あの霧は海龍のスキルのようなものでしょうかね」
ダーナが声を掛けてきた。
「霧? ですか」
フランが聞いてくる
俺は簡単にダーナ達を発見した経緯などを説明しておいた。
「そういえば、あの時は島影を……」
操舵輪を握っているケリーがあの時の様子を思い出しているようで、声を出している。
「ああ、今回はその島影の確認からだ」
「島影……ひょっとして」
今回初めて個の巡視艇に乗る帆船の船長が聞いてきた。
俺は簡単にそのあたりについて、レーダーのそばまで行き、説明している。
「この画面上に、何かあれば影が映るのだ。
ちょうどこんな感じに」
ちょうど、あの時見つけた島影をレーダーの隅に移している。
「ダーナ様。
この辺りって……」
船長が急にダーナを呼んでいるが、どうもあの時逃げていたダーナ達が目指していたのはこの島らしい。
尤も、目標だとは断定できないが、まあ十中八九外れないだろう。
外れるとしたら、あの糞カミサマが何かした時だけだ。
「ようし、あの時中断した調査を再開しようか。
ケリー悪いが進路を変えてくれ」
「はい、守様」
俺の指示で、ケリーが進路を変える。
それにしても、ケリーたちはすっかりこの船の扱いに慣れてきたようだ。
俺は指示だけすればいい感じにまで任せていても安心できる。
これなら当直を居て遠距離まで言っても、問題は無さそうだ。




