第101話 帆船の活用
それでも交渉の決裂は必至だよな。
あいつら何を考えているのやら。
それに、あいつらを寄越した祖国の連中も何をどう考えてあんな失礼な態度しか取れないものを交渉団に入れたのだ。
俺だったら、任命責任までも追及したいよ。
「気にするな。
確かに俺も驚いたが、そういう者いるんだと、この世界の認識を改めたのだが」
「確かに大国などは、割とあるようですね」
「しかし、なんだ……いくら大国だとは言え、あんな態度で外交ができる世界って俺はすごいと思うよ」
「え?
何でですか」
「外交って、下手を打てば戦争につながるだろう。
大国だからとはいえ、簡単に戦争を起こしてもいいことは無いと思うのだが」
「ええ、ですから恫喝して黙らせるようですよ」
「それなんだよな。
大国だって一時的に困ることくらいはあるだろう。
それにある大国だけをターゲットにできれば戦争したって同盟国を集めることでかなりの痛手くらいは与えられそうに思うのだが」
「確かにそうですね……」
「あ、それより、そろそろ修理中の船の視察に出かけよう。
清掃作業の方は終わったようだからな」
「あ、そうですね。
この後は少し改装ですか」
「ああ、そのつもりだ。
基本的には俺の持つ巡視艇と一緒に行動をする予定で、武装類を最低限まで減らして、もう少し乗員の居住環境を良くしたいし、基本的にあの船は貿易に使うのだろう。
なら、積み荷のスペースも広げておきたい」
すこし前まで帝国の捕虜たちを住まわせていた帆船は、今あちこちから大きな音を立てながらの改装中だ。
大砲などの武器類は、捕虜を取って、こっちにつれてきた時に、すべて降ろされているが、それ以外は、何もしていなかった。
マストなどをへし折ったので、マストを修理すれば以前の様な使い方はできただろうが、俺達はそのつもりも無い。
そもそも武力だけなら俺の持つ巡視艇だけで十分すぎるくらいだ。
今改装しているのは、主に船乗りたちの居住性についてだ。
とにかく、アイツラは臭かった。
別に俺が潔癖症というわけでもないが、それでも海水をいくらでも使えるのに、シャワーくらい浴びろよって感じで臭かった。
まあ、それがこの世界での標準らしいが、フランたちは俺の基準にだいぶ慣れてしまったようで、昔には戻れそうにない。
なのに、この船を使わなければ行けない場面がこの先増えそうなので、少しでも快適になるよう、俺が大学校時代に教育で乗り込んだ帆船を参考に、改造を進めている。
「改造しても、定員にはそれほど変化はありませんね」
「ああ、大砲やら、火薬や弾薬などをあまり積み込まないからね。
何より大砲をおろしたのが大きいかな」
「全く乗せないのですか?」
「それも考えたのだが、ダーナたちと相談して、甲板に数門だけ乗せて、それ以外は撤去させた」
「数門?」
「ああ、礼砲に無いと困るのだろう。
それに自衛はいらないが、それでも丸腰だと舐められるそうだからね」
俺はフランと会話しながら帆船の中を視察していった。
視察が終わる頃にダーナが俺のもとにやってきた。
「どうですか、船の方は」
「だいぶ改装も終わっているかな」
「それなら、何時でも使えそうですね」
「なにか考えがあるのかな」
「ええ、また、連中が来るのでしょう」
連中とはフランの元祖国で、植民地に亡命政府を作った連中のことだ。
以前はフランの実兄が団長としてここに来たが、実質その他の連中が要求だけをぶつけてきただけのとてもじゃないが外交とは思えないようなことをして帰っていった者たちのことだ。
俺はダーナを連れて、フランと一緒にフェリーに戻った。
フェリーの食堂で、飲み物を飲みながら、これからのことについて相談を始めた。
「まだまだ、この地での整備も済んではいませんが、そろそろこちらから外に向けて出ていかないと行けないかと考えておりますが」
ダーナがそう言うと、フランも賛同するように大きく頷いて話してきた。
「そうですね。
今のところ話し合うことを前提ですと、商業連合の植民都市とだけしかありませんが、他の国とも、接触を持つほうが良いでしょうね。
商業連合は、近々暴発しそうですし」
そんな会話をしながら、このあとの展開などを相談していた。
結論から言うと、あと数日で改装の終わる帆船の人事を決める事となり、ダーナの部下で前の旗艦船長をあの帆船の船長に当て、その部下たちに乗員として割り振り、一度試験航海をすることに成った。
あの相談から数日後に、フェリーの食堂に、いつもの大会議に集まる連中を集めて、方針を伝えた。
まず、ダーナから簡単にこれまでの経緯を説明後に、フランからも外交上でのトラブルの説明があった。
まあ、フランの身内が絡む話なので、ダーナから話すのはちょっと言いづらかったのだろう。
褒める話ならば何ら問題はないが、ほとんど罵詈雑言に近い説明に成ったので、身内のフランからソフトな表現で伝えられるかと思ったのだが……、うん、あれ以外に説明つかないよな。
とにかく酷かったの一言だし、フランからでも身内をかばえな無かったようだ。
かばうつもりも無さそうだったのは、見なかったことにしておこう。
「それで、我々の方から、外に向けアクションを取っていく。
そのための船になる」
すると、参加者の一人から質問があった。
「この船ではだめなのですか」
すると同調者の一人も「これなら、相手を威嚇できそうなのに」ともあった。
「いい質問だな。
その疑問に応えよう。
結論から言うと、そのつもりは一切ない」
「あの~、理由を聞いてもよろしいでしょうか」
「ああ、まずこの船は神が我々にもたらされた神船だということだ。
正確に言うと神の御使者であらせられる守様に与えられたものだそうだから、守様の希望がない限り、我々の都合では使わない」
ダーナの説明はほっておくとどんどん大げさな表現が飛び出しそうなので、俺が止めようとしたらフランが続けて説明を始めてしまった。
「この船以外にも、シードラゴンを葬った守様の巡視艇も使いません、いや、使いますがそのあたりは後で守様からご説明しますが、訪問先を刺激しないで外交するのなら、あの帆船一択となります。
守様、計画の方の説明をお願いできますか」
そうなのだ。
あの帆船から、武装を取り払う時に相談したのだが、移動中の安全は、巡視艇で行い、巡視艇は遠くからあの船を守るつもりだということを。




