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【短編小説】歩こう歩こうわたしは元気

掲載日:2025/12/19

  精巣と言うパドックで付いたオッズは単勝128倍だったのに、たまたま逃げ切って勝ててしまったクソ精子が一番にゲートをくぐって産まれた。

 それが俺だ。

 だから仕方なく、このクソ長い人生を歩いている。

「どこまでいくの?」

「それが分かってりゃ苦労しねぇよ」


 だけどボニーがママに会いたいなんて言うから旅は終わった。スタークウェザーと一緒だったキャリルも、ボニーと同じ様にママっ子だったんだろうか?

 アメリカーナは基本的にみんな甘ったれたマンモーニだ。いつまでも親離れ子離れできないのは、広い国土に似つかわしく無いファミリーコンプレックスだ。

 嘆かわしい。

 でもあのハルク・ホーガンだって泣く時はある。仕方ない。


 とにかく俺たちはその国道を西に向かっていた。

「それで、お前はその市長の家をどうしたんだって?」

 アルバートは吸い殻を窓から捨てながら俺に訊く。

「だかさ、俺は市長の家をドンキホーテにしてやったんだ。郵便受けをペンギンにしたし、呼び鈴はドンキホーテのテーマソングにしてやった。風呂が沸いた時には呼び込み君が鳴る様になってる。トイレの音姫は……何だったかな?あぁそうだ、玉音放送にしたんだった。とにかくそんな感じにしてやったのさ、裏庭に住まわせてやれば済むって話だ」

 俺は得意げに答えてやった。

 アルバートはNot in my back yardと愛想笑いをした。





 吹きつける北米の乾燥した風は、甘ったるいシロップみたいな匂いがする。アリゾナの緑茶とかキャンディハイウェイと間違えてるのか?

 そんな馬鹿な話はない。いくらアメリカンが味覚音痴だと言ったって限度がある。



 それにしても鳥居が見えない。

 俺はここまで書いてようやく自分がハハの子宮から出なければならない事に気づいた。参道と産道を間違えているのなら仕方ない。

 俺は子宮の出入り口で頭を下げたり、真ん中を通って歩くことはしない。端を行くんだ。

「まるで人生だね」



 聞いているか?聴こえているか?

 始めたのはお前だ。

「ちがうよ、お前だよ」

「そっか。おれは狂ってしまったんだな」

「ちがうよ、狂ったフリも上手くできないね」

 その通りだ。俺は踊りも型も苦手だし、かと言ってフリースタイルができるほど器用じゃない。


 あとはエピローグだ。

 生きても死んでも大差ないし、読んでも読まなくても変わらない。

 俺は南アメリカと北アメリカにドンキホーテを建ててアメリカ中のヤンキーを呼び込んだら翌日には放火されていた。

 気合いと言う面では日本のヤンキーとかヤクザなんて足元にも及ばない。精々が九州の古い市場とか吉祥寺の小汚い横丁でボヤ騒ぎを起こすのが関の山だ。

 そう言う意味でハザードはここだ。日本の寿血も西成も千住もすっかり観光地になった。それに俺たちは拳銃を持っていない。


 そう言う俺もキンタマをハハの子宮か祖父の精巣に置き忘れた根性なしだ。お前はどうだ?同じなら俺たちはキンタマの代わりに自立をぶら下げて生きてるだけのクソだ。

 アメリカーナの気合いや根性はマンモーニなファミリーコンプレックスで生成されてる。菊と日本刀?拳銃とチンチンだよ。赤いチンコと白いチンコ。星の数ほどの射精さ願いだ。

 だがそれに勝てないなら仕方ない。

 パールハーバーを繰り返したって繰り返したって繰り返したって勝てやしない。



「ファッキンジャップ以外の英語はわからない。俺に出来るのはこれくらいなんだ」

 そう嗤うとアルバートは車を止めて「降りろ」と言った。

 俺は素直に車を降りてアルバートの運転するクルマがヴァニシングポイントの向こうに帰るまで見送っていた。

 それが子宮からの出口なのかどうかは知らない。

 俺はゆっくり歩いていくだけだ。


 別におふくろには会いたくない。

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